011 ドロドロとした部分をただ垂れ流します。

 今になって傑作と名高いヴァイオレット・エヴァーガーデンを視聴しました。語彙力が足りないので的確に表現できませんが、とにかく素敵な物語だと感じました。間違いなく私のストライクゾーンの真ん中です!

 今までこの作品に触れなかった理由である、鉄砲を持って最強の兵士が敵をバッタバッタとなぎ倒すのを想像していましたので、良い方向に裏切ってもらえました。どこかで部分的に情報を得ていたのでしょうか、それほど大きく間違ってもいない勘違いでしたね。

 まだ劇場版だけ観れていませんがそれほど先にはならないでしょう。やがて訪れるそのいつかの日を楽しみにしています。


 あんなに静かで穏やかな感動をくれる作品が今日も新たに産み出されているとは。なんだか嬉しくなりました。こんな体験ができるから多少辛くてもがんばれますし、できるだけ長生きしたいですし、本好きやアニメ好きを止められないのです。この地味な人生も捨てたものではないと素直に思えます。


 とにもかくにもその作品に魅了されました。オープニングをよく見るとどうやら小説が原作とか。終始真面目に話が展開するのに返って新鮮味を感じました。真面目な作品だって存在してもいいのだよ、と勇気をもらえた気がしました。およそ十中八九、新作を面白おかしい作品にしようと再度舵を切ろうとしていた矢先にです。それでまた混沌に叩き落とされてですね。また唸っているのです。


 さらなる影響も。あれだけの名作を前にすると拙作がなんとも陳腐に映りましてね。無理もありません、片や素人、片やベストセラー小説ですから。それで今は少し消沈しており、机に向かう気力が湧きません。エッセイはこうして書けますから、ここで愚痴を吐き出して特大の管を巻いてやろうと参上しました。

 読者さんにはいい迷惑でしょうがどうぞお付き合いのほど。




 Twitterで方針がぶれているのをつぶやきましたら、自身の過去作を振り返ってみてはどうかとのご意見をいただきました。それで素直にラスト4話ほどを読み返したのですが、一年前と今とで決定的に変わってしまった、いま足りていない点を見つけました。

 それは勢いと信念です。とにかくこの作品を残さねば死ねないという志がその当時にはありました。


 処女作とは方向性が違い、全く一線を画す作品ですから、それらの部分で勝てないのは仕方のないことかもしれません。それでも私は、そんな処女作に勝つと宣言しました。ブクマがいつの間にか349にもなったあの作品をです。部分部分では負けても総合的に上回る、その目標は捨てていません。




 もちろん収穫だってあります。大きな収穫が。

 ヴァイオレット・エヴァーガーデンを観て感じたのは強烈なオリジナリティでした。翻って、どこかで見たような物語を敢えて自分で焼き直すべきではないな、と。自分の方がうまく描けるという思い込みで作品を綴るのではなく、自分だけの発想を、独自の世界のものをこそ発表すべき。

 その点において、新しいもので構成された真新しい路線でなく、ある意味古いもののみで斬新な物語を紡いだ手腕と発想に脱帽しました。

 ですがこの作品は同時に可能性も指し示してくれました。これもまた目新しい、延々地底に潜り続けるメイドインアビスのように、まだまだ探掘さえすれば見つかるのです。自分だけの新しい世界がまだどこかに眠っています。


 ですからオリジナリティのないものに時間を費やして書くのは、例え近道なのだとしても無駄だと感じました。それがどんなに人気が出るのだとしてもお断りです。他人のフンドシで相撲を取るような行為をすべきではないと。

 そうなると、ちょっとやそっとの物語は今後紡げませんね。幸い今作はその縛りをすり抜けました。方々調べて回りましたが、類似する物語は見つけられませんでした。今後読む方には多少驚いてもらえるものと期待しています。それゆえ処女作のように見向きもされない可能性もまた孕んでいるんですけどね。




 今回の振り返りによって当時の私の視点を得ました。彼奴が今の私を見たら何と言うか想像しました。

 鼻でふふんと笑っています。勝った、と。

 なんと鼻持ちならない奴でしょう。しかし現状で負けているのは純然たる事実。

 彼奴はまるで殉教者のようでした。作品を無事に世に放ったことで今は憑き物が取れ灰汁も抜け、凄味を失ったおれごん未来の残滓がここに居ます。そんな私で本当に勝てるのでしょうか。




 前作は伝えたいが動機でした。それも伝え残さねば死ねないほどの思い込みを有して。今作の目的は感謝と謝罪、以前と比べると明らかに見劣りがします。

 面白さは似たようなもの、それで文章力が大差ないでは。未だに手元を見ながらタイプしていますし、10万字が基本と言われている中で、まるで完成していないのにもう20万字近いですし。


 ここで違った見方をしてみましょう。誤って右手になってしまった寄生生物と宿主が主役の寄生獣で、右手が宿主に喚起していました。強さや大きさで勝てないのなら、形や臭いや色で比べてみろ、と。

 視点を変えて比べてみたなら何かが見えるやもしれません。あの時はできなくて今ならできること。あの時は持っていなくて今なら持っていること。そんなものがあるでしょうか。形や臭いや色……。

 まず思い浮かんだのは主人公の性別を変えてしまうこと。ひとつのアイデアですが、それひとつで本物の突破口になるとはとても思えなくて。

 そうしていつまでもヤキモキしています。


 結局は自己満足なんですよね。彼女達をキャラクターとして見るのなら、細かいところに目をつぶるのは可能です。一方で人として捉えるなら、内面をきちんと描いてあげたい。ここの差なのだと思い至りました。

 それでどちらを選ぶかは。もうきっと答えは出ているんですが、それを口にする勇気がありません。決めてしまえばもう、今度こそ戻れないからです。処女作で50万字書いてから主役を2人に変更して膨大な作業量が生じた、あの時のように重大な決定だからです。


 処女作の時は足せば面白くなる予感はありました。それで足したのですが、今回も面白さを追求するのなら。

 あとは決断するだけです。

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