第11章 2022年、2月の呟き

第70話 永遠のエッセイとなれ……。

 それではラストエピソードです。

 最後のエッセイということで、ここで一つ切ないお話をしたいと思います。


****


 ──数十年前、何も恋愛にえんがないと見せかけた人にも、とても大切な人がいました。

 その相手は大学を卒業したばかりで、絵になるように可愛くてピュアで、その反面子供のような部分もあった人でした。


 当時勤めていたバイト先で二人は知り合い、恋に落ちるのは時間の問題でした。


 仕事上で意気投合し、仲良しになった二人はすぐさま両想いとなり、付き合い始め、これからの未来を約束する決断をしました。

 そして、二人は結婚の誓いを紡ぎ、いつまでも幸せになりました。


 しかし、その幸せの形は単純そうでとてもいびつでした。


 お互いに愛し合っていた二人はいつの間にか片割れになり、離れた二人は別々の幸せを築いていたのです。


 初めての本当の恋を知り、初めて人を心から愛した反動で、愛によって傷つきすぎたその片割れは穴の空いた心を埋めるために別の恋をしました。

 ……ですが、どの恋も真実の愛には発展せず、どれも空回りで、うまくはいきませんでした。


 それだけ片割れは傷つき、苦しみ、風となって消えてしまった恋人を愛しすぎたのでしょう。


 片割れはこれからも恋をすることがあっても、もう前のように心を開き、人を深く愛することはないかも知れません。


 でも片割れは幸せを求めて、今日もその初恋の相手のことを胸の中に秘めて、がむしゃらに毎日を生きていくのでした……。


「──おい、ちょっと待て。風となっていなくなってからも何十年も同じ人を思い続ける恋愛話なんて、そんな漫画みたいな話があるのかよ。お前さん、ちょっと酒の飲みすぎじゃね?」

「悪いな。胸を焦がす新しい作品として、こんな純愛な物語の設定もありかと。それにこれは黒ビールと見せかけてただのコーラだ」

「何だよ。お子さまの舌して、また創作の話かよ。物書きってヤツは分からないな」

「分からなくてもいいさ。心の想いを文にして綴る。小説家とはそういうものだ」

「ヘイヘイ。その冗談じみた話を聞いた礼として、ここの会計、お前さんもちな」

「えっ、ご冗談を。財布の中、数枚の宝くじのスクラッチカードを削るための百円玉一枚しか持ってないんだけど?」

「なっ、この期におよんで賭け事がらみかよ。最初から俺におごらせるつもりだったのか!?」

「分からないぞ。このカードが僕に大いなる大金を呼び寄せてだなー♪」


「──それでくじの結果は?」

「見事に惨敗です。てへぺろ♪」

「可愛く誤魔化しても無駄だぜ。

マスター、後のことは頼んだ。このただ飯食らいの野郎を思う存分にこきつかってやってくれ」

「ぎゃーふーん!?」


 ──創作小説。

 それは終わりのない探求心が生んだ一つのドラマでもある。


 酒のように見えるジュースに酔いしれるように、こうやって一つの物語を作るのも悪くはない。


 小説とは常に自由で思うがままに歩き出していく物語なのだから……。


****


 十ヶ月という長くて短い期間でしたが、ここまで私のエッセイを読んで下さり、誠にありがとうございました。


 エッセイはこれにて終わりですが、これからもぴこたんすたーの小説の物語は綴られていきますので、応援よろしくお願いします。


 fin……。

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能天気物書き作家による、のほほんとしたのどかな日記帳 ぴこたんすたー @kakucocoro

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