卒塔婆の街のブンヤ 8
ついでに撮影された
「おばあちゃん、これ下さい!」
店の方から少年の元気な声が聴こえてくる。
こんな時代だけど、これからの世界を担っていく子供達には少しでも今の時間を楽しんで欲しいってのは正直な願いだ。
どうしても自分の子供時代の
破壊された街、巻き起こる
あんな光景なんて、知らなくていい。
「おばあちゃん? はて…聞いた事無い商品だね…? おおーーーーーいおばあちゃぁぁぁぁぁん! ……ごめんねぇ、おばあちゃん売り切れみたいだわ」
子供相手に何言ってんだ
「えっ? あ、あれ…えっ?」
めっちゃ困ってんじゃねぇか。平和な日本でトラウマにする気か。
「ここにいるのは誰だい? おばあちゃん? それとも? ……分かるよねぇ?」
「あ…あの…」
「上手に言えたら…オマケでイイモノあげるよォ…!」
もっとハイなモンありまっせ
「お…………………お姉……、さん…」
「よくできましたァ…! さあ持っていきな、売れ残りお菓子詰合せだ。ミンナニハナイショダヨ」
悪魔のような悪魔の笑顔だった。
「イヤァッハァ!! ありがとうおばあちゃん!!」
「お姉さんだって言ってんだろ! …全く…」
「いい歳して何やってんだよ」
「賞味期限切れてないんだからいいだろ」
そっちじゃねえよ。
「何か分かったかい?」
携帯電話を
「ああ、お
「そいつは
どっこいしょと
「…いずれ戦場になっちまうのかねぇ…」
ポツりと、
オヤジと組んで飛び回っていた時代があった人間だ。恐らくは
「…さあな。けどこの世界の軍隊だってザルじゃない。その内どうにかしてくれるさ」
「軍隊、か」
意図の読めない横顔で加熱された煙草を吸う。
参ったな。こういう時どうしたらいいのか人生の
すると、空気を読んでくれたかのようにまたチャイムが鳴り響いた。
「おやおや、今日は
よく潰れないな。
換えたばかりの電子煙草を
「おばあちゃんこんにちは」
「はいこんにちは」
今度は女の子の様だった。お姉さんって呼ばせるのメンズ限定かよ。ババハラだな。
「───あら? どうしたんだいその
「あ…うん、これは…」
うん?
何だろう、なぜか気になった。ニュッと頭をレジの方に伸ばして様子を見る。
「ヒッ!!」
少女がこっちに気付き明らかに
地味に深く傷付いた。
「馬鹿、いきなり顔出すんじゃないよ! 店潰す気かい!」
なに人の顔を
もう
「ああゴメンねぇ、怖かったよねぇ。でも大丈夫だから。ウチのペットよ」
「ヌャーン」
人生で初めてこんな声出したわ。
「た…食べたりしない…?」
「好きな食べ物はコーヒーと煙草だヌャーン」
飼い主にボコって殴られた。
「痛いヌャン!」
いやまじで。中指の第二関節立てて殴りやがったな?
「プ…! あはははっ」
でも、少女のトラウマにならずに済んだみたいだからまあヨシとしよう。
俺はそれとなくその子の下げたバッグを観察する。───多分、間違いない。
「ごめん、ちょっと聞きたいんだけど、そのバッグ…」
「取材料」
あきんど
「はいどうぞ…」
さっき煙草を買った際の
「よかったねえ、ウチのペットが怖がらせちゃったお
「ホント!? ありがとう、ピアスのワンちゃんさん!」
猫のつもりだったんだけどな。
まあ喜んでくれるなら悪い気はしない。
「全く…、アンタもブンヤなら手順って物があるだろう?」
呆れた顔で先輩がこちらを刺した。
一瞬で意図を読み取る辺り流石はオヤジと一緒だった事はある。
「
達人の気配りに素直に感謝し、
八重ちゃんがこの店を続けている理由が少しだけ分かった気がした。
(次話に続く)
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