マト良心
BIG PLUM
マト良心(原)
部屋中にアラームが鳴り、目の前にある複数モニターに映像が映し出されていた。私は手に持っていたクルーザーのパンフレットを置き、操作盤に手を掛けた。そして慣れた手つきで複数あるモニターのうちのひとつを選び、ボタンを2度押した。
「同じ事の繰り返しだが、結構応えるものがあるもんだな…他に選択肢があるなら私だって……」
そう言い掛けたが、給料の事を考えれば割のいい方だと感じ、またクルーザーのパンフレットに目を落とした。
「いつか自分のクルーザーで、世界中を回って見たいものだな。まぁ今の世界は御免だが。」
彼がそんな事を考えている間にも、モニターは何かの映像を流し続けていた。その映像は、人間がただ何かしらの作業をしている様子だった。ある者は家具を作り、ある者は農作業をし、ある者は兵器を作っていた。それぞれ部屋が異なっていて、個人で作業をしていた。さっき選択したモニターの部屋は真っ暗のままだったが、人が入ってきたのかモニターが明るくなり、他のモニターと遜色ない映像が流れ始めた。
しばらく経ち、モニターから流れていた映像に違和感が現れ始めた。それはある者の作業が全く進まなくなり、他の者との差ができはじめていた。コンピュータはそれを察知しアラームを鳴らした。まるで儀式のように1連の事が過ぎ、また画面が暗くなり部屋に静寂が訪れた。他国より早く国を復興させるには、安全なこの地下シェルターで効率の良い仕事をする必要があった。そして、使えない労力は切り捨て、無駄を省かなければならなかった。幸いにもクローン技術が発達していた為、替えはいくらでもきいた。前ならばクローン人間と聞けば、やれ人道的になんたらだの、倫理が何だのとうるさかった。しかし核戦争で大部分の人間が死んだ今、この地下シェルターで異議を唱えるものは居なかった。最初は中々受け入れることのできない仕事だったが、慣れれば何も感じ無くなっていった。
気付いたら私は、少し寝ていたようだった。モニターは何も異常はなかった。何か変わったことがあるとするならば、モニターの中の者の作業が全体的に少しゆっくりに感じた。普段なら廃棄しているスピードだったが、全体が同じスピードなら問題は無いだろうと思い、もう一度夢の中に戻ろうとしていた。その時ブザーが鳴った。モニターに目をやるが異変もなく、よく聞いてみるとブザーは部屋の外から流れていいるようだった。こんなことは始めてだった。
「故障したのか?電話で聞いて見るか。」
ダイヤルにてを掛けたところでいきなり辺りが真っ暗になった。
実際には部屋は照明がついたままで明るかったが、やがて明かりは消え外から扉が開いた。
「こいつ優秀だったのになー、次のヤツも頑張ってかれるといいな。」
マト良心 BIG PLUM @Strange_and_mysterious
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