マスキングテイプ5

エリー.ファー

マスキングテイプ5

 戦ったりはしないが、一応ヒーロー。

 マスキングテイプ5。

 赤と青と黄色とピンクと緑がいる。

 マスキングテイプ5。

 シェアハウスの家賃が上がってそれなりに苦しい生活。なのに、コンビニのスイーツをついつい買っちゃう。

 マスキングテイプ5。

 昨日作ったおみおつけを食べたら腐っていてお腹を壊した赤。それを見て笑っていた他のメンバーも、何かしらがあたってお腹を壊す。

 マスキングテイプ5。

 誰でもいいからお米を恵んであげてください。

 マスキングテイプ5。

 悪の組織の親玉から暑中見舞いが届き、それがまた達筆なものだから余計にビビる。

 マスキングテイプ5。

 夏だし、海に行きたいと話していたが車もバイクもないし、電車賃などあるわけもない。みんなで考えて、海っぽいところに行こうと近くの市民プールで我慢する。

 マスキングテイプ5。

 公園で時間を潰していると小学生がいたので一緒に遊んであげる。悪の組織の幹部もやってきて、みんなでかくれんぼをした。

 マスキングテイプ5。

 駄菓子屋のおばあちゃんのやさしさが身に染みる。

 マスキングテイプ5。

 特に意味もなく漢検の準二級に挑戦する青。大方の予想通り普通に落ちる。そして、それを知られたくなくて落ちたことを隠し、最初から受けていなかったことにする。

 マスキングテイプ5。

 黄色の妹の結婚式に呼ばれてみんなで行くことになる。だが、マナーが分からずに迷惑をかけることだけは避けたいと必死に本屋で結婚式のマナー本を立ち読み。わりとうまくいく。

 マスキングテイプ5。

 ピンクがバイトをしている飲み屋の店長が、ピンクに関係をしつこく迫っていることを知り合いの怪人から教えてもらうメンバー。ピンクは何度も断ったそうだが、とうとう暴力まで振るわれたらしい。久しぶりに同じ理由でブチ切れたメンバー。ピンクなしで、飲み屋の店長と話し合いを設け、ピンクにバイトをやめさせて問題は解決する。

 マスキングテイプ5。

 緑の誕生日なので、緑色のケーキを作るメンバー。仕事から帰ってきた緑にサプライズでケーキを渡すと、緑から一言。このケーキ、苔生えてるぞ。

 マスキングテイプ5。

 近くの映画館が閉館することを聞き、訪れたメンバー。悪の組織の親玉も来ていてロビーで談笑。その日の一本目から見て、最後の一本まで映画館にい続ける。これで終わりかと思いきや、またフィルムが回りだし、今日一日の映画館に訪れた人たちの笑顔が映し出される。そこにはマスキングテイプ5も、そして悪の組織の親玉もいる。最後に、今までこの映画館を愛して下さって有難う御座いました、と文字が出てフィルムが止まる。電気がついて明るくなったのに、すすり泣く声が聞こえるだけで誰も立ち上がらない。

 マスキングテイプ5。

 ピンクが、あの飲み屋の店長に夜道で襲われた。

 マスキングテイプ5。

 ピンクの顔には大きな傷がついた。

 マスキングテイプ5。

 店長は捕まった。けれど、ピンクの顔の傷は治らない。

 マスキングテイプ5。

 赤がヒーローの能力を使ってあいつをぶっ殺してやると叫んだ。青と緑が止め、黄色は泣くばかりだった。

 マスキングテイプ5。

 俺たちは血が繋がっていなくても家族じゃねぇかよっ。ある日、無理やりヒーローに選ばれて、でもそのせいで最初はすげぇ差別されて。何度も何度も社会とか世間に倒される度に立ち上がって。これでようやく自分の人生に自信が持てるって所まできて。やっとマスキングテイプ5を名乗れるようになったんだっ、そうだろうっ。俺はリーダーとして、ピンクの顔に傷をつけた野郎を許せねぇっ。うちのピンクはまだ傷ついてるんだぞっ。これからも傷ついたままなんだぞっ。おかしいだろ、こんなの。なぁ、おかしいに決まってるじゃねぇかよっ。

 マスキングテイプ5。

 それをされて、ピンクが喜ぶかを分からないお前じゃないだろうっ。

 マスキングテイプ5。

 私だって我慢しているんだっ。なにより、ピンクが一番我慢していることを何故分からないっ。

 マスキングテイプ5。

 あっ、ピンク。ごめん、あたしたち、まだピンクが帰ってないかと思ってて。ごめんね、ピンク。

 マスキングテイプ5。

 あの、私ね。あの映画館を復活させたいの。だめかな。

 マスキングテイプ5。

 吾輩が、できるかぎりの資金面の協力はしてやろう。なあに、ヒーローと悪を敵対させようとする人間の差別的文化を打ち砕いてくれた貴様らには恩がある。気にするな。

 マスキングテイプ5。

 映画館を買い取る。

 マスキングテイプ5。

 ピンクが記念すべき最初の映画をどれにするか悩んでいる。

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