15
次の日爽快に目が覚めた。朝の7時ちょうどだ。
しかし天気は今にも雨が振りそうなくもり空だ。カーテンを開ける前から湿気っぽい空気がしているのでわかる。
目が楽なのはいいが、雨はいやだな。
うちでは朝起きると、各自朝の用事(俺の場合はスマホのチェックだ)をすませ、15分くらいから朝食。
それから歯磨き、着替え、学校に出発。近いので割りと食事をゆっくり取る。
15分ジャストにドアが開く音がする。俺もちょうどドアノブに手をかけていた。
ドアを開けると朝天造と顔が合う。
「おはよう朝天造」
「おはよう兄ぃ」
毎日かわされる挨拶。
「どうだ熱は」
「それが……」
朝天造の顔は暗い。
「どうした?」
「熱以外何の症状もないのにまだ7度ちょいあるんだよね、動けるしもう学校行ってもいいかなあ?」
「病院いったほうがいいんじゃないか?」
「でも7度ちょいって微妙だよね」
階段をおりて絶対においしい朝食の待つ居間へと向かう。
うちの学校は土曜休みが隔週である。今週は土曜日休みだった。
「今日休んだら連休じゃん、休んで体やすめたら?」
居間につくといい香りが漂っていた。
「おかーさんおはよ」「母さんおはよう」
「おはよう」
限りなく優しい声で返事すると母親は研いだ鰹節(うちにはあのギコギコする機械……〈前調べたらそのまま「鰹節削り器」らしい〉があるのだ)をごはんに混ぜ、手塩をつけておにぎりほど握らず、手に乗せただけで海苔に巻いた「おにぎらない」(と巷ではいうらしい)と、きゃらぶき、昨日の残りの鯵の南蛮漬け、サラダの残りであろうトマトを使った味噌汁(これがおいしいのだ)を出してきた。
「いい匂い~~~~」おにぎらないを手にして朝天造はくんくんと鼻をならし、崩れないうちに口に納める。
家で削った削り節は、やはり市販のものとは全然違う。
削り器は最初は面白そうでやらせて!とふたりでやったものだが労力の割に下の箱をあけると思ったより少なく、がっかりしたものだ。母はひとりでやったのか。たまには手伝わないとな。
今日も最高の朝ごはんだ。洋風も和風もどっちもイケてる。
「あ、おかーさん、私まだ熱がちょっとだけ残ってるの」
「連休にしちゃいなさい。いつ梅雨中に急に寒くなるかわかんないし、今日ブレザーとスカートクリーニングだしたら、日曜に受け取れるし、ちょうどいいわ」
小学生のときからあまり学校を休んだことはないので、たまにはいいんじゃない?くらいの気楽さだ。
「んー!!!!そうしよ!」
「んじゃ俺だけ準備して行ってきますか」
歯磨きして着替えると鏡の前でぴしっとする。
7時55分、いつもとかわらず「いってきまーす」と登校準備。玄関を出てすぐ曲がると窓から声がした「兄ぃ!いってらっしゃい」朝天造がまどからひらひらと手をふっている。俺は軽く手をふりかえした。
誰もいない道で力を出して走ってみる。やはり早い。特に「血(またはそれに準ずるもの)を体に入れないと能力が低下する」ことはなさそうだ。
それより、おじいちゃんがやっていた細いところを通るのは練習が必要っぽいからやるときが来るのかどうか、暇があったらやっておこう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます