send a yell ※

海岸に車を停め、ぼんやり海を眺めていた。

今にも降って来そうな曇り空で、波の色も濁っている。

こんな日は人出も少ない。


シートを少し倒し、缶コーヒーを飲みながらFMラジオを聴いていると、防波堤の遊歩道を歩く若いカップルが見えた。

付き合い始めて日が浅いのか、並んで歩いてはいるが、その距離は少し遠慮がちだ。

風に乱れるセミロングの髪を片手で押さえながら、彼の話に大きく笑顔でうなずく横顔が初々しい。


晴れていれば、夕日が綺麗なのだが……


そんなことを考えているうちに、車の前を通り過ぎた。


黒地に白い水玉模様のワンピース。

レースをあしらった、ノースリーブの肩から伸びるしなやかな腕。



『手を繋いであげなよ』


ラジオから流れる真夏の讃歌が、何処か寂しげにエールを贈った。



・・・


ポール・デズモンド

「サンバ・カンティーナ」

https://youtu.be/6vvgz_x5YUs


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