第10話 わっしょいわっしょい

『みかんさんの描いた娘のあたり率が2000%なので期待してます!』

『音沙汰なかったと思ったらとんでもないネタ仕込んでる……』

『公開はいつですか!?!?!?』

『V増殖してんな』

『がちでやんの? 今まで一切出てないよな?』

『た、立ち絵……立ち絵をください……』

『絶対推しにします』

『初めまして! 私もVtuberを始めようと思ってます! よろしくお願いします!』

『始めるのはいつ?』

『Youtubeチャンネルすらないんだが』

『え? エイプリルフールとかじゃないよね?』

『外注じゃないよね?』

『最近名前をお見掛けしないので、心配していたんですが、Vtuberの準備をしていたんですね! 続報楽しみにしています』

『やっぱ仕事減ったんかな?』

『イラストレーターのVって増えたよな。イラストの練習になるからいいんだけど』

『いつから始めるんだ』

『見た目すら声すら知らないのに推しにするとか言ってるやつよ』

『過去ツイ確認したら全部仕事で草』

『真面目そう。知らんけど』

『せめていつからか教えてくれないと夜しか眠れない……』

『てか、Vの仕事って受けてたっけ? 母親みかんって聞いたことないんだが』

『黄金みかんって何歳か知ってる人いますか?』

『そもそも女? 男?』

『前に描いてた輪廻ちゃんに似てる子期待!』

『全裸待機しようと思ったけど風邪ひきそうなのでやめました』

『私も新人Vtuberです! 向日葵乃ひまわりの 陽花里ひかりって言う名前で活動してるので、良かったら見に来てください!』

『絶対かわいい』

『もう待てねぇよ……』

             ・

             ・

             ・



φφφ



「今日も、泊っていこうかな……」


 お昼も過ぎて、一緒にゲームをしていたとき、柚子が呟いた。


「明日学校でしょ?」

「別にここからでも通えるし」

「ダメだよ~」


 柚子の学校までは、確かに、電車を使えばすぐだったはず。

 でも、わざわざ離れたところから通学する理由なんてない。


「家って人が使ってないとすぐにダメになるから」

「ここはマンションだから、そんなことにはならないよ」


 まあ、埃とかは溜っちゃうだろうな~。

 ごきちゃんもわいちゃうかもしれない。

 う、それは嫌だなぁ……


「でも、誰かいないと、お姉ちゃん何もできないでしょ」

「だからって、柚子がしなくていいんだよ。心配してくれるのは嬉しいけど、柚子は大学でちゃんと勉強しなきゃ」

「大した距離じゃないし。それに、使わないなら、私がしばらく使ってもいいでしょ?」

「柚子は、柚子のしなきゃいけないことをすればいいの。お姉ちゃんも、自分で何とかするから大丈夫だよ」

「お姉ちゃんが何もできないから、提案してるんでしょ!」


 柚子は優しいから、私の心配をして、言ってくれているのは分かっているけど、そこまで柚子に迷惑をかけるわけにはいかない。

 これが数日でどうにかなるなら、頼るかもしれないけど、いつまで続くかわからないし、そこまで負担を掛けちゃいけないからね。


「また、遊びに来てね? 待ってるから」

「あっそ。じゃあ、帰る準備するから」



φφφ



 柚子を見送って、しばらくすると、スリープモードになったのか、部屋の景色がみえなくなる。

 なにしよう?

 みかんちゃんの新しい服でも描こうかな?

 まだまだ数が少ないし。


 ……ん?

 あれ……?

 Webカメラどこ……?



φφφ



「ごめんなさい……」

「……別にいいけど」


 急いで連絡して、柚子に戻ってきてもらった。

 まだ近くにいてよかったぁ……

 近くの服屋さんにいたみたい。

 運いいね、私!


「自分でなんとかするんじゃなかった?」

「うっ……」


 数時間前に言ったばっかりの、自分の言葉に苦しめられてる……


「今日は泊ってくから。いいよね?」

「はい……」

「じゃあ、ごはん作るから」


 そう言って、柚子は冷蔵庫を開けようとする。


「冷蔵庫に何かある?」

「そうだった……」


 柚子は今日帰る予定だったから、食材も無い。


「えっと、私のスマホ使えるよね? UberEatsなら、引き落としになってくれるから、何でも頼んで大丈夫だよ? 多分すぐ届くし」


 いつもお世話になってる。

 なってた、かな……?


「もったいないでしょ」

「時間がもったいないよ! せっかく泊まるなら、あそぼ?」

「お母さん達に連絡してからね」


 柚子がお母さんに連絡しているのを見ながら、私は繋いでもらったWebカメラを……


「……ん?」


 ない。

 周りをみても、Webカメラは見当たらない。

 接触が悪いのかな?


 柚子がスマホを耳から離したのを見てから、声をかける。


「ねぇ、柚子? Webカメラ、繋いでくれたよね?」

「ん……繋がってるけど?」

「こっちにないみたい」

「接触? 一回抜いて、また差すよ?」


 柚子が近づき、いじっている。


「……どう?」


 柚子の声に、周りを見てみるけど、やっぱり何も変わってない。

 え、色々持って来れたのに、Webカメラだけ駄目なんてことある……?


「ていうかさ」

「うん?」

「その、Vtuber? お姉ちゃんの描いた絵ってもう動いてるじゃん?」

「あ、柚子からはそう見えてるんだっけ」

「なら、Webカメラいらなくない?」

「……」


 Webカメラ無しで、普通にできました。

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