第68話 妻、小学生になる。実写ドラマになっちゃいました

『妻、小学生になる。』のテレビドラマがスタートした。


 タイトルからしてカオスな感じを受けるかも知れないが、中身はストレート。


 一人の中年おじさんが小学生の女の子に恋をする物語である。


 ……いや、十分に怪しい紹介になってしまったって、そうなんだけど、何というか、その小学生はおじさんの元妻であり……って余計難しいことになってしまった。


(ただいま、記憶の整理中……)


 実はおじさんは十年前に事故で奥さんを亡くし、生きる希望を無くしていた。

 そこに小学生となって生まれ変わった奥さんが現れたという設定だ。


 俗にいう転生ものであるが、異世界ではなく現実で起こった転生ものである。

 色々とややこしい物語だな。 


 元はTwitterでも公開していた漫画であり、第一話の衝撃的な展開は多くの読者を虜にした。


 イラストはそんなに上手い方ではないが、死に別れた妻との再会に純愛を捧げる一途な夫に見るものを圧倒される何かがあった。


 もし、自分がその立場だとすればどうするだろう。

 周りから犯罪目線を送られても堂々と小学生を好きになれるか。


 いや、無理だろう。

 例え中身が元妻でも見た目は小学生だから。

 この歳になって警察のお縄に捕まりたくない。


 ……というか小学生のどこに魅力が。

 まだ子供じゃないか、普通に考えてもおかしい。


 しかも転生したということはその元の子供の存在を奪ったということ。

 考えれば考えるほどに矛盾が沸いてくる。


 ──でもこの原作を読み進めて分かることもある。


 あなたは何があろうとも愛する妻を生涯愛せるかというフレーズだ。


 このおじさん、意外と愛妻家であり、一人の男でもある。

 今どき、こんな一途な男も珍しい。


 人は失ったら別の相手を求めて新しい生活を始めるのが普通なのに、このおじさんはそうしなかった。


 妻に先立たれてショックを起こし、毎日、死んだ魚の目をして仕事をし、帰宅してスーパーの弁当で腹を満たす。


 その巻き添えに娘も加わっていた。

 父娘揃って、死んだように生きていた。

 まさに生きるしかばね、ゾンビである。


 そんな絶望の狭間に生まれ変わった妻が家にやって来て、時間が無くてお弁当の惣菜でもお皿にきちんと盛り付けなさいなどと色々と説教をするのだ。


 ありそうでなかった涙が溢れる切ない展開、心がほんわかと温まるエピソード。

 そして、この物語は始まりに過ぎなかったことに……。


 ──現時点でこのコミックスは九巻まで発売しており、三ヶ月連続刊行をするという由々しき事態が起きている。


 物語の流れからして、完結の意図を辿っているのだろう。


 これまで様々な家庭像を描いてきた作品だったが、小学生の妻の意外な反応により、物語は大きく傾き始める。


 はたして夫は、娘はどういう決断をするのだろうか。


 続きは来月刊行の十巻にて……。

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