Vtuberに転生!? 超絶かわいい妹と頑張ります!
皮以祝
第1話 篠目 蜜柑の1日
「おわった~……」
椅子に背を預け、身体を伸ばす。
「つかれたなー……」
自然と口に出てしまう。
疲れると独り言が出てしまう、昔からの私の悪い癖。
でも、一人だから許してよ、ってことで。
「はぁ~~~」
でっかい溜め息を吐き出した。
そして、もう一度、画面に目を移す。
「うぇへへ……」
今日も可愛く描けた。
金髪縦ロール巨乳ツンデレお嬢様なんて久しぶりで、テンションが上がってしまった。
無残な栄養ドリンクの瓶たちが転がってるけど、気にしませんっ!
これを送って、と。
とりあえずおしまい。
「あぁ……駄目だ。寝ちゃいそう……」
ダメダメ。
やらなきゃいけない……わけでもないけど、やりたいことが残ってる。
顔洗って、目を覚まそう。
洗面所に向かって、水道を捻る。
私は化粧もしない喪女なので、豪快に冷たい水でバシャバシャと顔を洗う。
数日変えてない洗面台の開きの取っ手に掛けられているタオルを取って、これまた乱暴に顔を拭く。
「……」
その途中、鏡に映る自分が目に映ってしまった。
鏡を見ることなんて久しぶりな気がする。
目元を隠す長い髪に、化粧っ気もなく、若くもない肌。
やだやだ、2次元の女の子だったら、若い頃は可愛くて、歳をとっても綺麗なままなのに。
「って、そんな場合じゃなかった!」
再び元の位置に戻り、画面に目を移す。
私、
先程のお嬢様は『聖騎士世界クロスハート』という、スマホゲーム内で、サポートカード?になるらしい。
その会社から、いくつか依頼を貰っていて、それが最後のイラストだった。
それも終わり、とりあえず締め切りの迫った依頼は無いのだけれど、私にはやりたいことがあった。
Vtuber。
Virtual Youtuberの略で、イラストを自分の表情と同じように動かして、動画を投稿したり、配信したりするらしい。
私は、今まで、Youtube自体あまり使ってこなかったんだけど、SNSはやっていた。
そこで依頼を受け付けたりするためだったけど、そこでVtuberのことを初めて知った。
少し調べてみたら、イラストレーターでVtuberを始めている人も多いみたいで、知っている名前のイラストレーターの人もいつの間にか始めていた。
私は、多少関わったことのある人もあるけれど、仕事上だけ。
他のイラストレーターなど仕事関係の人と、プライベートまで付き合ったことは一度もなく、そんなことになっているなんて、知らなかった。
でも、一番驚いたのは、イラストレーターがVtuberになっていた、その前。
Vtuberという存在自体に驚いた。
今まで、知らなかったんかい、と言われるかもしれないけど、その通り。
私は、昔から妹の
仲が悪いとかではなく、その通りで、私はただ絵を描くのが好きで、一度描き始めると、他の事が手につかなくなったりして、柚子たちに迷惑をかけっぱなしだった。
特に、小学生の頃が一番酷かった気がする。
今考えれば大したことじゃなかったけど、同級生の男の子にからかわれて、私は学校に行かなくなってしまった。
その間に、イラストを描くということに出会えたから、ただ悪いことばかり、というわけじゃなかったけど、それからが大変だった。
私じゃなくて、柚子や両親が。
宿題は勿論やらない、夜通し描き続け、朝起きれない。
行事をサボって、家に帰って絵を描いている。
などなどが積もっていって、最初は心配していた両親は、最後には猛激怒して、私に買い与えてくれた液タブを取り上げてしまった。
そして、私は当然ギャン泣き。
それを見越していたわけじゃないだけれど、宿題などをしっかりやると約束するならといって、返してくれた。
約束したけれど、私はなかなかできなくて、しばらくは柚子に手伝ってもらうことが多かった。
それでも中学に上がる頃には、自分一人でできるようになっていたし、その頃から、ネット上に絵を上げたりして、高校生の時に、個人からだったけれど、初めて依頼が来て……今がある。
そんな、私は、今、納得のできるイラストが描けないでいた。
今まで描いてきた知識、技術を総動員して、様々な子を描いた。
それでも、どうしても、「これだ!」というものが出来なかった。
もう数十人が放棄された。
どうしてだろう……?
やはり、私は駄目なんだろうか。
『お嬢様』『ロリ』『異種』『ギャル』『擬人化』『具現化』……
色々描いたけれど、どうしても、納得できない。
もちろん!
全員がとっても、とぉぉっても可愛い。
それは、自信を持って言える。
それでも、どうしても、どうしても、どうしてもどうしてもどうしても……
「そうだ、柚子をモデルにしよう!」
天啓。
頭の中にポッと浮かんできた。
あの、神様が、えこひいきをしたとしか思えない程に、かわいい妹。
柚子をモデルに、できれば……っ!!
「よっし! がんばろーー!!!」
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