第5話 母と私
今回、このエッセイを書いていることを夫に伝えたところ、「『母と私』が一番最初に書くべき内容じゃないのか?」と言われました。
「アダルトチルドレンの根本は母との関りなんだから」と夫は言いました。
そうなんです。
よく分かっています、その事は。
ただ、私にとって母とのことは根本原因である以上にラスボス感がすごいんです。
アダルトチルドレンの親はいわゆる毒親と言われる場合が多いです。
でも、私の母は決して毒親ではないです。
、、、たぶん、、、
小中高時代、いつも怒られていました。
躾の厳しい家だったと思います。
でも、叩いたり、私を罵ったりするような親ではなかったです。
ただ、「〇〇しなさい」「××ができてないでしょ」「お姉ちゃんなんだから」「女の子なんだから」などなど、普通(?)のお小言を毎日、数十回と言われていました。毎日怒られて過ごしていた私にとって、母は近寄りがたい人でした。
成人して、社会に出て、厳しくしつけられたから社会でなんとかやっていけてると感じました。母の有難さを知り、母に厳しくされたことを感謝しました。
厳しい躾も私のためだったと感じることができました。
でも、本当にそうでしょうか?
毎日怒られ、母の笑顔は特別な時にしか目にすることがなく、頭を撫でられた記憶はほとんどないです。
触れ合いの時間はほぼ無かったように思います。
そんな幼い私の大好きなことが耳掃除でした。
母が膝枕をしてくれて、耳を掃除してくれます。
母の膝枕と耳を触られる感触が大好きでした。
うちの母は毒親ではなかった。と言いましたが、毒がなかったとは、決していえないことは自分の中でもよく分かっています。
アダルトチルドレンとなった原因は何はともあれ親の関りです。
アダルトチルドレンは無意識で親を庇います。
親を守ろうとするのがアダルトチルドレンです。
1年前の私は「母が大好き」でした。
アダルトチルドレンの改善をはじめて、すでに3年以上がたっていたにも関わらずです。
今も、「うちの母は毒親ではなかった」と言っています。
私がこの言葉を言い続けるかぎり、私はアダルトチルドレンを完全克服できたとは言えないのです。
アダルトチルドレンであることは認められるし、子供の生きづらさが親の私の関りが原因とはっきり言えるのに、私に対する母親の関りを否定することがずっと出来ずにいます。
「母親の母としての関りを否定すること=母を嫌いになること」ではないはずです。しかし、母親の母としての関りを否定することが母を傷つけることを私は知っているのです。私は自分がアダルトチルドレンから回復するよりも、母を傷つけることを恐れているのです。
幼少の私は、母によって心に傷を負いました。
勿論、母だけのせいではないのです。
うちの家庭環境が悪かったのです。
母もまたその両親から深く心を傷つけられていました。
母もまたアダルトチルドレンなのです。
アダルトチルドレンは連鎖します。
気付いた人がアダルトチルドレンを克服しないと、自分の子供もアダルトチルドレンになってしまいます。
親の関りを否定して、逆の関りを子供にするように努めても、心の奥にある「恐怖」「怒り」「寂しさ」を手放していかなければ、関りの根本は変わらないのです。
母も必死で祖父との関りで傷ついた自分と同じ思いをさせないように私たち子供に接してくれていました。物心ついた時にはその事に気付いていました。
ただ、母の関心の多くは祖父にありました。
私たち子供に接していても祖父の存在がちらついていました。
自分自身をまっすぐにみられていない感覚、それは大きな寂しさを生みます。
私の子供も、子供と向き合っているつもりの私が本当は母の方に向いていることに気付いていました。だから、幼いころの私の子供は「おばあちゃん嫌い」と言っていました。その幼い子供に私は「おばあちゃん嫌いって、ママのお母さんなのにそんなこと言わんでよ」と本気で悲しみ、本気で怒りが湧いていました。
普通のことではないのでしょう。
自分では、それが普通のことなのか異常なことなのか分からないのです。
ただ、家族で「〇〇嫌い」と言ったくらいで怒りは湧いてこないのではないかと今では分かります。
今は、母からの精神的自立を目指して、心理療法を行っています。
分かりやすく傷つけられたわけではなく、
母がいない寂しさ、
母が怒られるのを助けたいと頑張ってきたこと、
母が私たち子供に自分がされて嫌だったことをしない様に自分を犠牲にしながらも子育てしてくれたことに対する感謝、
母に対するすべての感情を感じきり、未だに母にべったりな私の心を自立できるように心理療法を続けています。
何重にも蓋をして沢山の鍵をかけまくった私の心が全て解き放たれた時、私の新たな人生が始まります。
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