桜降る日に

鈴木結華

桜降る日に

「卒業してからも会えるかな」


そんなことを君は言う。今はまだ高校2年生。しかも進級したての春。卒業までだいぶあるというのに。


小中高と同じ学校に進学した君は私の唯一の幼馴染だ。


「そりゃあ会えるでしょう、家も近いんだし」


そっけなく返すけれど、高校卒業後なんて、まっさらな何も分からない未来のページに既に自分がいると思うと、なんだか恥ずかしい気もする。

でも、君の中に確かに私がいる、そんな些細なことがたまらなく嬉しい。




確かに嬉しかったんだ。あの時は。


今はあの日と同じ春。春だけれど、今年は暖かいせいで桜はもう完全に散ってしまった。

あの日と同じ場所、青く光る葉桜の元で君を見かけた。

知らない人と楽し気に歩く君は、私の視線に、私の存在にすら気づかない。


いつからだろう、君と話さなくなったのは、一緒に帰らなくなったのは。


なんとなく気づいてはいた。今こんな思いをしているのは、臆病になって君に聞けなかった私のせいだ。



当然の未来と私が夢見ていたのは、陽の光に照らされて満開の桜の木々が白く輝く、そんな日だった。

その白さは、まだ何も知らない私達の未来のページみたいだった。

そのページに、私がずっといられれば良かったのに。

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桜降る日に 鈴木結華 @nanamika

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