12
昼食を食べ終わると朝天造は部屋に戻ると言う。
一緒に階段を上がっている最中、朝天造に「ちょっと話があるんだがいいか?」と聞いてみる。
「うん?別に熱も下がってきたし、部屋においでよ」
朝天造の部屋の座椅子に座る。いつもならベッドに座るが朝天造は横になるだろう。
ベッドサイドにおじいちゃんの日記があった。
「また読んでたのか」
「暇だったし……でもこれ全部じゃないみたいね」
元々日記の表紙はほぼ同じもので、番号などが振られていない。あとで誰かが読むことを想定したわけではなかったのか、日記の日付も年号が書いてないものもあって、読んでもわからないことも結構あるという。
これも”Six"とやらに見つかったら取り上げられてしまうのだろうか?
「うちの母さんにも力があることがわかった……。ちょっとしたことを予言したりする程度だけど、祭りの巫女とかもやってたみたい。
あとこれはおじいちゃんの予想だと書いてあったけど、料理がうまいのも、その予言の力も「いもの力」っていうらしいよ」
「芋?」
「芋食べてもおならしかでないよ。うちの母親、名前”巫妹”ってちょっと変わってない?まるで生まれた時から巫女の力があって……」
うーん、と考え込んだ朝天造がぱっと顔をあげた「あ!いものちから」の「いも」って「妹」のことじゃないの?」
名前に妹がつくくらいだ。上に兄姉がいるのだろう。
「そういえば母親の家族構成……祖父母は置いといて、聞いたことないよね」
俺は今日じいちゃんに合ったことを言いたくてむずむずしたが、合ったと言わなければいいのだ、急に伝えたくなった。
「そうだな、俺たち兄妹も仲良くし続けてたらそのいも…?の力が朝天造にも使えるようになるのかもな」
「ひょっとして料理が異常に上手なのも「いもの力」ってやつなのかな?」
んー、と目を上に向けて考え込んだ朝天造を見ながら俺は考えた。
(朝天造が大事なんだ
絶対に守らなくちゃいけないだ
朝天造だけは……)
目頭が熱くなるのを感じた。
「どうしたの兄ぃ」
自分の目から涙が出ているのがわかった。
「俺目が弱いから」
必死にごまかす。
「とりあえず横になって、体を治せ」
俺は声まで涙声になってる気がしてそそくさと自室に戻った。
母親にも話を聞いてみようか……どうしよう……
何を聞けばいいんだ……よく考えてからにしよう。
とりあえず俺がやれること、この力を人に見せないようにするくらいか。
自室で落ち着かず、時間を見ると午後の部活の時間だ。
なんとなく俺は学校に戻った。
やることがないので仕方ない。朝天造は病気なのだし、夕飯までの時間を潰すには一旦気を紛らわせたかったのだ。
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