第17話
くかみきみつぐ。
九鬼と書いてくかみ、と読む。もちろん、織田に仕えた九鬼とは何の縁も所縁も無いそも読みが違う。
九鬼の家名は字義通り九の鬼を従える護法を、その法力を名乗るもの。
その歴史は……実は本人たちもあまり判らない、というのは、旧い、ふるすぎるからで、それこそ有史、記紀編纂より前から活動していた事は間違いない、らしい、この辺りは家内での口伝による。
人が死を、その司りを意識したのはいつからか。既に5万年前、ネアンデルタール人は故人を葬送していたらしいが、単なる儀式では無く行政区画としての、生者と死者、黄泉国及び根の国、霊界並びにその現界との各種係争、事案等を職掌とする、官僚機構、職能集団。
巷間での拝み屋、祈禱師、そうした、ありていに表現してとうてい健全とは思われない特殊技能職、を、公職の立場で担務する者共。
しかも、刑事、として、である。
現在では宮内庁、と呼称される組織の始祖であった。
公嗣は当然、男性名である、で、彼女。
あ、察し……。
現代のベルばら、人権侵害事案。
九鬼は男が継がねばならぬ、そして男子に恵まれなかった。
加えて、九鬼の、血、は。
養子などでどうにかなるものでもなかった、
そういうまあ、因習である。
因みに、九鬼、蜂須賀、前田、鍋島、そして、徳川、つまり松平姓を名乗れる、三天で云う、地祇系に該当する。
そして、九鬼。
鬼。
名日卑弥呼 事鬼道能惑衆。
有名な魏志倭人伝、女王卑弥呼についての一節にある。日本での鬼について語った最古の文献、資料であろう。
鬼道。
役小角は、飛鳥時代の呪術者であり修験道の開祖とされている。鬼神、を使役できるほどの法力を持っていたと云われ、左右に前鬼、と後鬼、を従えた図像が有名である。
臨兵闘者皆陣列在前、超有名厨二病患者必修、九、字の護法、呪術。
九鬼、の家名に込められた情念が推察される。
二本立て国家二本での、表向き、人界に対しての霊界、そちらを管轄する、古来からの警察機構に所属する、現代現場での最高位人物。
それが、九鬼公嗣、という名に課せられた使命であった。
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