灰色の日々を繰り返し、いつしか夢を忘れた男が、かつて同じ夢を見ていた親友と再会する物語。
SF、ではあるんですけど、どちらかといえば主人公ふたりの夢と友情のドラマです。SF要素はただの舞台装置というか、あくまできっかけみたいなもの。とはいえ、そのSF要素によって引き起こされる騒動が最大の山場で、でも特徴的なのはその〝格好良さ(悪さ)〟の使われ方。
作中に出てくる様々な武器や必殺技の類が、でも全部「単純にそれそのものを見たらあんまり格好良いとはいえない」ものとして描かれていること。子供っぽい厨二妄想だからこそ、それを受け入れたという意味が発生する、というところが素敵でした。
個人的に好きなのは、ちゃんとヒーローになれた主人公たちとは対照的に、なんだか怪物みたいになっちゃった大人たち。労働とは、責任ある社会の一員として生きることとは、かくも人の心を破壊してしまうものなのか……。
いやこの辺、やたらと凶暴化してしまっていることを除けば、実現力そのものは相当あるようにも読めるのが興味深い。【7】終盤のサトルさんのアレとあわせて考えると、いろいろ深読み(というか勝手な妄想)ができて楽しいです。
爽やかな終わり方が印象的な、男同士の夢と友情の物語でした。