性別とは何ですか?
栫夏姫
第1話
出会いは小学生の時だった。
彼はクラスで一番可愛かった。
初めて合った時は女の子だと思っていた。
華奢な体にツインテールにまとめられた長い髪、とても男の子とは思えない服装と見た目に最初は驚いたのを思い出す。
彼はクラスでは孤立していた……
というより、いじめられていたのだ。
男の子なのに女の子の格好をしているということで、男子生徒からは仲間に入れてもらえず暴力を受け、女子生徒からは自分より可愛いのが気に入らないからか、持ち物を隠されたりなど陰湿ないじめを受けていた。
しかし、それを受けていながらも彼は明るかった。
いじめなどに負けずにどんな誰よりも明るく振る舞っていた。
彼は自分のことで精一杯なはずなのに、地味な私に手を差し伸べて優しくしてくれた。
そんな彼は私の憧れだった。
そいつはクラスで一番地味だった。
俺はクラスで一番可愛い自覚は合った、そのせいで男からも女からも妬みからくるいじめを受けてきた。
回りは俺にそれをすることによって、俺が目立たない姿をするようになると思っているのか、はたまたクラスの共通敵を作ることによりクラスの団結力を高めるためなのか。
しかし、そんな中俺と同じようにクラスから孤立しているやつがいた。
そいつは地味で女としての華やかさもない、髪はボサボサだし服装も女っぽくない。
「お前女っぽくないな!俺が可愛くしてやるよ!」
最初はストレス発散のつもりで声をかけた。しかし、そいつは予想以上に俺に懐き常に一緒に過ごし遊ぶようになった。
俺みたいなやつとも仲良くしてくれる。
「そいつは俺の憧れだった」
中学に上がってそいつは女らしく成長し、俺と並んでも全く違和感がないようになった。
小学校とは違い、俺は孤立することもいじめを受けることもなくなり。
見た目も相まって、クラスの中でもかなり良い立ち位置を確立していた。
同じようにそいつも俺と仲が良いからか、クラスで俺と同じような立ち位置を確立した。
思春期の男子が増えたからか、学校で告白を受けることが多くなった。
「
「ごめんな。俺、そういうこと考えられないから」
男子や女子からのされる告白を全て断り、俺はやはりそいつとずっとつるんでいた。
中学になったから自分の罪がなくなったと勘違いしている人間となんて付き合う気などない。
「
「普通に成長してるの!女の子の見た目してるんだからそういうところもデリカシー持ったほうかいいよ?」
俺に持っていない可愛さを持っている。
やはりこいつは俺の憧れだ。
中学に入って彼は更に可愛くなった。
しかし、それによって事件も起きた……
男子、女子の告白を断り続けた彼は、ついに影で彼のことをよく思わない人間たちが協力し始め、ついには彼は男子生徒たちに襲われたのだ……
「玲さん、ちょっとだけいい?お話があるんだけど」
彼にそう声をかけたのは、かつて彼に告白をして振られた女子生徒でした。
不思議な顔をしながら彼はその女子生徒についていきました。
何か嫌な予感がしたのでこっそりとその後をついていくことにしました。
私の嫌な予感は確信に変わりました。
それは彼が案内された場所が視聴覚室だったからです。
学校の授業が終わり、外は夕日が沈みかけていて校舎内の人もまばらな状態です。
係の仕事で寄った職員室もほとんどからの状態でした。
彼が視聴覚室入った後、私は聞き耳を立てて中の様子を伺いました。
「話がしたかったから、無理を言って借りたんだよ」
「で、話って何?」
「ほら、あんた達犯ってやって」
女子生徒がそう叫ぶと同時に視聴覚室の鍵を締めました。
数人の男子生徒の声が中から聞こえた時に思いました。
彼は嵌められたのだ。
中学の頃、私は平和ボケしており、忘れていました。
悪い人間というのは、本当に悪く更生などしない。
己の欲望の為に、どのような悪辣な手段も用いる、大人数で彼を襲い。
男だろうが関係なく、彼の純潔を奪おうとしたのです。
私は学校中を駆け回り、先生を探しました。
学校の施錠をしている先生を偶然見つけ、急いで視聴学室に向かった時。
純潔自体は守られていたが、抵抗したせいで殴る蹴るの暴行を受けてボロボロの状態でした。
救急車で運ばれる彼に同行し、ずっと誤り続けました。
「なんでお前が謝るんだよ…… あいつらが悪いんだよ」
彼は、そんな時ですら私に対して笑顔だった。
私はこんな可愛い彼をずっと守ろうと思った。
この学園に入って、私は変わった。
彼を守るために男の子の格好をするようになった。
胸にさらしを巻き、男子の制服を着る。
髪も短く切り、声は男子のように低くはなれないが見た目はちゃんと男の子になった。
「遅い!可愛い私を待たせるなんて何考えてるんだ!」
「姫、ごめんって甘いものごちそうしてあげるから機嫌直してよ。ね?」
「ふん……」
彼は口調も変わり、女の子として生きている。
もう彼があんな目に遭わないように、ずっと側で守り続けようと思っている。
彼……いや、
僕がこの姿をするようになってから彼女にちょっかいをかける人はいなくなった。
僕たちがお似合いだと皆が褒める。
でも、僕は彼女と付き合いたいわけじゃない。
いやそりゃ、付き合って愛し合えるならそれは本当に嬉しいし幸せなことだと思う。
でもこれは僕の恩返しと罪滅ぼし。
あの日僕を変えてくれた彼女への恩返し。
そして、あの日すぐに助けに行けなかった弱い私の罪滅ぼし。
「ほら、香菜いくよ!甘いものごちそうしてくれるんでしょ?」
「はいはい、姫。そんなに急ぐと転んで怪我しちゃうよ?」
「姫って言うなって!いつからそんなこと言うようになったんだよ」
彼女のことは本当に好き。でも、私から告白することはないと思う。
いや、私からなんてできない。
あの日からあいつは男らしくなり、私を守ってくれるようになった。
あの事件はあいつのせいじゃないって何回も言っているのに、いつからこんなに男らしくなってしまったんだろう。
「ねぇ姫、姫は小さいんだから僕にくっついてないと危ないよ?」
私を抱きかかえ、香菜は私の頭を優しく撫でる。
こんなことになるなんて、私がこいつに惚れてしまうなんて……
でも、私からは絶対に告白しない。
告白なんてしたら私が負けたみたいになるから。
私はこの姫と呼ばれる関係から恋人の関係になれたらいいなと思う。
男らしくあいつが私に告白してくるのをずっと待っている。
愛しい愛しい僕のお姫様。
素敵な素敵な私の王子様。
性別とは何ですか? 栫夏姫 @kakoinatuki
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