第13話 新たな能力の方向性に気づき始めた僕①

 もう、何度目のキスだろうか。

 これで、ようやく最後の子だ。

 お互いの自己紹介は既に済ませた。

 目の前にいる子の名前は、マリフィア=リア=アスタルトさん。

 アスタルト伯爵家の次女で僕と同じ15歳。

 ピンク色のウエ─ブがかった髪と目の下のほくろがチャームポイント。

 日焼けとは無縁な白い肌で、華奢きゃしゃな体付き。

 ただ、胸だけはボリュウムがあって、大きなお山が2つ見える。

 メイド服から素肌の胸元が見えていて、そこから香水の匂いがする。

 僕の視線は、何故か、自然と胸の谷間に向いてしまう。

 心臓のドキドキセンサーの反応は、未だに最大音の警報を鳴らしているから、この子も僕のストライクゾーンど真ん中の、理想の恋人候補に成り得る女性だということだろう。


「.....クロウル」

「.....マリフィア」


 2人で呼び名の言い合いをするには訳がある。

 それは、純愛路線のシチュエーションから優しくキスしてほしいと、マリフィアさんご本人からご要望があったから。


 今の僕は、メイドさんの言い分を、そのまま鵜呑みにして叶えるヘタレ人形へと成り下がっていた。


 言い方を変えれば、メイドさんの玩具とか、メイドさんの奴隷人形などと言われても、決してそれを否定することは出来ないだろう。


 これは仕様が無いと僕は思う。そう思うのを許してほしい。

 だってそうじゃないか。

 女性陣の御旗に集まる戦力は大勢いるのに。

 対する男性陣の御旗に集まる戦力は僕1人だけ。

 こんな戦いは不公平ではないだろうか?

 戦いのコングがなる前から、端から負けは確定しているんだから。

 この状況で大勢の女性陣に勝てる男性が居たら、その人物こそ真の勇者だと褒め称えてやるよ。


 

 ここまでやり切ったからには、もう、成るようにしかならないと、若干諦めの態度で、下手な演技を演じる大根役者な僕と、共演者である女優マリフィアさんが、ベッドの上にお互い顔を合わせるように座りあう。


 2人はしばらくお互いの眼を合わせて見つめ合う。

 マリフィアさんの瞳はうるんできらめき、ほほも真っ赤に染まっている。


「マリフィア、笑って!もっと自然にね」

「(ニッコリ).....こうですか」


 緊張しているのが一目でわかるから、緊張をほぐそうと笑いかけて話すと、マリフィアさんも笑い返してくれ、それでお互いの緊張が、少しだけ和らいだように感じた。


「うん、そうそう、その笑った笑顔がいいな。可愛いよ」

「(もじもじ)......あっ..ありがとう」


 褒められて嬉しかったのか、火照った顔を下に向け、両手をモジモジするマリフィアさん。

 

 次にマリフィアさんの手の指の間に絡めるように軽く握ると、軽く揉みほぐしてみた。


「あっ..そこ...気持ちいいです」


 マリフィアさんの手と声も細かく震えているけど、マリフィアさんなりに気丈に振舞っているようだ。


「もう少し、こうしててもいいかな?」

「......うん」


 お互いの指を交差させると、体温を確かめ合う。


「もう、準備はい─かい?」


 大分時間を掛けて見たけど、ドキドキは止まらない。

 だから、もう、行動に移すことにした。


「はい、お願いします。クロウル」

「じゃあ、目を瞑って」

「はい........」

「お早う、マリフィア、今日も綺麗だよ」


 そう言って、僕の方から近づいていき、そっと優しくお早うのキスをする。

 そのままゆっくりと舌を入れていき、口の中を優しく愛撫していく。

 僕の舌とマリフィアさんの舌が交差しあい絡み合う。

 お互いの唾液を交換しあい、何度も飲み干していく。

 気弱な性格とは思えない荒々しい舌使いをするマリフィアさんも、やはり、ルテカリーナ恋愛講座の受講生のようだった。

 右手で組んだ手をそっと離し、そのままマリフィアさんの胸を優しく添えるように撫でる。


「もっと.....揉んで」


 マリフィアさんのご要望に素直に従う僕はキスをしながら、洋服越しに優しく何度も胸を揉む。


「そろそろ、いいかな」


「......はい」


 マリフィアさんの了承も貰えた。

 

 最後の仕上げに取り掛かろう。

 それっ、必殺の魔力注入。

 

「ん──ん....あぁ~...うぅぅぅっ」


 僕の魔力とマリフィアさんの魔力が交じり合う。

 これは、僕色に魔力に染まり変わる現象で、その現象の間はこんな風になってしまう。


「んんんんん~~うぅ~~っ.......」


 最後のトリを飾ったマリフィアさんは、絶頂を迎えて気を失うと、重力の力に逆らうことなく倒れ込んできた。


 でも、大丈夫。お任せあれ。

 もう何人もこうしてあげたから、最早、この状況は手馴れたもの。

 僕は優しく包み込むようにマリフィアさんをそっと抱きしめる。

 マリフィアさんとのキスも終わり、唇と唇がゆっくりと離れる。

 2人の間を結ばれた細い唾液の糸が、赤い糸のように見えてしまう。

 

「ふー……終わった~」


 僕はため息をついた。

 ようやく朝一番の甘い激務をやり終えた。

 舌を酷使しすぎたから、顎が痛いし舌が痺れている。

 長かった。

 初めは、数人なら直ぐに終わると楽に考えていたら、なんと、部屋の外にもメイドさんの格好をした子がまだまだ順番待ちをしていて....。

 そこから、更に至福の室内授業が続いていったんだ。


 全ての工程が終えた今の段階では、多分50人弱の子と、お早うのキスをしたと思う。


 ここにいる女の子達は、1人1人が違うタイプの美人さんで、そんな子達に何度も駄目出しされ、繰り返しキスをし続けるのは、何度も心臓が張り裂けそうになる苦行といってもいい行為だった。


 50人弱ともなると同じ行為だけでは目立たないと考えたのか、ほかの子とは違うシチュエーションでのキスを求められ、2重の意味で疲れてしまった。


 何故そうしなきゃいけないのかと質問したら、


「私とキスするのがお嫌なんですね」

 

 そう言って泣き出す子が続出。

 泣き出す子には、どうやっても勝てるわけがない。

 だって、僕は女の子の涙に弱いヘタレ男だから。

 泣き出したら、もう、僕の負けなんだ。

 涙を見せられると、どうにも出来ずにただオロオロする始末。

 無様な僕に対して、何度もルテカリーナ様の指導が入り、何とかこの授業を乗り切ったけど。


 泣き出す子達の機嫌を直すには、その子の希望を叶えるキスが必要だと言われ、そんな劇場型のキスを演じて交わすのは、ヘタレな僕にとっては非常に難題で大変だった。


 ただ、この甘酸っぱい授業は、僕に新たなカの方向を指し示してくれた。


 女の子の希望に従い魔力を与えるようにキスをしてみると、その子は突然卑猥な悶え声を上げ、僕にしがみき、絶頂を迎えて気を失った。


 感想を聞くと、立ちあがれない程に気持ち良かったらしい。

 僕の魔力はドラグロア王族が持つ血統魔力だから、普通の人の魔力とは違う反応が起こったらしい。

 どうやら、僕の魔力は異性の魔力と交じり合うと、異性の感覚神経を刺激しながら魔力を染めかえていく効果があるようだ。


 その女の子からは、全ての魔力が染め変わった瞬間が一番感じるとの感想をもらった。


 こうなると、ここからは僕のターン。

 ここに居る半数の子を、天にも昇る絶頂の世界へと、もれなくご招待してあげた。


 ベッドの周りには「ハア、ハア」と息も絶え絶えのメイドさんが半数程寝転んでいた。

 その姿を眺めているだけで、僕の息子が元気に脈打つ。

 室内には、メイドさん達の分泌物からでたと思われる、何ともいいようのない匂いが充満している。


 この勝負は、結果的にみれば、なんとか引き分けまで持ち込めたみたい。

 こんな僕でも、相手側の一般メイド兵に多大な損害を与えることができた。

 これは、誇ってもいいことだろう。

 

 ただ、この手段はとんでもない意思の力を必要とした。


 もう、身体全体が火照った様に熱い。

 頭も何だかふらふらする。

 心臓の鼓動は、頭にまで響いている。

 自制心も途切れてどうにかなってしまいそう。

 そして僕の息子は、もう既に限界ギリギリで爆発寸前だった。

 若干だけど、少しずつ漏れ出している状態でもある。


 男の心理としては、この状況は誰もが夢見たことだろう。

 僕も至福の時間を過ごしたように思えてならないし、実際、こんな夢のような体験をさしてもらえて、ここに集まったメイド衣装を着たお見合い女性達には大変感謝している。

 顔の表情筋は弛みきって、きっとだらしない顔をしていることだろう。

 こんな生活がこれからも続くと思うだけで、心がウキウキしてしまう。

 だけど「騙されてはいけない」と僕の中の善良な心が叫ぶ。

「この状況は僕をこの国に縛り付ける甘い罠だ」と僕の中の善良な心が訴える。


 どうやら僕は、オスカお義母さんと国王陛下が編み出した策略に、物の見事にまって抜け出せなくなったようだ。


「ふー……」


 僕はもう一度ため息をつく。


「クロウル様、何度もため息をつくと幸せが逃げますよ」


 ルテカリーナ様が、他人事のように言った。


「ルテカリーナ様、一度お手洗いに行きたいのですが……」


 爆発寸前の息子。

 これを何とかするのが目的。


「クロウル様、わたくしのことは今後ルーナとお呼び下さい、話はそれからにしましょう」


 ルテカリーナ様は真っ直ぐ僕を見詰めてくる。

 何度もお叱りを受けたから、すっかり苦手意識が染み付いた。

 ヘタレな僕はルテカリーナ様を真っ直ぐ眼を見て話すことが出来ない。


「公爵家のご令嬢に対して、失礼にあたりませんか」

「わたくしが良いと許したのです。さあ、早く」

「ル…ルル…ルーナ様」


 腰が引け話す言葉まで吃ってしまう。


「違いますわ。ルーナです。もう一度」

「ルーナさん……」


 声が尻つぼみに小さくなった。


「もう一度、躾が必要かしら」

「もう、やめて……」


 どうしようもない臆病な僕の素顔が出てしまう。


「ル..ルーナ、お手洗いにいきたいんだ...けど...いいかな?」


 完全に気後れしていたが、どうにか言葉にして言い切った。

 僕にはどうしても、トイレに行く必要があった。

 これは男の大事な尊厳に関わることだ。

 こんな場所で悶える息子を大爆発させる訳にはいかない。

 有り得ない醜態をさらしてしまったら、僕の心は深い傷を負うことになる。

 それは、僕にとっては死活問題。


 ルテカリーナ様は、非情な言葉を僕に投げかけた。


「只今簡易トイレをご用意しますからお待ちください」

 

 そういい終わると、目線で側にいたメイドさんに伝えて。

 あっという間に簡易トイレが目の前に用意された。

 ルテカリーナ様には僕の意思がどうやら届かなかったらしい。


「え──と...まさかっ...こっ..ここでするの?」


 見慣れた冒険者御用達の簡易トイレが目の前にある。

 僕の実家──シルベスタ伯爵家では、こんな公衆の面前ですることは、教えられなかった。

 でも、他の家では、そうじゃないのかな?

 

「ええ、そうですわ。ここですればいいじゃないですか?」


 鬼畜だ。

 この言葉が天使の美貌を持つ女性からでた発言なんだよな。

 高レベルのS属性持ちだとハッキリと解るルテカリーナ様の、

 断罪とも言えるお言葉。

 そんな言葉は、聞きたくなかった。


「上級貴族なら全てが人任せなのですよ。クロウル様はわたくし達の主人。ですから下のお世話もわたくし達がお世話致しますわ。クロウル様も私達が居ないものとしてなさってください」


 出来るわけがない。

 こんな大勢が見守る前で、更にレベルが上がった羞恥プレイなんて無理。

 きっとルテカリーナ様は、女悪魔サキュバスの心を持って生まれたに違いない。

 M属性の人間だったら、きっと涙を流してルテカリーナ様に心酔することだろうが、僕はM属性は持っていないはずだ。


 だから、明確に否定する。

 

「無理です。恥ずかしくて出来ません」


「今まで散々人前でキスをしたじゃないですか。

 うふふ。次は人前でお花摘みを平気で出来るようにチャレンジしませんか」


 ルテカリーナ様は笑いを堪えるように話す。


「無理です。悶え死んでしまいます」


 僕は否定の声を上げる。


「それとも、殿方の不浄をしずめたいと思い悩んでいるようでしたら、

 わたくしの身体をご自由になさっても構いませんけど?

 どうなさいます?.........」

 

 ルテカリーナ様は、ベッドの端に座っている僕の側まで寄ると、自分の胸を僕の頭に押し付けてくる。

 

 そのまま僕の頭を優しく撫でるように、両手で抱きしめてきた。

 柔らかい。もちもちしていい匂いがして。

 やばい、このままじゃ、ルテカリーナ様の甘美な匂いに負けそうだ。

 理性のたがが外れて、僕の息子が暴発するのは、最早、避けられそうにない緊急事態。

 耐えろ。耐えるんだ。息子よ。

 公衆の面前で爆発するのだけは、絶対勘弁してくれ。


「無理ですって。人前でそんな淫らな行為は出来る訳がありません」


 ルテカリーナ様の胸の谷間に包まれながらも、何とか受け答えをする僕。


「うふふ、わかりましたわ。

 クロウル様って、愛おしくて、

 そのまま愛でていたくなるくらいのヘタレっぷりですわね。

 まあ、余り意地悪しすぎると嫌われてしまうのもなんですし。

 わたくしも充分に楽しませてもらいましたから、

 ここで少し休憩を挟みましょうか」


 ルテカリーナ様はさわやかな笑顔を見せて、両腕で包み込んでいた僕の頭を開放してくれた。


「はい、は──い♡。

 私がお花摘みの場所に案内してあげるね」


 この声の主はツインテールの巻き髪をしたメビアナさん。

 赤い髪がふわんふわんと揺れている。

 メビアナさんは、ピョンピョン飛び跳ねながら、ビシッと右手を高く挙げて名乗りをあげた。


「我慢するの大変そうだよね。よ──し、早く案内するね」


 メビアナさんは、そう言うと、とっとと僕を居住区画の寝室から連れ出してくれた。


 僕らは手を繋ぎながら廊下を進む。

 僕らの背丈は余り変わらないと思うけど、ヒールを履いてるメビアナさんのほうが少し高いかな。


「ありがとう、メビアナさん、助かったよ」


「いえいえ、助けたのは、そうだな~。

 そうそう、一番最初に私の映像を楽しんで見てくれたお礼だよ~」


 ニパッと笑顔を振りまくメビアナさん。

 繋いだ手を楽しそうに振っている。


「えっ.....何で知ってるの?」


 あの場には、メビアナさんは居なかったはず。

 どういうこと?


「説明しよう。それはだね、収録されたモデル映像が収められた昇降機は、大きな魔道具だから他にも色々な機能がついてるのは知ってたかい。昇降機には、映像の記録保存機能もついててね。私達はみんな、その映像を視聴出来る専用端末魔道具を持ってるんだよ~。ここに転移した時に、記録保存された映像を見たからね~。クロウル様が私のパンティーをず──っと凝視してたのも、ばっちり確認したからね。つまりはだよ~、クロウル様の痴漢行為は、みんなが知っているんだよ」


 メビアナさんの解説を聴き進むにつれ、僕の額から冷や汗が浮き出てきて、うっすらと滴り落ちていく。


「クロウル様って中々のむっつりさんだね~」

 

 うっ........バレた。

 しかも、あの場にいた全員が知ってたの......。

 死にたい......。


「この言葉をクロウル様本人に直接伝えたくって♡」


「マジですか.........」


 こんな言葉しか出てこない。


「うん、マジマジだよ。

 因みに今日履いてるパンティーは黄色のレースパンティーだよ~♡」


 すると、メビアナさんが予想外の行動をし始めた。

 なんと、メビアナさんは勢いよくスカートを捲し上げると、その実物を僕に見せつけた。

 まさかの不意打ちによる会心のエロス攻撃。


「どうかな~、今日のパンティー。

 今日のために用意したんだよ。

 これ~高かったんだからね」


 それは、まさしく黄色のスケスケレースパンティーだった。

 僕の瞳には、スケスケレースパンティーから薄く見える秘所部がしっかり映っていた。


 僕の息子もこれには、我慢が出来なかったようで.........。


「うっ......」


 .........出ちゃった。

 .........はてちゃった。

 .........やっちゃった。

 .........間に合わなかった。

 

 .........とほほ。

 .........これ、どうしよう。


 僕のズボンの真ん中は、今まで我慢して溜めていた物が爆発した残骸が散らばった。

 ズボンの真ん中から、少しずつ、シミが侵食していく。

 とんでもないくらい我慢してたから、量も多かったらしい。

 これは、モロにわかる。バレバレだ。

 

「............」


 ここはもう、しゃがみ込むしかなかった。

 もう、顔が火照ってしまって、穴があったら入りたい気分だ。


「あれ~、どうしたんですか、クロウル様?いきなり座り込んで」


 メビアナの視線が、僕のズボンの真ん中に注がれる。

 これってとんでもなく恥ずかしい。


「あ──、そういうことか。まあ、いいんじゃないかな。結果的に皆には見られなかったんだし~。大丈夫だから安心して。私洗浄の魔法も使えるんだよ。それに皆には内緒にしとくから大丈夫だよ。これは2人だけのヒ・ミ・ツ。だから、そんなに落ち込まないでもいいんだよ♡」


 メビアナさんはそういうと、簡単な呪文を詠唱してから洗浄魔法を僕に掛けてくれた。

 忽ち、僕のズボンの恥ずかしいシミは消えてしまった。

 僕は生活魔法が使えない。魔法も一切使えない。これが呪いの効果。

 唯一使えるのは、ドラグロア王家に伝わる血統スキルの一部だけ。

 だから、洗浄なんかは、魔道具で代用するしかないんだ。

 なので、メビアナさんにとっては何気ない行為なんだろうけど、その行為は本当にありがたい。


 感謝の気持ちで一杯だ。


「ありがと...メビアナさん」


「もう、別に感謝されるほどのことでもないと思うけどな~。他の女の子達なんか、大量の潮をふいてたんだから~。因みに私もさっきまでクロウル様のせいでビチョビチョだったんだからね~」


「メビアナもそうだったんですか?」


「私は皆から見えないように隠れて、何度も洗浄魔法使ってたんだよ。分かんなかったでしょ~」


「うん、凄い、分かんなかったよ。メビアナさんは全然大丈夫そうに見えたけど」


「そりゃ~、演技だよ。超頑張って演技してたの。あんな空気のところにいたら、みんなそうなるって。それに、クロウル様がしっかり頑張ってたのは、しっかり見てたから知ってるもん。あんなに真剣に真面目に取り組んで、しかも、半分の女の子を返り討ちにまでしたんだから。むしろ、あんな風になるのは当然だと思うよ」


 最後はメビアナさんにしてやられた形なんだけど、メビアナさん自身の手によって助けられたんだし、それはもう、どうでもいいだろう。


「クロウル様は偉い♪偉い♪頑張った♪頑張った♪よ~し♪よ~し♪」


 メビアナさんは、しゃがみこんだままの僕の頭に手を添えて、何度も撫でて褒めてくれた。


 素直に嬉しかった。僕のことを見ててくれて。

 そんな優しく微笑むメビアナさんに、ちょっと意識してしまう僕がいた。

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