俺がふたりがけのソファーを占拠してテレビを流しているとチャイムが鳴った。母が対応していにくが、姉の射躯羽だろう。

姉はしっかりしていて、時間に遅れることなどほぼないが、それでも長女だからか、サバサバしているわけではなく、どちらかというとおっとりとしている。


玄関で手間取っているのは今回初めて抱えてきたこどもの荷物などなのだろう。

手伝いに行ってやるか、と玄関まで行ってやる。


なるほど、これは大変だ。

抱っこひもなるもので娘をからだにくくりつけた姉は、あとは哺乳瓶やらタオルやらおもちゃなどを車から持ってきてうちに入れている。

俺は体を抱っこひもで娘と一体になっている射躯羽ねーちゃんの荷物を手にとった

「余信夜!」

射躯羽ねーちゃんが顔をあげる。

「あんた大きくなったねぇ…それにおじいちゃんに似てきた」


祖父は俺がものごころ付く前に葬式をしているので顔を知っているのはねーちゃんだけだ

「そうなの?」

よくおぼえてるな、と俺は思った。

何をしていたかはよくわからないが、父のいた研究室にいたこともあったらしく、医者と言うか研究者だったらしいということと、実は亡くなったのではなく、突然行方不明になり失踪者というのは7年たつと死亡扱いになるので、実は本当に誰か遺体を確かめたわけではないのだということ。

一応失踪して8年半くらい経ったところで区切りとして葬式は執り行われたらしい。多分ひっそりと行われたのだと思う。

射躯羽が6歳まで、要するに俺が産まれて少し経つまで、朝天造が生まれるくらいまでは家にいたらしい、それからずっといないので俺の記憶には祖父らしき人物がいたような気しかしない。朝天造には全く記憶はないだろう。


「それよりおかえり!とりあえずその重そうな娘をソファーにおろしてゆっくりしなよ!」

射躯羽ねーちゃんの荷物をリビングのソファーに置く。

「ありがとー」

朝天造も顔をだした。

「射躯羽ぁー!」

朝天造は射躯羽と仲がよく、6歳も上なのに呼び捨てで呼び合っていた。

「おっかえり!今回は本当にひさしぶり」

なにかに理由をつけ月に一回程度母の料理を食べに来ていた射躯羽だが、さすがに娘が産まれてから数ヶ月、こどもは数時間に一度起きるというし、射躯羽は月に数本ではあるがライター業を営んでいるのだが、それも急にはやめられなかったのでゴールデンウィークにも来られなかった。実はエロ系のライターだということは、家族では多分俺しか知らないが。フフッ。


ソファーに娘をそーっと下ろすと、すーすーとおとなしく寝ている。

「あーん!かわいい!」

さっそく娘に朝天造が反応する。

「姉貴似?旦那似?」

俺も娘を囲む。


あとから荷物をだして車を動かして来た旦那さんがタイミングをのがした感じでリビングの入り口にたって「おじゃまします…」と小声で言った。

手には是清屋のフルールゼリーの紙袋を持っている。

朝天造の目が光った。

「私、桃のやつだからね!」

旦那さんに挨拶の前に宣言している。

旦那さんは「六天目ろくてんもく」というカッコいい珍しい名字をしていた。

どう考えても黒髪に地味な顔、何も悪いところはないが良いところもない顔立ちに名字が負けているから、だとは誰も口にしないが、下の名前は「博」なのでみんなひろしさんと呼ぶ。

そうか、姉も今は「六天目」なのか、あんまり考えたことはなかったが……。

「ひろしさんこんにちはー、ほら!朝天造も!」

「いっけね」と俺にしか聞こえない小さな声で言ったあと

「ひろしさんこんにちは、是清屋のゼリーはこの季節からって感じですよね」

こいつの頭の中はもうゼリーでいっぱいらしい。

はあ。


「射躯羽ー!娘の名前は何ていうの?」

「楽魅楼、らみろよ」

「らみろちゃーん!おじちゃんですよー」


「ねぇーゼリー食べていいー?」

朝天造が母にいう。おい15分くらい前までパンケーキ食ってただろ。

ゼリーは10個入りで、みんなであとで食べる分もあると朝天造は知っていたが、さすがに「あとでみんなで食べましょう」と言われてまあ仕方ないか、という顔をしている。

桃のゼリーは一つしか入っていないのでマジックで「あてなの」と書いて冷蔵庫におさめた(そもそもひろしさんからどうぞ、と母に渡されてもいないのだが)


俺は楽魅楼をそーっとなでたりしていたが、その間に目を覚ましてしまった。

これは泣くのでは…とビビったが楽魅楼は俺の指をちゅぱちゅぱとしゃぶりはじめた。ああ、おしゃぶりと勘違いしてるんだ。

「ミルクはでましぇんよー」

幼児語になっている自分に引く。

そのとき気付いた。

なんとなく舐め方が……性的だ。

いやいやいや、俺の気のせいだろう!?こんな産まれたばかりのこどもに性を感じるなんて俺はロリコン…いやペドフィリア……それさえ超えて……なんて呼ぶんだ!?


「あらー、ミルクかなー?」

射躯羽ねーちゃんはテレビをみていたのだが、娘が起きたことに気付いたらしい。

「ここであげちゃっていい?」

射躯羽は胸をはだけた。

(えー!!!!)

ねーちゃんはGカップの(はっきり知っているのは洗濯物を干すのを手伝ったからダゾ!本当だぞ!)巨乳なのだ。

「大丈夫、今ちゃんと見えないようにあげる下着があるからぁ」

髪をかきあげて射躯羽ねーちゃんは胸をあけ、下着とやらを操作して楽魅楼がおっぱいをのみやすいようにどうやら服の中で乳首を出した。

「よーしよし」

楽魅楼は射躯羽ねーちゃんに抱きつき、服の襟から頭を半分つっこむ形で母乳を飲んでいる。


ほほえましい光景、のハズだが俺はやっぱり姉は巨乳だ、との認識が頭から離れなくてもやもやしている。




それともう一つ、気になることがあった。



今まで母乳や、乳をあげている他人の母親にそれほどまでに近づいたことはないが、こんなに乳って匂うものなのか!?


匂うっていっても「乳臭い」という意味のもっと濃いようなもので……要するに……

なんだかすごく…とにかく匂いが鼻を刺激する……

飲みたい…

ねえちゃんの母乳が、なんだかもう10キロ走った後の水のように感じる。


飲みたい!


しかしそんな実の姉である射躯羽に「いいなあぼくものませてくだしゃい」なんて言えるわけがない。俺はそーっとトイレにいくふりをしてその場から離れた。


で、今実際トイレなのだが

冷静になろう。

冷静に。


知識として知っているだろう?母乳っていうのは血みたいなもんでミルクではない。栄養価はその時のこどもによって変化するがおいしいものではないという。


俺はどうした?巨乳は嫌いじゃないぞ?でも射躯羽ねーちゃんよりCカップの朝天造のスタイルの良さのほうが俺は…って

何を考えてる!?

そうじゃねえ、胸に吸い付きたいわけじゃない、純粋に(?)母乳の匂いが俺を刺激しているのだ。


ミルクの匂いから離れたら少しマシになるかと思ったのだがまだドキドキしている。


飲みたい…。


母乳プレイとかを希望するわけではない。性癖は大体なんでもござれの俺だが母乳プレイは10点中5点ってところであまり好きでもない。

だからそうじゃねえって!


一体どうしたよ!俺はまだ母乳が飲みたいんだぞ?

ああ、そうだ!

運んできたものの中に哺乳瓶があったはずだ!

あれにいれてもらうっていうのはどうだ?

それなら射躯羽ねーちゃんも抵抗なく俺に母乳を飲ませてくれる…わけないだろ!


「兄ぃーうんこー?」

実際どれくらい長い間トイレにいたのかわからないが、朝天造が外から声をかけてくる。

「あー今でます」

「いそがなくてもいいけどー」

朝天造と入れ替わりにトイレから出た俺はなぜか一回部屋に戻った。


隠してあった巨乳のグラビア雑誌を手に取る。


「おんなはやっぱりCカップ!」

声に出してみる。巨乳もいい、10点中9点だ。

だが、スタイルがいいのもいい。と言うか具体的に俺は朝天造の体が、というとアレだが、ほんの少し身長高めの、スっとしたスタイルが一番好きなんだ。


確認したところで台所に戻る。

昼飯がなにか確認でもするか。


台所でなにか魚をさばいている母の横に、なみなみと母乳らしきものが入った哺乳瓶が2本、お湯かなにかが入った容器にいれられている。

おもわず俺は

「こここれはなんですかっ」

よくわからない口調になってしまった。


「射躯羽はお乳が出すぎちゃうらしいの。絞らないとパンパンになっちゃって痛いから出しておくんだって」母は続ける「後でまた飲むようなら飲ませるのに使うけど、多分捨てちゃうんですって。どうせそのときまたでるから。なんかもったいないわよね」

母は至って冷静に説明してくれたが俺はもう生唾が出て仕方なかった。

母は「料理に使えないかしら」と笑いながら言うが、母もこどもを3人も育てたからこれが決しておいしいものではないことは知っているだろう。


捨てる?

じゃあこれを飲むのは自然じゃないか?


俺はドキドキを超え、逆に冷静にさえなった。

さすがに母の目の前で飲みやしないが、理由が……ここにはある!


俺はしばらくミルク臭と生唾が湧くのを我慢しながら母の手伝いをしていた。

煮付けや揚げ物の匂いがミルク臭を消してくれるかと思ったら体内から匂ってくるような塩梅で、どんな濃い調味料の匂いもミルク臭を引き立たせてしまう。そしたらやはり、口の中も生唾がわいた後にからからになって、早くアレを口に入れてしまいた

い理由のひとつになっている。

「かあさーん、手伝ってぇー」

母が射躯羽に呼ばれる。

母が2分くらい戻らないので飲んでしまえばよかった…、と余信夜が思っているところに、リビングからひょこっと顔をだして母が「ちょっとたまに魚に煮汁をからめて!あとさっきのお乳、やっぱり捨てちゃっていいって!流しといて」という

射躯羽に楽魅楼のおしめの手伝いでもさせられているのだろうか?

魚の煮汁をからめろと言っていることはしばらく台所に戻らないということだ


チャンスタイム!というかほぼ100%成功!


俺は早いほうがいいだろう、とさっそく保存用の母乳の入った瓶のふたを開ける。

これはよくあるチューチュー吸うタイプでなく、人肌で保存して、瓶の口に哺乳瓶の口が付くというタイプのものだ。だから…一気飲みができる。それに俺が求めているのはこの母乳であって、別に乳首プレイではないのだ。


腰に手をあて、一気に飲み干す。

1本目…確かにおいしくない。

ミルクということばから想像できる代物ではない上に生暖かく、正直飲みきれるものではない味だ……

しかし、なぜか俺の体の細胞がこれを欲しがってたまらないと言った具合に味は関係なく飲み干す。

ぷっはあ!

なぜだ?本当に何キロも走った後の水みたいに体に染みわたる。


2本目…もう少し味わってみようかとも思う。

急ぐに越したことはないがよく味わうと絶妙な甘みがある、牛乳ではないが……なんだろうな?と思いながら半分くらい飲み干したとき



「なにしてんの?」


朝天造が立っていた。


口から心臓が出そう、とはこのことか

声も出なかった


「いや、その射躯羽ねーちゃんのミルクを処分しています」

飲んでいたところまで見られていないことを祈って上ずった声で言うと、

朝天造の反応は、よくわからないものだった


「飲んじゃったのか…そっか」

切なそうな顔をして俺に背中を向ける。

「ちょっとでも飲んじゃえば、だからな。飲んじゃったんなら全部飲んじゃって!」


それだけ言うと台所から出ていく


なんとも不思議な反応に俺はまだ持っていた瓶の残りを飲み干して、流しに置いて水をいれておいた。魚に煮汁をかける。


朝天造の反応はなんだ?

「兄ぃ!気持ち悪い!姉の母乳だぞ!」

「ほーらほらみんな-見て!兄ぃはまだおこちゃまでーす」


そんな反応するのが普通のことじゃないか?これは

興味があってちょっと舐めてみるとかならいい。

腰に手をあてて、瓶のふたもあけてごっくごくと「飲んで」いるのだ。

しかも姉の乳を、弟がだ。



なんか急にさみしくなってきた。

悲しくさえなってきた。

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