2日目 雲
目が覚めたら、宙をふよふよと浮いていた。
俺、死んだ?
……死んだんだったわ。思い出した。トラックに轢かれてそれはもう見事に死んだよ。
で、その後化粧水のボトルになって、神様とコンタクトを取って――そうだ、設定ミスで、俺はまいにち転生を繰り返すことになったんだった。
で、今日は。
空をふよふよ浮いている。かなり高い。スカイダイビングするくらいの高さじゃないか?
昨日と違って今日は視線を動かせるから、地表を眺めることができる。。生前の俺が高所恐怖症じゃなくてよかった。
ちなみに上を向くと青空が広がっている。
視線は自由に動かせるけれど、体は動かせない。ここは昨日といっしょ。
でも違うのは、
うーん。
俺は、何になったんだ?
体に入ってくる感覚だけじゃ、判断しきれない。今ね、本命が雲で対抗が風船。大穴は空気。
自分が何に生まれ変わったのか分からないの、結構しんどいかもな。24時間だけとはいえ。
そんなことを考えていると、眼下の平原に水たまりを見つけた。この高さから見てるから水たまりに見えるだけで、実際は池か湖なんだろうけど。よく見ると周りに川も出ている。
ちょうどいい。天然の鏡を覗き込む。
――空と、雲だけがあった。
今日の俺は、どうやら雲のようだ。
◇ ◇ ◇
雲。雲かあ。
神がどこに住んでいるかといえば、空の上だ。古事記にもそう書いてある。高天原。
2日目にしてそんな天上に近いものを引けたのは幸先がいいのかもしれないけれど、いかんせん動けない。動くべき筋肉もなければ指示を通す神経もない。昨日よりは
俺をこんな目に遭わせた神様をぶん殴るのは、今日も難しそうだ。
しかたない。今日のところは、この絶景を堪能しておいてやろう。
地面はずっと平原が広がっている。さっきの池からつながる川があって、あとは道っぽいものも見える。一面緑なのに、そこだけ地面が茶色っぽくなってるの。舗装はされていない。
にしても、のどかだなあ。はあ。太陽もあったかいし、眠くなってくるよ。化粧水のボトルでも眠れたし、たぶん今日も寝ようと思えば寝れるのだと思う。
バーチャルまぶたが重くなってくるけれど、もうちょっとだけ地面の方を――お?
向こうの方から、人が歩いてくる。
ひとりが背負う棒に日光が反射して、それがちょうど俺に当たった。……金属?
槍だ。4人組のうちのひとりが、槍を持っている。
目を凝らすと、他の3人も――
そんな矢先、何かが俺の体の中をばすっと突き抜けていった。超速い。飛行機?
なんとか反応できたので、地表の4人組はいったん置いといて視線をそちらに向ける。
赤い。翼がある。トゲトゲしてる。
なんならちょっと開いた口から漏れた吐息が燃えてる。
ドラゴンが、いた。
あっ。
ここ、ファンタジー世界だったんだ。
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