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さすがにあれだけ食べたあとだ、食卓には日持ちする袋のクッキーやチョコレートが籠にはいっているだけで、母が入れた紅茶がそっけないが美しいそれぞれの色のカップに淹れて出されている。
俺は白桃の入った紅茶が好きで、水出ししたものを青いガラスのグラスに出してくれた。
朝天造には同じもので桜色のマグカップに温かいものが出されている。
テーブルに楽魅楼を抱っこした射躯羽ねぇ、俺、朝天造、母親、ひろしさん。
射躯羽ねぇはもう楽魅楼がかわいくてしょうがない感じだった。ここは射躯羽の方が似てるとか、ひろしさんに似てるとか、他愛もない話で午後のお茶会がゆったりと流れていく。
朝天造は口いっぱいにバターたっぷりのフィナンシェ(これも実はひろしさんがもってきてくれたもので、結構高いものだし、今日の分ではないと思うのだが…)を頬張っては紅茶で流し込み、射躯羽ねぇに「楽魅楼には将来どんなことさせたい?」などと聞いてはいるが祖父関係の話をしとうとなるとあからさまに
「ああいいやっ、やっぱ!」などとどうもギクシャクしているようだ
楽魅楼は寝てるかと思えば急に泣いたりして会話を止めていたし、ひろしさんは結局ずっといっしょにいて、うまく射躯羽ねぇと話はできないみたいだ。
「夕飯も食べて行きたかった~~~」
射躯羽ねぇが突然手を伸ばして叫び、テーブルに突っ伏す。
「え、食べていかないの?」と母。
「元々仕事押してて、帰って寝ないでやれば大丈夫かと思ってたけど、楽魅楼が初めての長旅だから疲れてるみたいってのもあって」
本当にがっかりしているが、こどもが一番大事なのはわかる
寝付くのに時間がかかったし、こどもというものは突然高熱を出すものらしく、その兆候があるということで、寝てるうちに家に帰りたいということだった。
「射躯羽ぁ~~~姉妹ならではの話もあるんだぉー!ざーんねん」
テーブルに両ひじをついて、朝天造はふくれた。
「さすがにこどもできちゃうとなかなかねぇ」射躯羽ねぇはにこっとするが、やはり家にいた頃の射躯羽ねぇとはちょっと距離感ができてしまったように感じる。
別に嫌いになったとかそういうわけじゃないだろうけど、毎日合わなくなって、秘密ごとが増えてきてしまっているのは年も離れてるし当然のことだろう。
「そっちにもいずれ遊びにいっていい?」笑顔に切り替えた朝天造が射躯羽ねぇに言って、それがひろしさんに伝達すると
「いつでもいいですよー」と返事があった。
母親がタッパーになにか詰めている。
食べていくはずだった夕飯、あさりなどの入った炊き込みご飯と、牛肉を薄く伸ばして揚げたシュニッツェル、これはカレーなんかによく合うので、炊き込みご飯じゃないときにカレーなんかに添えて、と母が言っている。あと鶏肉のトマト煮込み。
結構な量になったが、車で来ているのでみんなで詰め込めばすぐに終わった。
18時頃、ひろしさんと射躯羽ねぇは車で稲毛を後にした。
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