アダルトチルドレンの私とありふれた社会
うらの陽子
第1話 はじめに、夫と私の話。
夫に出会わなければ、私は自分がアダルトチルドレンだと気付かなかったと思います。
だから、まず最初に夫のことを少し話しておきます。
夫は現在、カウンセラーをしています。
精神科に通っている人は勿論、精神科では診れないけれど、心理療法で改善できる方が医師の紹介で来店されたりしています。
そんな彼は、元精神科の看護師で、依存症病棟で長年心理療法を患者に実施していました。その経験を活かし独立しました。
彼は病院勤務時代から、様々なクライエントに接する中で独自の心理療法を確立していきます。勿論ベースになる心理療法はありますが、一つだけではクライエントの本当の回復にはならないと試行錯誤しながら確立していきました。
その彼が考えた心理療法をまず行ったのが、病院時代の患者数名と妻である私です。
最初、彼は私がその心理療法をしても大したことは何も起こらないと思っていたようでした。しかし、予想を裏切り、私は彼の考案した心理療法を行い大きな変化を起こしました。
考案したばかりの心理療法は、無理やり自分の奥深くに封印していた自分自身を確認する作業で、頭痛と吐き気が襲ったことを覚えています。その後、今まで怒りを感じずに生きてきたと思っていた私は、ただ怒りという感情に蓋をして生きてきたにすぎないと知りました。怒りの感情を解放すると私は非常に怒りっぽくなりました。
夫の考案した心理療法をして分かったことは、ずっと、自分が感じていたと思っていたことが無意識レベルでコントロールされていて、本当の自分の感情かどうかわからないということです。
いつ私がアダルトチルドレンだと彼に明言されたか覚えていません。
しかし、確実に、あの心理療法を行った後だと記憶しています。
ちなみに、彼もアダルトチルドレンでした。
彼曰く、「うちの親父はアルコール依存症みたいなもんで、うちは典型的なアルコール依存症家族だ。だから、僕はアダルトチルドレンだ。」
アダルトチルドレンは元々アルコール依存症家族の中で育った子供を指す言葉です。依存症に関してとても熱心な彼は、依存症患者に関わる中で自分がアダルトチルドレンであると気付いたのだと思います。
勿論ですが、彼自身も自分が考案した心理療法を行いました。
彼は、なんと下痢が2日続き、2日で2キロ体重が落ちていました。
私は、彼と出会わなければ、彼が心理療法を考案しなければ、自分がアダルトチルドレンだとは気付けなかったと思います。
そして、彼のことを嫌いになり、自分が思うように生きられないことを子供のせいにして子供にあたりちらし、偽りの幸せの中で生きていたと思います。きっと子供は発達障害とレッテルを貼られ、子供にも親である私の思考を押し付け、私たちの子供はアダルトチルドレンになっていたでしょう。
いえ、申し訳ないことに、私たちの子供は、まだ半分アダルトチルドレンな子供です。
子供が生まれて数年、私たち夫婦はアダルトチルドレンであることを放置していました。
夫は自分がアダルトチルドレンであることの自覚はあったと思いますが、子供が生まれたころはそれを改善することを知らなかった。
私は自分がアダルトチルドレンであるという事さえ知らなかった。
そんな私たちの元で、大事な赤ちゃん時代を過ごした子供はアダルトチルドレンに育ちました。
今現在、夫の心理療法を子供も含め、家族で行っています。
夫が開業して5年。
彼は日々、クライエントのために心理療法を改良しています。
今は、いきなり頭痛がしたり下痢をしたりしません。
ただ、大泣きはします。
涙が浄化のサインです。
アダルトチルドレンになった原因を手放して、1人の自立した人間になる。
子供は良い心理療法ができた時は、嗚咽を上げながら泣きます。
次の日から、変化があります。
私も何度も大泣きをしてきましたが、実はまだ私は完全にアダルトチルドレンから卒業出来ていません。変化は必ずあります。しかし、まだ、私の親から自立できていないと思います。アダルトチルドレンが完全に回復するのは、親からの自立ができた時です。
私は、まだ、完全回復まではいっていない。
夫にも指摘を受けますが、私自身自覚があります。
ただ、毎日自分が心理療法をしたり、子供の心理療法を手伝ったりしてアダルトチルドレンである自分と向き合っています。
この5年間、アダルトチルドレンである自分と向き合う中で様々な変化がありました。私の中で起こった変化はアダルトチルドレンである他の誰かの変化かもしれないと思います。
まだ変化途中ではありますが、この変化途中を知りたい人がいるかもしれないですし、何より、私自身が記しておきたいと思いました。
アダルトチルドレンの日常を覗いてみてもらえればと思います。
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