放置国家

@saya-_-maru

第1話 銀髪が大好きです

好きな女のタイプは?と聞かれたら、透き通るような銀髪こそが至高。

と、答えるぐらいまで銀髪に憑りつかれているといってもいい。

どうも、銀髪大好きな都内の高校に通う高校2年生、四之宮信介です!友達にはよくシノと呼ばれます。

..と、心の中で軽く自己紹介をしてしまうほど今調子に乗っている。

何故なら今この街に訪れているという聖女様が、とてもきれいな銀髪らしいからなのだ。

この話を今日の朝クラスメイトから聞いた時に、その場で踊りだしそうなほどだったほどだ。

「うおおぉぉぉおおおお!」 

そして現在、放課後になったので聖女さまがいるという教会にむけて全速力で走っている。

理想の銀髪の女性がいたとあってはいてもたってもいられず、当然の行動であった。

「はぁはぁ..ここが教会か。」

俺と同じくうわさを聞きつけて聖女様を一目見ようと集まった人で、教会に人だかりができていた。

どうやらまだ教会の扉が開いていないようで、中に入ることができないようだ。

「どれだけきれいな髪してるんだろうなぁ..」

とか考えていたら、教会の周りにいくつか窓があることに気が付いた。

扉が開くのを待たずに見に行けるとあれば見に行かないわけがない。、

教会の周りをぐるぐる回り窓から中をのぞいていると、祭壇で祈りをささげている女性を発見した。

髪が見えなくてもどかしく思っていると、その女性が突然こちらを向いたのだ。

驚いた俺は直ぐに目をそらして、何か悪いことをした気分になって人だかりのほうへ戻った。

ちょうど戻ったタイミングで扉が開いたらしくぞろぞろと中に入っていく人だかりが見えたので、

その流れに乗って中に入っていくことにした。

中に入るとさっき外から見えた祭壇があり、そこには噂の聖女様がいた。

窓から入ってきた夕日を反射し、赤みを帯びた銀色の髪の女神とも思える絶世美少女がそこに。

そんな聖女様が俺のほうを向いて目が合ったような気がした。

しかしすぐに綺麗な銀髪に見入ってしまって、思考の余地なくただ時間だけが過ぎていった。

しばらくして満たされた俺は、満足した表情で家に戻って風呂入って飯食って寝た。


翌朝、目が覚めるとベッドの下に鎖で巻かれた古い本の転がっているところが目に入った。

これは中学生1年生の時、旅行先で古本屋に行ったときにボロボロなのがカッコよかったので買った本だ。

しかし、本なのは確かなのだが鎖で本が開けないし、表紙に何も書いてないので何の本なのかわからないのだ。

また、困ったことに鎖が硬すぎて普通には切れないときて、可燃ごみでもないので扱いに困っているのだ。

とりあえず本を本棚に戻しつつ、学校に行く支度を諸々済ませ、家を出た。

両親の都合で一人暮らしなので、朝飯を自分で作らねばならないのだが、時間がないので朝飯は抜きで家を出た。


学校について教室に入るとなにやら少し騒がしい。

「おいシノ!聞いたかよ転校生の話!来週の月曜日このクラスにくるらしいぜ!」

後ろの席から話しかけてくるのは、朝から元気な学校大好き君の服部健夜だ。

サッカー部に所属しているリア充君である。ちなみに俺は無所属だ。

こいつとは中学からの付き合いでノリが合うのでなんだかんだずっとつるんでいる。

「全く知らんが..転校生が来るのか?」

「何にも知らないんなら俺からは何も伝えないほうがいいかもな..」

何やら気になることを言っているが、どうせたいしたことじゃないので大して気にも留めずそのまま着席をした。

ほどなくして、担任の後藤先生が入ってきてホームルームが始まった。

まただるい一日がはじまってしまうのか..と、少し気落ちした。

そして、今日も普段通り適当に過ごして放課後になった。

あの聖女様を今日も見に行こうと思って教会にむかったのだが...

「今日は聖女様がいない?」

「はい。どこかへ出かけているようでして...」

どうやら教会の周りを掃除している人にきいてみたらそういうことらしい。

「あの銀髪を見るために今日をがんばっていたのに..」

明日見れるといいなと思いながらふらふらと帰り道を歩き始めた。


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気が付いたら来たことのない路地を歩いていた。

この辺りで来た事ない場所はないと思ってたんだが..まだ知らないところがあるなんてなぁ..。

適当に歩いていればそのうちわかる場所に出るだろの精神で歩き続けていると、何やら激しい音が聞こえてきた。

好奇心につられてその音のほうに向かってみると、そこでこの世のものとは思えない激しい戦闘が繰り広げられていた。

見たこともないような大きな炎と、炎を飲み込もうとしている大量の水のせめぎあいだ。

そしてなんと戦っている二人の片方は昨日教会で見た聖女様だった。

もう片方は、何やら筋肉質な体形をしていて、黒のローブを着ておりめちゃめちゃつよそうな感じがする。

「なんであんたがこんなとこに....」

「ちょうどいい、探す手間も省けて運がいいぜ俺はよぉ。」

「危ないっ!」

などと考えていると二人の注意がこちらに向いた。

突然俺の周りを大量の水が覆ってきて、その外側には炎が揺らめいている。

全く今の自分の状況はわからないが、自分のおかれている状況がやばいことだけは理解できた。

とても現実のものとは思えない超常現象を前に俺は思わず腰を抜かしてしまっていた。

その拍子に手をすりむいてしまったが、そんなことにすらこと気が付かないほどこの状況に混乱していた。

このどうしようもなさそうな状況で...何か声が聞こえてきた。

逃れようのない死を前にしてついにおかしくなってしまったのかと思っていたら...

「おまえさんよぉ...俺を使えってのがきこえないのかい?」

...どうやら幻聴ではないようだった。

声の聞こえるほうに目を向けてみると、カバンの中から鎖付きの古ぼけた本がでていた。

今朝本棚に戻したはずなのにどうして..と思っていると

「とりあえず..とりあえずこの邪魔な鎖を取り除いてくれ。頼むよぅ。」

と、もう一度さっきの声が聞こえた。

まさか本がしゃべるとは...もうこの状況なら何でもありな気がしていた俺だが、流石にそれはキャパオーバーだ。

「とりあえず何が何だかわからないけど、そんな怪しい本の鎖なんかとったら俺そのまま呪い殺されそうなんだけど..

 ..呪われたりしない?まじでやばそうなんだけど?確かに藁にもすがりたい状況なんだけども...どうなの?」

内心こいつ自身に聞いてどうすんだと思いつつもこいつに聞くしかないのでそう聞いた。

「今この場で盟約を結んでもいいぞ。俺の力を使わないとあんたも死んじまうし、俺にも非があるから詫びる機会をよぉ...」

急に盟約とか胡散臭いことこの上なかったが...現状の打開策がそれしかないのも事実なので従うしかないようだ。

...それに何やら気になることを言っていたようだし。

「ここはお前を信用するしかないようだな。それで、契約ってどうやって結べばいいんだ?」

「...細かいことは気にしている場合じゃないな。結び方は簡単だ、坊主の血を俺に一滴たらして自分のイメージする

 力への思いと俺の名前を口に出してくれればいい。そしたら鎖もとれるからよ。ちなみにわしの名前は村正という。」

急に力へのイメージとかいわれても困るんだが...それが必要なら仕方がない。名前もちょっと不穏なんだけど...

さっき腰が抜けたときに少しすりむいてしまった手の傷口を少し広げて血をたらし...力に対する冷たいイメージと村正の名を口にした。

「無に帰せ 村正」

すると本に巻き付いていた鎖が散っていて、古ぼけた本のページが開かれた。

そして気が付くと手に一本の刀を握っていた。

「あぁ~...やっと本から出られた~。ほんとに暇だったんだよ。しかも一人だったしさぁ。」

...なんか思ったのと違う感じだけど、そんなこと考えている時間ももうなさそうだ。

「そろそろやばそうだからさっさと答えてほしいんだが、お前いったい何ができるんだ?」

「俺を呼び起こすときにイメージした力そのままの力が使えるぜ、坊主」

なんかいろいろつっこみたい気持ちもあるがそれも後回しだ。

「わかりやすくって条件も付け忘れてたよ。現状で何ができるんだって質問に変えておく。で?どうなんだ?」

「話すのがずいぶんと回りくどくなっちまっていけねぇや。へへ、悪いねぇ坊主。

 俺の能力は単純でよぉ。例えば今周りにある水とか炎とか剣で斬れば消せる感じだぜ。」

とりあえず斬れば現状の打開ができるらしいのでとっとと行動に移すとしよう。

剣とか今まで握ったことないけどとりあえず手に握った刀で周りを...切り裂いた。

「うお..本当に切れちゃったよこれ。」

そして、外に出た瞬間俺の視界に映った光景は、


聖女様が炎で囲まれていて今にも焼き尽くされてしまいそうなところであった。


「たださえ実力差があるのによぉ...ゆりかご発動させながらじゃあ数分ともたねぇよなぁ。

 こっちも殺すつもりはなかったのによぉ...お前もそれはわかってただろうに。本当にお人好しだなぁ聖女様よぉ。」

「私はこん..な..ところ..で..倒れる...わけには。」


やばいやばいどうしようどうしようどうしようなにができるなにができるなにができる聖女様しんじゃうよおおおぉぉぉぉおおお

「村正!あの炎斬りたいんだけどなんかないか!?]

「落ち着きな坊主。

 俺の能力の中には歴代の使い手の技術の継承ってもんがあってなぁ..さっき自身の周りを切り裂いた時にも感じただろ?

 今まで剣を握ったことすらないのに自然と刀を扱えていることの不思議さに。

 それこそが俺の能力の真髄でねぇ..だからとにかくつっこめばこのくらいならなんとかなるぞ。」

ここまできたらもうこのままこいつの言う通り突っ走るしかないようだな。


「そろそろ疲労で能力の使用どころか、意識を保っていることすらつらいだろう?今楽にしてやるからよぉ..逝けや」

今まさに超常の炎が地に伏す聖女を焼き焦がそうとしたその瞬間

「この銀髪の価値がわからないとは...お前は男として非常に多大な欠陥を抱えているようだな。」

村雨により炎を切り裂いて、黒ローブにの男に剣を向け、立ちはだかった。

「教育してやる。てめぇにこの世で最も尊いものがなんたるかをな。」

すると、黒ローブの男はにやりと笑って

「おいおいちょっと待てよ。俺は別にお前も殺そうだなんておもっちゃいないさ。むしろ勧誘に来たんだよ。

 途轍もない潜在能力を秘めたやつがいるらしいってきいてよぉ。そこに転がってる聖女様も多分そうだと思うぜ。

 同じ人材を取り合ってるんだ。争いにもなるってもんだろ?

 実際お前の実力も確かなものってのはわかったしよぉ。

 どうだ?そいつのとこよりこっちのギルドのがいい待遇が期待できるぜ?

 お前みたいな強い奴なら新参者とか関係なしに上にのぼれるぜ?どうだ、こっちにこないか?」

「だめ...。この人の力は我欲にまみれたやつらなんかには渡すわけにはいかない。

 お願い。私たちのギルドに来て。」

「...こっちにくればそいつにもう手出しはしないと誓ってやる。こっちにこい。

 さもないと聖女共々消し炭にしちまうぞ。」

どうやらこの二人は俺を取り合って戦っていたらしいな。

となれば、俺の返答は一つだな。

「どんな理由があったとしてもだ..銀髪の良さが理解できず傷つけるような奴らの仲間になるつもりはないな。

 これが返答だ、クソ野郎」

「残念だ...どうやら二人仲良く消し炭になりたいようだな。」

「業火の極刑」

やつがそう口にした途端、俺たちの周りに膨大な量の炎が集まってきて何かをかたどり始めた。斬首台を模しているかのような形だ。

「お望み通り消し炭にしてやるよ。くらえや!」

やつが最後にそういうと、炎で模したギロチンをこちらにむけて落としてきた。

「ごめんなさい...こんなことに巻き込んでしまって。そしてこんな再開になってしまって本当にごめんなさい。

 謝って済むものではないけれど、最後に謝らせてほしい。」

力なく地に伏せた聖女が、目線をこちらにむけて懺悔をしてくる。

「何やら気になることを言ったが、謝罪は受け取れないな。何故なら、まだ死なないからだ。」


そういうと俺は全神経を集中させた。この状況の打開策を俺は頭でも体でも理解していた。

村正を握る手に力を込めて、この絶望的な状況を打開せんと必殺の気合を込めて

「一閃」。


たちまち俺達を押しつぶさんとしていた炎の塊も、囲っていた炎も、すべて消え去っていた。

「どうしたんだ?まさかさっきまで一般人だった俺に軽くいなされちゃうぐらいのものなのか?」

流石に今のをしのがれるとは思っていなかったみたいで、だいぶ驚いた様子だ。

「調子に乗るなガキがぁ!ひねりつぶすぞ...と、言いたいところだが流石にドンパチやりすぎた。

 援軍が来ても面倒だからな。ここは一旦引いといてやるよ。

 お前の顔覚えたからな?絶対消し炭にしてやる。」

そういうとやつの周りを炎が囲みだして、爆発とともに強い閃光を放った。

気が付いた時にはもうやつはその場にはいなかった。

「なんとか、生き残れたか。」

そういって俺は村正を鞘にしまった。

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