手かがみ

介護福祉士の友人曰く、死期が近い利用者がとる行動に、「手かがみ」というものがあると言う。手のひらを、まるで鏡を見るようにじっと見つめる動作で、こちらから声を掛ける迄止めようとしない。ただ無言で、食い入るように、じっと見詰めているのだと。

手のひらに、これまでの人生が走馬灯のように映っているのではないか……人生が今から過去に向かって映し出され、自分が生まれる瞬間まで遡ったときに、最期が訪れると。


赤ちゃんは、自分の手や足を見て行動能力を確認するのだという。おそらく人は、手を見ることで、自分の存在を認識しているのではないか。

……自分の存在を認識する……

もっと言えば、これまでの人生の足跡そくせきを感じていると言えるかもしれない。


誰かが言っていた、

「人は、最初に手を見ることで人生を歩み始め、最後に手を見ることで人生を振り返る」と。


時はいつも

風のように飛び去って行く


やり残したことは沢山ある


それでも時は過ぎる


人生は瞬きの内に流れ行く


伝えたい事は未だあるのに



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る