44.浅間京介の過去の邂逅
今日は
俺は教室で一人スマホゲームに夢中になっていた。ちなみに、なぜ俺一人だけしかこの教室にいないのかというと、集合時間より二時間も前に学校に来てしまっていたからだ。
昨日、メールで今日のオリエンテーションが遅らされることになったという旨の連絡があったのだが、不幸にも俺がそのメールに気づいたのは学校に着いて教室に誰もいないのを疑問に思ったあとのことだった。
それで、皆が登校してくるまでの暇つぶしにゲームをやっているというわけだ。
ふと、肩が叩かれた。俺はその驚きで一度ビクついたあとに、顔をそちらの方向に振り向かせる。
すると、俺の振り向いた先には見知らぬ女がいた。着ているのはこの学校の制服。
「ゲーム中にごめんなさい。ここって一年C組の教室ですか?」
『ゲーム中』という言葉に多少の引っかかりを覚えたが、とりあえずそれは無視することにした。
「違います。ここは一年B組の教室ですけど……」
「え、B組ですか……ということはC組は隣の教室ってことですよね?」
「たぶん、そうだとは思いますけど。確認してみましょうか?」
正直言ってめんどくさい。でも、ここで見知らぬ女に好かれておくのも悪くないかもしれない。
「いいんですか? お願いします」
俺はその女の返事を聞き、ゲームアプリを一度閉じて、少し前に開いたメールのアプリを再び開いた。
「これ、ですね」
俺がそう言いながら、女のほうに手を伸ばして自分のスマホを手渡した。
「……この画面、送ってもらってもいいですか?」
と言ったあとに俺のスマホを片手に持ったまま、もう片方の手ですぐに女はスカートのポケットから自分のスマホを取り出した。少しの操作をしたあと数秒後に、スマホの画面をこちらに向けてくる。
「これ、QRコードです。ここに送ってください」
そしてそう言ったあとに、女は俺のスマホを返してきた。
俺はヤバい女だとは思いつつも、仕方なく女のスマホに映っているQRコードを読み取った。
これで俺とこの女はお互いのことは何も知らずに連絡先だけを交換してしまった。
俺はとりあえず、先ほど女に見せたメールを転送してあげることにする。
「ありがとうございます。送られてきました」
「いいえ、大丈夫です」
俺がぶっきらぼうにそれだけを言うと、女は一度軽くお辞儀をしたあとに教室を後にした。
俺はスマホの画面にもう一度視線を落とす。
『ちがや つばき』
あの女はただ頭が悪いだけなのか、それとも策士だったのか。
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二作目連載作品
『いじめられていた私がJKデビューをしたら同じクラスの男の子から告白された件。でも、ごめんね。』
https://kakuyomu.jp/works/16817330654542983839
↑こちらも是非ともよろしくお願いいたします。
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