願い

今夜は弦月、下弦の月がきれいに観られそう。ペルセウス流星群も見頃と言うことで、夜空を仰ぐ人が多いことでしょう。

スターダストは、蠍座とカシオペア座の中間が放射点だとか。

どうか下弦の明かりに流れ星が消されませんように……ささやかな願い事があるのです。


ほんとにささやかな、わたしの願いが。


 ・・・・


「被害者の、ノートパソコンのファイルから出てきました。登録は昨年の夏でした……」


「……なんだか優しい日記ですね。で、これだけですか?」


「そうなんですよ、ファイルの他の中身は全て、消えてしまっているようです」


「そう……ですか」


「何を願っていたんでしょうなぁ」


「……何を願ったのかは解りませんが、残しておきたい言葉や想いというものは、誰もが胸にしまってあるのでしょうね。たとえそれが、はたから見たら些細なことに思われようとも。しかし……」


「しかし?」


「そんな小さな願いが合わさって、世界は回っているのかも知れません」


「……発生から一週間。やりきれないですね」




「主任、報告しますっ! 下流でたった今、被害者のご遺体が発見されましたっ」



「……でて……くれましたか…………」

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