第25話 おつでした!

「いやぁー、おつかれー!」

「はい、お疲れ様です!」


 もう配信は閉じているが、通話はつないだまま、ひだりちゃんと話す。


「あの、みかんさん。ほんとにこっちであげちゃっていいんですか?」

「みかんちゃんでいいよ?」

「あ、はい……」

「どこか修正したいの?」

「そ、そういうわけじゃないです! じゃあ、あげますね?」


 ひだりさんのアカウントは、以前のコラボの時にフォローしていた。

 更新して、ツイートを見つける。

 すごいなぁ。

 私はツイートの瞬間を聞いていたのに、もうリツイートやコメントがされてる。


「今日は本当に楽しかったです」

「私もだよ! 同時に誰かと描くってあんまりないもんね!」

「ですよねー! 後から入れることはあっても同時にって、ないですよね!」


 サインなどでは、同じ色紙に私とは別の人のイラストが描かれているときもあったけど、その時も一緒に描いたわけではないし、そもそも現実の紙に描こうとしたら、お互い描き辛いし。

 ネット様様だよね。


「あの、次は、いつにします?」

「え」

「コラボの事です」


 あー、あれって社交辞令じゃないんだ。


「少しは期間開けた方がよさそうですよね」

「んー、そうだね」

「1か月くらいですかね?」

「1か月……うん、そのくらい開けば良さそうだね!」


 本当はいつだっていいけど……

 でも、ひだりちゃんもコラボはそこまで頻繁にやってるわけじゃないみたいだし、あくまで、自分一人の配信が基本。

 それはみんな、そうだと思う。


「名残惜しいですけど、そろそろ終わりにしましょうか」

「そうだね」

「また、ごはんでも行きましょうね!」

「……そうだね~」



φφφ



「ってことで、配信するよ!」


『こんにちは』

『こんばんは』

『ナンデ?』

『あれ、俺の気のせいか? さっきまでコラボしてたような……?』

『草』

『なんで毎回こんな急なんだ』

『ちょっとは休めよw』

『何するんですか?』


「今日からね~、デトロイトっていうゲームをやってくよ!」


 評価が高くて、配信してもいいってなってた。

 いろんな人、この前コラボした辛子風味さんや龍姫さんも、前に配信でやってたみたい。

 あと、セールもしてた。


『デトロイトは見てて楽しい』

『いろんな人がやってるから安心』

『名作ばっかりやん。いいな』

『低評価のつきやすいやつぅ……』

『バイオは?』

『デビューしたてはいろんな人がやってるゲームをした方が吉』


「そういえば、ひだりちゃんとのコラボ楽しかったな~。自分以外のイラスト見るのって楽しいよね! 私とはやっぱり描き方違うところあるからさ、試してみようかな、って気になるよね」


『わかる』

『並んでると素人でも違うってわかる』

『結構似てなかった?』

『みかんちゃんも他の人の見るんですか?』

『鼻の位置がちょっと変』

『一番最初は目の描き方見るけど、そのうち輪郭とか他の部分に注目するところ変わってく』

『あのポーズはかわいい』

『やっぱ指だけより手でハートの方が好き』

『ファンアート描いたら見てくれますか?』


「ファンアート? 描いてくれるの~? 見るよ! かわいく描いてね?」


『頑張ってみるか……(今まで一切かいたことない)』

『タグは?』

『そういうのって嬉しいもんなの?』

『下手でもいいですか?』

『ハードル上げるなw』

『描くので、添削してください!』

『全身見せて!』

『エッチなのでもいいです?』

『リプで送ります!』

『服って背中側どうなってるのか見せてほしいです』

『猫派? 犬派?』

『もう何年も描いてないからうまく描けないかも……』

『今から描き始めます! この配信が終わるまでに描き終わるよう頑張ります!』

『自分で描く以上にうまい絵ないだろ』

『どうやったら上手にかけますか?』

『ところで、みかんちゃんってミカン好きなんですか?』


「っとと、今日はゲーム配信だもんね! はい、早速はじめるよー! スタートっと! ……おー、意気込んだはいいけど、設定からだね。恥ずかし! えー、日本語、んー、字幕もつけたままでいっか。明るさはー……どう、見える?」



φφφ



「記憶消えてても、いいのかー……まあ、あれだよね。引き継ぎできなかったスマホみたいな、感覚……なのかなぁ?」


『これだけ人間ぽくて、機械感覚なの闇感じる』

『それ修理できたって言えるの? データは全部消えたけど、スマホ治ったよ!みたいなことでしょ?』

『あと17年でこんなのできるわけ』

『普通に嫌』

『服洗濯しろ』

『実際、こんなにリアルなのは大量生産しない。作っても数体。不気味の谷考えればわかる』

『貴方が私のマスターか』

『おっさんが女型のアンドロイドをねぇ……なるほどねぇ』


「このおじいさん、結構難しいこというよね。あー、でも、これで下手な絵を描いてもそれはそれでって感じなのかなぁ?」


『アンドロイドが下手な絵描き始めたら、いよいよ人間いらん』

『おじいさん、私に絵を教えてください』

『目を閉じて描くってすごいよな。盲目の絵描きもいるらしいけど』

『アンドロイドってそんな万能なのか。それぞれ専門があるもんだと……』

『絵具は舐めないのか』

『アニメ絵かいてほしかった』

『これ代理でアンドロイドが描いて、人間が売れば……』

『うますぎん? 初めての絵ってことでしょ?』

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