第65話 バケツの水とお弁当

「あ・・あの」震える声で手毬は取り囲む 意地悪な同級生に話しかけようとする


何故、こんな事をするのですか‥ 手毬はそう聞きたかった


私が使用人だから・・そうですよね 

手毬の瞳から涙の雫がポタポタと落ちてゆく


「ほら、バケツよ」水の入ったバケツが手毬に投げつけられた。

一瞬、目を瞑り、悲鳴を上げようとした瞬間だった。


バケツはモップの棒の方、柄の部分で

バケツの輪の手で握る部分を救い取られ、ひょいと上に上がる 

次の瞬間、横に投げ飛ばされた。


バシャ―ン「きゃあああ」「いやああ」

ナギナタを扱う仕草で 彼女らに投げつけたのは・・‥有栖


「学校で学ぶ乙女の嗜みとして、やはり裏千家か表千家のお茶の作法」


「次にはお花の生け花・・

それに勉学だけでなく、いざという時にナギナタとか剣道などの武道よね」


「他にも幾つかね・・ふっ」

何か嫌な思い出でもあるのか眉や口元を歪める有栖


「・・いけないお嬢さん達ね 弱い者いじめしか出来ないなんて

悔しかったら、ナギナタか剣道で受けて立つわよ」有栖


仁王立ち、鼻息も荒く 武器代わりのモップの柄を床にトン!

泣きながら今度は意地悪な少女達が逃げ出した。


「大丈夫?」有栖「ああ、有栖さま」泣きながら抱き着く手毬


「可哀そうに いい子ね」ナデナデと頭を撫でる有栖


「・・丸眼鏡を外すと 本当に手毬さん 有栖さんに似ているわ」

騒ぎに驚き、やって来た同級生の一人


「手毬さん・・大事な事なの 聞いていいかしら?」「はい?」

「今日のお弁当のオカズだけど・・芋の煮っころがしは?」


「は、はい あります」「タコさんウインナーは?」「はいご用意してます」

「デザートだけど・・」「チーズスフレに苺の御団子 それから抹茶ロールケーキ」


「まあ、素晴らしいエクセレントよ 手毬さん」


「あの・・それで私をもしや捜しに・・」手毬

「一緒に食べたかったし、駄目かしら?」有栖

「日本茶だけでなく、紅茶も入れましょうね」有栖「は、はい」手毬


食欲魔人の有栖は今日も健在のようであった。




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