異世界イージーモード 〜今すぐ最強になれますが、何か?〜
霜月琥珀
1話:猫の手も借りたい
ありのまま、起こったことを話そうと思う。
俺、飯島遥人は異世界に召喚された。クラスメイトと一緒に。いや、マジで! 本当だからっ! 嘘をつける状況じゃないんだよっ!
と、まぁ、それからはまさにテンプレ。実際に偉いが、俺からしてみれば偉そうにしているだけの国王が召喚理由を話し始め、ステータス確認の流れがやってくる。
そして、言うまでもなく、清々しいまでに最弱っぷりを見せた俺は、そのまま王宮から追い出された。
どうやら、主人公に選ばれたのは俺らしい。
『貴様のような雑魚に、構っていられる時間はない! 早々に出て行ってもらう!』
この国王からの侮蔑発言。実に苛立たしかったが、クラスメイトもそれに同調しやがったので、仕方なく追い出されてやったわけだ。
で、無一文の俺は、異世界モノでお馴染みの冒険者ギルドにお邪魔して、冒険者になり――今現在、命の窮地に立たされている。
どうしてこうなった、くそぉ!
「それもこれも、俺を追放したあいつらのせいじゃねぇかーーーーーッッッ!」
俺は口の中に血の味を滲ませながら、悲鳴にもとれる絶叫を上げた。
これはギルドの受付に聞いた話だが、異世界人は見つかったら最後、魔物に狙われ続ける運命らしい。一種の呪いとのことだが、解呪方法は不明。
つまり、俺の命はここまでだということで――
「って、諦められるかぁッ! 俺は日本に置いてきた妹のため、帰らなければならない! だから、ここで死ぬわけには……ッ!」
何か打開策はないかと、森の中をひた走る。後ろを振り返れば、へまして見つかってしまったゴブリンと、騒ぎに乗じてやってきた魔物が数十匹、追ってきている。やべぇ。
俺にあるのは使いどころがかなり限られているだろうスキル――【猫の手も借りたい】ただ一つ。効果は周辺にいるネコ目・ネコ科の生物をオトモにするというものらしい。
某狩りゲーの猫ちゃんかな?
それに加えて、俺のステータスはオールF。全てが最低ランクだから、追い出されるのは理解できなくもないが、人の心はないのか! いい加減にしろっ!
これで死んだら呪ってやるからな、国王もクラスメイトも……みんな!
俺は【猫の手も借りたい】を発動した。使い方はイマイチ要領を得ないが、何となく感覚で使っているのが分かる。
ここから俺にできるのは、逃げることだけ。体力はすでに限界だが、死ぬよりはマシだ。
その心持ちで、ただひたすらに俺は走るのだった。
あ、ありのまま、いま起こったことを話すぜ……。
数匹のトラ模様のネコが現れたと思ったら、俺を追いかけていた魔物を魔法で殲滅した。いや、マジで……。本当だから……。どうリアクションとればいいのか、分からない……。
そして、今現在――尻もちをついている俺の周りにネコが控えている。囲むようにして。
もしかして、俺の命令待ちだったりする?
えと、じゃあ、
「解散!」
俺は号令とともに、パチンと手を叩く。すると、あろうことかネコたちは俺の影に入り込むのだった。……え? どうなってんの?
俺は自分の影を触ってみるが反応はなく、土と草の感触があるだけ。さっきの歪みは……?
と、不思議に思ったのもつかの間、視界に文字が出現した。
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マジカルキャット×4のオトモ化に成功しました。以降、自由に招集・命令が可能です。
それに伴い、【猫の手も借りたい】のスキルレベルが2に上昇し、オトモ化している個体の固有魔法が使用可能になりました。
詳細を表示しますか?
YES/NO
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ふむ。かなり有用性が上がったんじゃない? これは言ってなかったが、【猫の手も借りたい】には副効果として、ネコ目・ネコ科の生物から敵対されないというものがある。
だが、今回のスキルレベル上昇によって、あのトラ模様のネコ――マジカルキャットが使っていた魔法が使えるようになったから、戦闘能力皆無だった俺にも武器ができた。
これなら、この異世界でも生きていけるかもしれない。後、単純に魔法が使えるようになったのは嬉しい。
となると、ここは『YES』一択だ。
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【猫の手も借りたい:Lv.2】
オトモ:マジカルキャット×4
固有魔法:
【四大魔法:Lv.1】……火・水・風・土の魔法が使用可能になる。
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おおっ! めっちゃ強いじゃん! これで俺は四属性の魔法が使えるってことだろ?
基準として正確ではないが、ステータスが一般人の十倍だとされる異世界人でも、魔法は一つの属性にしか適性を持っていないのがほとんどらしい。実際、クラスメイト達もそうだった。
そう考えると、魔物の固有魔法が扱えるようになる【猫の手も借りたい】はかなり強いことが証明されたな。ざまぁみろ、俺を追い出した奴ら。
と、まぁ、今はそれよりも、
「……魔物の残骸どうしよう」
今や俺のオトモとなったマジカルキャットが殲滅した死体の山を見て、呟いた。
せっかくだから、冒険者ギルドで買い取ってもらいたいんだが……どうしたらいいんだろう?
そう、頭を悩ませていると、
「ふぇ~、お助けに来ましたよぉ~」
猫耳の少女が豊かな胸を揺らしながら、こちらに駆けつけてきたのだった。おせぇ……。
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