第32話 これこそが人類の神秘ですわね

一つの山場を乗り越えた私はそっと息を吐きました。

なんとかなる自信はありませんでしたがなんとかなってしまったので次の山場に備えて対応するしかありませんね。


きっとそろそろ都合よく現れてくると思いますので…



ーガチャっー



「久し振りでは無いかルーティーン!!!」

「お・お久しぶりでございますジョゼフ王太子殿下…」

「ああっ!!息災であったか?」

「はい、お陰様で…」

「そうかそうか!!相変わらず私の次に美しいなっ!!これからは家族だからなっ!!仲良く行こうじゃ無いか!!」

「あ・はい…後、私の名前はルーティーンではなくルーティです…」

「ん?そうだったか?あっはっはっはー!!!」


うわぁ…来ましたわね…来なくていいから早くお帰りにならないかしら?


私が意地でも王太子妃になりたくない原因の一人。

ジョゼフ・フォン・ファンタン王太子殿下ですわ。

私の本来なら最初の婚約者になる筈だった人物です…

こんなお馬鹿っぽい喋り方しかしませんが長子な為、王太子になった出来損ないのお調子者です。

見た目は両陛下との良い所を上手く取り入れた為、アンティークドールの様な儚げで可憐な美女と見まごう美しい美丈夫です。

性別は男性ですがその麗しい見た目の為、男女共にモテますの。

ですが、残念な事に自分以外興味の無い救いようの無いナルシスト。

そして、幼い頃から交流は有りましたがいつも名前を間違われ「私の方が美しい!!」と言われます。

別に顔が負けたようが正直どうでも良いのですが顔が良ければ全て良しと考えるダメ人間なので「顔が美しい私が言う事が全て正しい」とか仰るので私がいつも正論を言っても聞いてくださらず、「そんな恥ずかしがらなくても良いんだよ!!僕の次に君は美しいんだから」と訳わからない屁理屈を言われ、いつも小馬鹿にされていたので殺意しか感じませんでした。

いつか魔法が使える事をおおやけに出来たらコイツを魔法で凍らせてやる…と思って居たほどに嫌いです。


スパニッシュ公爵家の令嬢である私は転生者なので当時は魔力は無いが4歳児ながら聡明と評価されていた為、婚約者候補に挙げられていましたわ…

悍ましい事実ですが…


何故私の婚約者候補に上がった殿方は悉くナルシストなのでしょうか?

男運が無さすぎて泣けてきますわ…

この男と結婚なんてしたら人生がまた詰む…と4歳ながら悟った私は執務室にあった山の様に積み上がった釣書の内の一枚を引き抜き「この方とお会いしたいわ!!」とお父様に伝えてお会いした人がルードヴィッヒ様でした…


嗚呼、運の無い哀れな人生リターンズですわ…


その後、マイスタン公爵とゴルダナ夫人にゴリ押しされたお父様が私とルードヴィッヒ様の婚約が決まりましたわ。

王太子がダメなら第二王子、第三王子と候補を挙げられましたが既に婚約が決まってしまったので無かったことになりましたわ。

でも、当時はまだ王太子殿下よりもマシでしょうと思いましたが会ってお話しして見てましたがそこまで変わらない事実に男運の無さに絶望しました。

でも、まだ公爵令息の方が王族よりも婚約破棄し易そうでしたのでそのまま継続して例の作戦を実行しましたわ。


ある意味あの時の私の判断は正しかった…


しかし、まぁお久し振りにお会いしましたジョゼフ王太子殿下は本当にお変わり無く相変わらず気持ちが悪い事…


王家入りしましたし、王太子殿下も無事私では無い令嬢と婚約しましたので私に回ってくる事は無くなったので油断は出来ませんが安心して居ますわ。


はあ…しかし、本当に鬱陶しい男ですわ…

何故、こんなお馬鹿とロティお兄様が兄弟なのか未だに不思議です。


これこそが人類の神秘ですわね?

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