遺留品

ふと どこからか

微かに

鐘の音が聞こえた……


・・・


「それで、どうなんだ」


「はい、救急搬送された病院で死亡が確認されました」


「4階の屋上からでは仕方がないか。遺留品は」


「はい、スーツの胸ボケットに免許証と遺書が。このビルの3階に2年前から賃貸しています。3年前に妻と娘を交通事故で亡くされ、その後此処に移り住んだようです」


「……そうか」


「遺書には亡くなった二人への想いが綴られています。この路地を行った表通りが、交通事故の現場になります」


「解った、事件性は無しだな。ではそれで報告書をあげてくれ」


「承知しました。あっ主任、それと遺留品なのか、すぐ脇にカンパニュラの花が一輪落ちていたそうです。これも報告しておきますか」


「ん、すまん、どんな花だ」


「はい少々お待ちを、検索してみます。……出ました、これですが」


「鐘に似た可愛らしい花だな。花言葉は、感謝、誠実な愛、思いを告げる……か。一応上げといてくれ」

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