異世界で必要な物は鍬ですが。何か?

影神

水分補給は大切に



私は死んだ。




死因はボケて電車に轢かれた事だ。






遺族には、本当に申し訳なく思っている。




私のせいで多額の賠償金が遺族に課せられた。




別に自殺したかった訳じゃ無かった。




ただ、ボケてしまって、線路に入ってしまった。






私が気が付いた頃にはもう、死んで居た。






定年し、農業に手を出したが、




なかなか上手くいかず、




慣れない作業で腰を悪くし、




寝込む生活が続いた。






貯金と年金があった為、




何とかやりくりは出来たが、




人間何もしないとボケてしまうようだ。






徘徊する様になると、何度も保護され、




その度に家へと帰された。






私は何をしているのだろう。




私は何がしたいのだろう。




私は何処へ行きたいのだろうか。






何かを探し求める様に私の足は進む。






そうして、幾度かの徘徊の末、




線路に入ってしまい、そのまま跳ねられた。






あぁ、どうしようもない終わり方だ。






「次の方~」




私は死後この列に並んでいる。




何で並んでいるかは分からないが、




何となく、並ばなきゃいけない気がして、




長蛇の列に並ぶ。






若い子も居て、何だか不思議な感じだ。




勿論、死んだ事は理解している。




それに対しての後悔もしている。






きちんとあの時しっかりと農業をしていれば、




もしかしたらボケて死んでしまうことも、




無かったろうに、、






「~次の方、、」




順番が回ってきた。




受け付けには女性が座っていた。




女性「こちらのタブレットに入力をお願いします。」






液晶型の大きなタブレットに名前を入れると、




履歴書の様に私の人生の一覧が表示された。




女性「こちらで間違いは無いでしょうか?




誤字や不備が無ければ次へを押して下さい。」




下へスクロールすると次へがある。






女性「では、来世での貴方の希望の




装備等があったら入力をお願いします。」




装備。何だろうか。




私は農業がしたかった。




農業、、、




鍬ってあるのかな、、




空欄の余白をクリックすると、




"鍬"と入力する。






女性「鍬ですね。




農業の経験はおありですか?






んー、、




未経験だと、なかなか作業が難しいと思いますが、




貴方は前世で多額の借金をお持ちの様なので、




それらが返せる様におまけしておきますね。」




流れる様に、淡々と女性は仕事をこなす。






女性「では、あちらのゲートの前まで進んで下さい。」




私は言われるがままに白い窓枠の様な所に行く。




中は水の様にうねり、先は見えない。




"ピコン"




音と共に上部の場所が光ると、




女性「来世での生活をお楽しみ下さいませ。」




そう言われると、空間へと引き寄せられた。






目映い視界が襲うと、目の前には、




新しい世界が広がった。




「ここは、、」




手には鍬と袋が。






袋には何かの種が入っていて、




説明書が同封されていた。




説明書には鍬の性能と、




この世界について記載がされていた。






"貴方のこの世界での役割は、野菜や果物を育てて、




沢山の人々に恵み、与え、それらで借金を返す事です。






この世界にはお金と呼ばれる価値観はありません。




ただ、感謝される事により発生する『想量』により、




こちらの方で金銭化致します。






欲しい物や必要な物は全て物々交換で成立します。




結婚をし、愛する者と子を成すのも良いでしょう。






地道に楽しく、ゆっくりと新たな生活をお楽しみ下さい。"






あぁ、頑張ろうか、、




日差しは眩しく、農業するのにはとってもいい天気だ。






「さあ、始めようか。」








































































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異世界で必要な物は鍬ですが。何か? 影神 @kagegami

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