第14話 貴族とは柵の中でしか生きていけないのよね

所詮顔と体だけの夫人ですのでご理解頂けないようで残念です。

まぁ、正直どうでも良いんですけどね。

私の邪魔をしたら容赦しないだけですわ。


しかし、この話題も飽きてきたのでそろそろお食事を終わらせて部屋に戻って、お仕事がしたいのですが?

まだガタガタとお父様が文句を仰っていらっしゃいますが右から左へ受け流すのもそろそろ限界ですのでちゃっちゃとお食事を食べさせて頂きました。


本日も大変美味しいディナーでしたわ。


流石お母様が王家から連れて来たシェフなだけありますわ。

お母様亡き後のスパニッシュ公爵家に居たのもこのシェフの美味しいお料理があるからこそと言っても過言ではありません。

このシェフの名前はグラフ様と言い、私が発明した異世界の食材を使い多くの美味を生み出した下さりました。

そして、グラフ様はレシピ考案もお手伝いして頂き、この間やっと完成した生キャラメルも一緒に作ってくださり感謝しかありませんわ。


因みにグラフ様は私が嫁入り先に一緒に着いて来てくださるようで今後も美味しいお料理と新商品開発のお手伝いをしてくださいます。

だから、安心して公爵家から出ていく事が出来ますわ。


ディナーが終わったので席に立つと「まだ話は終わってないぞ!!!!」とお父様が大きな声で呼び止めましたが、「今日はもう疲れたので休ませて頂きますわ。皆様おやすみなさいませ」と言ってもその場を逃げました。


追いかけられるのも嫌なので扉を閉めた瞬間、転移魔法を使い、ルーチェ商会の私の部屋にやってきました。

部屋には私以外誰も居らず、静かでやっと落ち着いてお仕事の続きが出来ると思い大きなため息をつきました。

やっと騒がしいあの屋敷から解放されて平穏になる…とは思わないし、恐らく今回の婚約破棄に乗じて王家が第二王子か第三王子の婚約者として推して来るだろう事が予測できましたわ。

それは流石に回避出来ませんので、求められた場合は受け入れましょう。

お父様はグチグチ文句を言っていましたが、私が出て行って公爵家が没落するよりも王家に嫁入りした方が公爵家の箔が上がるのでそちらの方面で話を進めて行くと思いますでしょうし。

陛下は私がルーチェ商会の会頭である事を知っていてそれについて認めてくれている。

その為、どの王子と婚約してもルーチェ商会での商売は続けさせてくれるそうですわ。

それは私にとってとても有難い提案なので受け入れます。


でも、本音はルーチェ商会と共に他国に旅立ちたかったんですけどね。

世界は広く私の知らないものに溢れていると思いますの。

新しい発見をしつつ、いろんな商品を開発しつつ、誰よりも自由に生きたい…

そんな人生を歩みたかった…


自由になる為にミナーヴァ様が与えてくださった魔法もスキルを磨いたけれど結局私は貴族とは柵の中でしか生きていけないのよね…

抜け出す事の出来ない籠の中の鳥と一緒…

商会の中では唯一私の発言が自由に出来る場所…

此処は私にとってとても大切な…

貴族の柵を忘れさせてくれる憩いの場所。

この商会を守る為にも受け入れなければならないのですわ。


はぁ…いっそ婚約破棄と共に国外追放とかにならないかしら?

私の書斎にある仕事を片付けながらふと窓を見つめながら思ってしまっていました。


しかし、この時はこれから起こる恐ろしい現実を知る由も無かった。

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