第20話インテルメッツォ-20 回申/会心

「さぁてぇ、ではそろそろ宜しいでしょうかぁ。あなたがお訊きになられたことについてはお応え致しましたぁ。ですのであなたがお知りになりたいことについてもご理解頂けたようにお見受け致しましたのでぇ。ここでお開きにするのが適当かと、わたしは存じ上げますよぉ。あなたがお帰りになるには、丁度良い頃合ではないでしょうかぁ。もう、此処にいらっしゃる意味も必要も無いでしょうからぁ。ああ、お帰りになる方法は簡単ですよぉ、あなたが此処まで無駄にお歩きになってこられた道を、後ろを向いて引き返すだけで善いのですから。これならば、自分の道しか歩めないあなたでも何とか出来るでしょう? こうすれば、誰かの無価値な願いを自分の道とするしかなかったあなたでも、? ですから、あなたはそうすべきなんですよ。あなたがわたし達と一緒に生きてくれないと言う以上、そうなさるのが最適なのです。勿論お心変わりして頂けるのでしたら、それに勝る喜びなどありはしません。わたしの全身全霊、隅から隅まで余すところなく使い尽くして、あなたを大歓迎致しますよぉ。ええ、それはもうじっくりたっぷりねっとりとぉ。ですが、そのどちらもお嫌だと仰るのでしたら、本当に残念ですが致し方ありません。本当に、あなたはどうしようもありません。わたし、我慢出来ないんですよねぇ。自分の思い通りにならないということがぁ。あなたならそんな時にわたしがどうするか、よぉくご存知のはずですよねぇ? だから、あなたは此処に

 少女の黒曜石の瞳、その左目が妖しく揺らめく。

 その目が、不可視の圧力を伴って男に向かい直接迫る。

 その言葉が、男へ不条理な二択を突き付ける。

 自分の歩んだ道を逆巻いて、これまで進んだ全てを無に帰すか。

 自分達と共に同じ道を進み、これから新たな道を歩んでゆくか。

 少女は己の提示する選択こそが、男にとって最も正しく善い結末だと確信している。

 男の前に示された、独善的で理不尽な二つの選択肢。

 だがそれは少女にとって、なんら問題のあることではない。

 たとえ男がどちらを選んだとしても、

 故に、そう決断を促した。

 そして、男の応えは。

「お前のは確かに受け取った。全く、意外なほどに心に染みるものだ。お前の言う通り、これまでの全てを無かったことにする。これからをお前達と共に生きる。それもまた悪くは無いと、思ってしまう程度にはな」

「でしたら……」

 少女の微かに弾むような声を遮って、揺らぐことなく男は続けた。

「しかし生憎だが、お断りさせて頂こう」

 男の言の刃が、初めて少女の言葉を断ち切った。

「悪いが、それは出来んのでな」

 それは絶対の意志を込めた、拒絶の言葉。

「俺には、捨てられないものがある。お前が無駄で無価値と断じたものこそが、俺にとって何より掛け替えのないものだからだ。それを手放すなどと、そんなことは魔王のすることではないだろう?」

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