第17話 ルカテリーナ様との話し合いに臨む僕 ③
一通りの説明を終えると今のところはこれで幕引きとされ、質問があればその時に話すと約束をした。
「お疲れでしょう、クロウル様。これからわたくし達がクロウル様にご奉仕致しますわ。どうか今日という記念すべき日を、存分にお楽しみください」
それは、ルカテリーナ様の号令によって始まる。
この言葉を待っていたかのようにメイドさん達は一斉に動き出す。
背後から近寄ってきたのメイドさん達が、椅子に座っている僕の両脇に腕を回したと思えば、協力して僕を立ち上がらせると、もう1人隠れていたメイドさんが、僕のズボンをずり下げた。
「いえぇーぃ、とったどー」
「可愛いお尻、ねぇ、見てみてー」
マジっすかー。パンツまで同時に脱がされた。
息子がこんにちはをしてるよ。
メイドさん達の視線が僕の息子に突き刺さる。
「いやーん、素敵ー」
「長いよ。これ。太いし」
「触ったら駄目かしら」
「いいんじゃない。触っちゃえー」
「つん、つん……アッ……ピクってした」
「スゴーイ、プリプリしてる」
「いいな。私も触っちゃおっと」
「うっひゃー、元気になった~、スッゴ~イ」
メイドさん達はしげしげとぼくの下半身を興味深そうに見つめてる。
「ちょっと~、行き成り何するんですかー。やめてくださいよー」
と僕が叫んでも誰も止めようとしない。
そう言っている間に上の服も脱がそうとしてくる。
「何って目が覚めたら、やっぱりお風呂でしょ」
「そうそう、一緒に入りましょ」
「綺麗にしたげる。心も体もね」
「可愛いお尻、ねぇ、見てみてー」
「くんか、くんか」
「ねぇ、匂い嗅ぐのは可哀想だから、やめたげなさい」
「でも、このお尻すべすべよ」
「ホントだー、しかもぷにぷにだー」
「もう、やめてー」
情け容赦ない攻撃を受けた僕は着ていた服を寄ってたかって剥ぎ取られ、生まれた姿にされてしまう。
「クロウル様ったら、身体は正直者だねぇ」
メイドさん達の視線を浴びて興奮した僕の息子は自己主張を開始し始めた。
慌てた僕はしゃがみ込むと、両手で息子を覆い隠す。
「引き締った筋肉。日焼けした肌。いいですわね(ジュルリッ)」
「襲ったら駄目かしら」
「少しぐらいだったら、いいんじゃないの」
メイドさん達がヒソヒソ喋る話が聞こえてくる。
「さあさあ、次は私達も脱ぐから見ててね、クロウル様」
メイドさん達は僕の目の前でメイド服を脱ぎ捨て全員が純白のビキニ姿になると、各々が僕に向けて刺激的なポーズの姿勢をとって誘惑し始める。
「うぅぅ、これってエロすぎだろ」
僕の息子の自己主張がより激しくなるが、それを必死に押さえつける。
「はーい、裸になったらお風呂に直行よ」
「クロウル様、こっちだよ、早く、早く~」
「遊ぼ♪遊ぼ♪お風呂で遊ぼっ♪」
羞恥心に悶えていると、ビキニ姿になったご令嬢達に手を繋がれ、そのままぷよぷよの肉体達に包まれてお風呂に連れてこれると、そのまま玩具のように弄ばれた。
お風呂場は広い空間に壁一面が全面鏡バリで、鏡は湯気や水しぶきを弾くようになっていた。
その全面鏡バリには純白のビキニが水を浴びて肌の色が透けて見える、なんともエロチックな水着が鏡をとうして映し出されていた。
頬を染めて一生懸命にご令嬢達が僕に奉仕しようとする姿に目を細めて見ていると、
「クロウル様、私の身体を弄んでみませんか」
とルカテリーナ様が僕の耳元に顔を近づけて小声で囁かれたが、
「これ以上の誘惑は禁止です。止めてください」
と鋼の意思をもって誘惑の言葉に何とかあがなった。
「勘違いしそうになります。本当に襲われてもいいんですか?」
結婚もしていない公爵ご令嬢達に欲望に任せて襲いかかったが最後、どうなるのか全く予想がつかなかったから、必死に両手で息子を覆い隠すと、迫り来る快楽の魔の手に負けないように耐えしのぶ。
「いいですわ。子作りには必要な行為ですもの、中で果てなければ大丈夫ですわ。それにわたくし、公爵家秘伝の避妊魔術も習得しておりますの。ですから、決意が固まったらいつでもいいですわよ」
と挑発的な言葉を僕の耳元で囁くルカテリーナ様に対し、
「今は決意が固まりません。ですから僕の息子を弄ぼうとするのはやめてください」
と強い意思で跳ね除ける僕。
その後も僕とメイドさん達の戦いは続き……。
もう言葉では言い表すのも恥ずかしい程の至福の体験をした僕は燃え尽きた。
頭が火照って、何も考えられない。何も思い浮かばない。
放心したように動く気にもならない。
「クロウル様のヘタレって可愛くっていいよね」
「うん、その純情さって、今の時代じゃ超貴重」
「そうね。大切にしましょ」
もはや、水着なのか裸なのかわからないエロい姿をしたご令嬢達のひそひそ声が耳に届く。
男の裸の付き合いなんかでお風呂に共に入るのは、よくあったが、まさかご令嬢の集団と裸の付き合いをするとは夢にも思わなかった。
女湯に僕が一人で特攻して、孤立無援な戦いから奇跡の生還を果たしたような、そんな生きていてよかったという満足感で僕の心は満たされた。
「はーい、クロウル様、お風呂からあがったら、今度はこれに着替えましょうか」
そういうと玩具のようにされながら、火照った身体にシャツやパンツを履かされ、貴族の着るようなタキシードに着替えさせられた。
「お似合いですよ。クロウル様」
「かっこいいよ」
「もう一度キスしたくなったわ」
「それは夜のお休みのキスまで我慢よ」
えぇ、お休みのキスがあるんだ……そりゃ知らなかった。
「クロウル様、このドレス、どう思います」
ルカテリーナ様がそういって僕の目の前に現れると、スケスケビキニ姿から一転して、素敵なドレス衣装を身に纏っている。僕によく見てもらおうとしたのだろう、優雅にくるりと回ってその姿を披露してくれた。さらりと風になびく髪。髪の匂いが鼻腔に届く。ルテカリーナ様の髪色と同じ空色のドレスは彼女の美しさをより際立たせ、ほれぼれと見蕩れてしまう。
「凄く綺麗ですよ。ルーナ先生」
「まぁ、嬉しいですわ」
ルテカリーナ様は目元を緩めて喜ぶ。
そんなルテカリーナ様は濡れていた髪もすっかり乾き、綺麗に煌く髪色となっていた。
薄い化粧もルテカリーナ様の美貌をますます際立たせていた。
普通は女性の着替えは時間が掛かるもの。
この国でもそれは常識というか、もはや宿命ともいえるものだが、ここにいるご令嬢達は、その宿命を克服する魔道具──
「では、参りましょうか」
ルカテリーナ様はおもむろに手を差し出してきた。
これはエスコートしろということだろう。
僕はルカテリーナ様の手を取って、お互いに手を軽く握り合う。
「何が何やら、さっぱり理解できていないんですが......」
「こういう時は知っている女性に全てを委ねるのがよいですわ。
クロウル様はわたくしと手を繋いでエスコートする姿さえ、周りに見せておけばよいのです」
「もしかして、もう貴族講習が始まってるんですか」
「えぇ、ここのゲートタワー内で疲れた身体を癒していただく間に、クロウル様には貴族の振る舞い、身のこなし、教養をしっかり学んでいただきます。教養は貴族にとって何より必要な武器になりますから真面目に受けてくださいね」
「勉強は嫌いなんですけど......」
「存じておりますわ。ですが、他の子達とお喋りしながら学んでいくのも、案外楽しいものですわ。きっと苦手意識も克服できますわ」
さっき説明を受けて知ったんだけど、ここにいるご令嬢達の約半数は貴族になりたてらしい。
なんでも『王権派閥』の結束を高める為の条件として、平民に成りたがる僕の後見人となるように王族が呼びかけたのを切っ掛けに、僕に貴族のご令嬢を差し出してこようとする貴族が続出したらしい。
この場にいるご令嬢達の実家は王権派の貴族だそうだが、貴族家の全てに、僕と同年代か近しい年のご令嬢がいるとはかぎらない。
そういった場合には、貴族は見目麗しい女性を見繕い、その中から良さそうな女性を養女にするのが一般的で、養女にした女性を嫁に出しても恥ずかしくないように教育するという。
でも今回は養女にしてから時間があまり無かったらしい。
この場にいるご令嬢の半数は、まだ貴族の教育が施されていないそうで、僕の貴族教育に一緒に参加して学んでいくと聞かされていた。
「はー、もうこれって全部、最初から最後まで仕組まれてたってことですよね」
今回のクエストに参加するように冒険者ギルドに圧力をかけ。
『紅龍の牙』に臨時サポーターになるように仕向け。
ゲートタワーを設置するように、王国から特別クエストを発注し僕が受けるように仕向ける。
全部話されたことだけど、最後にもう一度しっかりと確認しておきたかった。
「えぇ、そうなりますわね」
「もう抜けられないんですよね」
「えぇ、王族が権力を行使したのですから、もう不可能ですわ」
現実を突きつける言葉をいうルカテリーナ様は僕の目をまっすぐ見据える。
その表情を見ていると吸い込まれそうになる。それほどの美貌だ。
こんな美人な女性と結婚できるなんて、光栄なことだと思う。
普通に生きていたら、こんな幸運はありえないだろう。
でも、これは僕の考えであって、ルカテリーナ様の気持ちではない。
ルカテリーナ様の真意が知りたい。
「ルーナ先生は僕と結婚してもいいんですか?」
「えぇ、貴族に生まれたからには、政略結婚は当然のお役目ですから。小さい頃からそう教え込まれて育ちました。もう何の疑問もありません。ですが正直に申しますと、お会いする前は不安な気持ちもありましたわ。でももう大丈夫です。オロオロしているクロウル様を見ていると守って差し上げたくなりました。今はもう少しも迷いはありませんわ」
「それは好きということでしょうか?」
「そうですわね。好きというより今は可愛いでしょうか。そんな風にわたくしの心を推し量ろうとするクロウル様はわたくしにとって、怯えた子猫みたいで愛しく思えますわ」
「子猫ですか.........」
「そう、クロ猫さんですわ。時折目線がオロオロして震えるかわいそうなクロ猫さん。これからは、たっぷり愛情を注いで可愛がって差し上げますわ」
そう言い終えるとルカテリーナ様は僕の頬にキスをそっとしてくれた。
軽いキスだったが温かい。
「少しは手加減して下さいよ」
僕もルカテリーナ様を見習って彼女の頬にそっとキスをした。
すると彼女の頬が徐々に赤く染まっていく。
「うふふ、わかりました。それでは立ち話もなんですし、話しながら向かいましょうか」
「えぇ、ルーナ先生の仰せのままに」
ルカテリーナ様と一緒に部屋を後にして廊下にでると、壁際に置かれていた昇降機──『
前回乗り込んだのはメビアナさんが立体映像で浮かび上がる機体だったけど、今回乗り込んだのは、ルカテリーナ様が立体映像で浮かび上がる機体になる。
「あっ……そういえば……忘れてたわ……あぁぁ」
ルカテリーナ様が小声で小さく呟いた。
「いやぁぁ、さいてぇぇ、もぅ、どうしましょう」
いきなりルカテリーナ様が悶えだした。
その理由はすぐにわかった。
立体映像のルカテリーナ様のお姿は、なんと純白のウエディングドレス姿だった。
ちゃんとブーケも持っている。
とても見目麗しい姿で本当の天使が舞い降りたように見えてしまう。
映像越しにもじもじしてる姿がなんとも微笑ましい。
今目の前にいるルカテリーナ様は強さのある美しさが光り、映像越しのルカテリーナ様は可憐で儚く見える。
どちらが本当の姿なんだろう。
見比べようにも、僕の横にいる本物のルカテリーナ様の頬は赤く染まっていて、僕のほうには一切目を合わせてくれない。女性の魅力ってちょっとしたことで変わるから僕には見分けがつかないな。
「もう、早く大ホール区画に向かってちょうだい」
顔全体が真っ赤になったルカテリーナ様が立体映像のルカテリーナ様に命令する。
ルカテリーナ様の命令に従って
「はい、クロウル様。只今向かいますわ」
「えぇ~っと、わたくし……自己紹介をしますわ。恥ずかしいですが、しっかりお聞きになってくださいまちぇって、イタッ噛んじゃった」
映像越しのルカテリーナ様はよほど緊張しているのか、舌を噛んだみたいだ。
本物のルカテリーナ様はプルプル震えて顔を赤くしたまま
「すーはー、ごめんなさい。今のは見なかったことにしてくださいね。それでですね……クロウル様は既にお忘れかと思いますが、わたくし、小さい時に一度、誘拐されそうになった時にクロウル様に助けてもらった事がありますの」
立体映像のルカテリーナ様が、過去の出来事を話していく言葉をしっかり聞き取るが……。
覚えていない。
全然記憶にないんだけど。
えっと、もしかして街中で女の子が拐かされそうになった時かな?
街中を歩いてると平気でそんな光景を目にするから、どの子だったのかも検討がつかない。
貴族の洋服を着ている子を助けた覚えはないんだけどなぁ。
「それから、ずっとクロウル様はわたくしの心の中では、いつも王子様のような存在でしたわ」
もしかして、人違いじゃないだろうか。
でも公爵家の情報網があるだろうから人違いは違うか。
多分僕の知りえない何か
許婚となる相手を知るために、隠れて素行調査するのは、よく耳にすることだから。
「お父様からご縁談のお話を聞かされたときは、とっても嬉しかったんです」
実物のルカテリーナ様はつんとした高飛車な笑顔なんだけど、立体映像越しのルカテリーナ様は爽やかな笑顔でこっちの素の表情のほうが断然素敵で可愛らしいと思った。
「普段はもしかしたらクロウル様に生意気な事を言うかもしれませんが、それは本心じゃありませんからね。わたくしは今でもクロウル様を深くお慕いしております」
立体映像越しのルカテリーナ様の告白が終わると、もう観念したのか、真っ赤な顔をした実物のルカテリーナ様が僕に抱きついてきた。
「さっきは人の目がありましたから、嘘をつきました。これがわたくしの本心ですわ。しっかり受け止めてくださいませ」
えぇ~っと、こういう時、男だったらどうするのがいいんだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます