24.日曜日
時は来たりし日曜日。
俺はふと目を覚まし、ベッドの近くにあるデジタル時計を確認する。
結構寝た気がするなー。
デジタル時計には08:32という表示がてらてらと光っていた。
「結構いい時間だなー。それにしても身体だっる……」
昨日久しぶりに遊園地などという普段絶対に行かない場所に行っていたせいか、ただ単に寝すぎただけのせいかはわからんが、俺は重たい身体を無理やりに上半身だけ起こして暫し放心することにした。
俺はこの動作をすることによって、休日の優越感に勝るものはないと改めて自分の脳に再認識させるようにしているのだ。
冗談です。別にそんな意図は全くありません。今思い付いたでまかせが口を衝いて出ただけです。
あとこの俺のすぐ隣で光ってる時計ってLEDライトなのかしら?
当然誰も答えてはくれないので俺は次の行動に移ることにする。
……。
ってか右脚さっきからめっちゃ痛いんですけどー!?
具体的には右脚の
俺は真相を確かめるべく、上半身だけを完全にベッドの上に起こした状態で右脚の脹脛に右手で触れてみる。
「……うーん、やっぱりこれ絶対に足つってるわ」
そう、俺の右脚の脹脛はバランスボールのような固さで張っていたのだ。
柔らかいのになぜか少し固さがあるあの感じである。
マジで朝から嫌なことがあるとテンション下がるよね。
丸一日嫌な気分のまま過ごすことになったりするよね。
しかしだ。いくら俺が痛い思いをするからといってベッドの上で長い間だらけたところで時は止まらない。
俺だけ一日が四十八時間になることも絶対にありえない。
いや、『絶対っていう言葉を軽々しく使うな!』とどっかの誰かさんに昔に言われたことがあるのでここはたぶんと言っておこう。
まあほとんどの確率で一日が二十四時間から変わることはないので、俺は今日も大人しくいつもと何ら代わり映えしない朝のルーティンをこよなくこなすことにした。
そして、俺はやっとの思いでベッドから下りて地に脚をつけることに成功した。
その次に、俺はなるべく痛い脚を意識しないようにしながら近くにある洗面所に向かう……と思いきやすぐ近くの勉強机にある夜通し充電されていたスマホをその場で手に取る。
そしてあとはひたすらにいじる。
具体的にはSNSに上がっている投稿を見たり、メッセージが来ていないかを見るだけである。
それにしてもほんとにこの脚の張り嫌な感じー。
あと意識しないようにと意識している時点で、それはもう意識していると思うのですがそれはいったい……。
そんなことを思いながら俺はSNSを確認する。
うーん、誰かが賞を受賞したり海外に留学をしたりしているという投稿は特になく、至って普通でいつも通りの投稿内容だった。
俺は内心少しガッカリしつつもスマホをポケットにしまい、次は顔を洗うために近くの洗面所に向かう。
そして俺はその後顔を洗ったり、ネットの動画を見ながら朝御飯を食べたり、歯を磨くなどの諸々の言わば朝のルーティンをこよなくこなした。
次いで俺は自室に再び帰着した。
よし、後は寝――おっと、危なく人間から変身しそうだったわ。
俺は今日は特に昨日のように濃密な予定があるわけではないので、いや、むしろ濃密どころか全く予定がないのです。
だから濃密かどうかを判断する材料すらないような状態なのである。
結果、特にやることもない俺は取り敢えずスマホをベッドにフリスビーの如く華麗に投げる。
次に英単語を覚えようと、バッグの中から英単語帳を取り出すためにその中に手を突っ込んだ。
そして俺はあえて、バッグの中を見ずに感覚だけで英単語帳を取り出すというゲームをやることにした。
「うーん、どこだー? あった! ……なんだこれ?」
俺はとりあえず手の感覚だけで探し当てた英単語帳を机に置いた。
続いて、教科書よりも先に探し当てていた教科書類とバッグの底の間に挟まり教科書類の下敷きになっていた、なにかが書き綴られている原稿用紙を取り出す。
しかもその原稿用紙は真ん中で半分に折られていて、広げてみると原稿用紙は五枚ほど折り重なっていた。
そして俺は少しばかり心当たりがある原稿用紙を黙読し始める。
『浅間はすごい奴だと思う。
こいつは周りをよく見ている。そして彼の凄いところはこの後だ。
正直、周りをよく見ることに関しては俺もよくできていると自負している。
彼は何人かで話をしているときに全員がわかる共通の話題を振ってくれるのだ。
誰一人わからない奴がいない、仲間外れの奴が出ない話題を。
俺とは違う。欲の思うがままに生きている俺とは違う。
俺も本当は気づいているんだ。仲間外れになっているあいつのことを。
でも、それでも俺は彼のように欲に抗うことができない。
なんて弱い人間なのだろうと思う。
友達のことを考えない友達は本当に友達になれているのだろうか。
いや、一つ屁理屈を言わせてくれ。じゃないと俺は前に進めない。
その屁理屈を誰かに打ちのめしてもらわないと俺はまたその屁理屈を使ってしまうから。
その屁理屈をまた利用してしまうから。
だから俺がもう二度とその屁理屈を使えないように木っ端微塵にして下さい。お願いです。
成長をやめてしまったら俺は人間として失格だと思います。
成長をやめた自分は人間の皮を被った化け物です。そんなものは見せかけの人間で。
だからどうか俺のたった一つだけの屁理屈を聞いてやってください。
俺は友達のことを気にして自分の言いたいことを言えない関係は友達なんかじゃないと思う。
自分の言いたいことを素直に言えない関係では見せかけの友情だと思う。
相手の顔を窺って相手の利益になる話しかできない関係は本当に友達でしょうか?
お互いがお互い同士興味のない話をし合ったっていいじゃないですか。
たしかに聞いてあげてるほうからしたら地獄かもしれない。
そんなことには微塵も興味がなく、どうだっていいかもしれない。
でも、その友達がそれで満足気な顔をしてくれたらそれだけでこちらも嬉しくなりませんか?
それだけではあなたへの報酬にはなり得ませんか?
その上でもう一度言おう。浅間は凄い。
自分の言いたいことを我慢してまで周りに気配りができる凄いやつだ。
それに対して俺は退屈になってしまう友達を作ってまで自分の話を友達に聞いてもらいたい。
これはいけないことですか?
でももうこんな自分に飽き飽きしました。
教えて浅間。どうしたら自分の気持ちを抑えてまで友達に歩み寄ろうとすることができるのだろう。
自分の話を友達に聞いてもらうことが悪いことだとは言わない。
そんなこと俺には言えない。
でも、それが「ずっと」なんです。
だからもうそろそろ成長しなければならないのです。
この手法を僕は限界まで使ってしまいました。
もうこれ以上使うことは許されない。
これ以上使ったら俺は人間ではなくなる。ただの欲に忠実に生きる怪物になってしまう。
だからお願い。俺に成長する方法を教えてください。
今、俺は初めてタバコや麻薬をやめられない人の気持ちがわかったと思う。
そうか、彼らは限界を超えてまでその方法を使わざるを得なかったんだ、と。
やめる方法が俺と一緒で分からなかったんだと。
しかし教えて貰ったからといってそれが必ず実行できるわけじゃない。
でも、せめてそれに抵抗しようとした自分を褒めてやりたい。慰めてやりたい。
そんなものはまやかしでただの自己満足かもしれない。
それを知ったうえで、それでも俺は抵抗しようとした自分を褒めてやりたい。
「結果が出ないとそんなものは全く役に立たない。結果だけが全てだ!」という人がいるかもしれない。
でも、自分の頑張りを、その経験を、自分の成長を促す糧にしてあげてもいいんじゃないですか?
少なくとも俺は自分で自分を慰めてやることは大事だと思う。
「そんなことをする奴は貧弱なやつだ。弱い奴だ。世の中を舐めるな!」と思う人もたくさんいると思う。
それでもたまには自分で自分に肥料を撒いてあげてもいいんじゃないですか?
本当にもう自分には育つ見込みがありませんか?
少しの可能性を信じるのはくだらない意味のないことですか? 本当にそれは空虚な盲信ですか?
そして今もなお、悪化していっていっていると思う。
俺はここまで自分勝手で周りの人のことを考えずに、ただ一定の人に言いたいことを伝えるためにその場にいる他の人を無碍にしてまで自分の言いたいことを自分勝手に言い、周りのことを考えない自己中心野郎だっただろうか?
これで俺の懺悔兼言い訳は終わりです。
成長します。心がスッキリしました。』
俺は数ヶ月前に書いた作文を一通り読み終えて、暫し固まる。
……。
やっぱりこれ、最近書いた意味不明な作文だったかー。
俺がこれを読んで思ったことは二つ。
一つ目は真顔の「何これ?」である。
途中で大体の内容を思い出して文章ごとに来る言葉が大体わかっていた俺でさえも気持ち悪いと思った。
でも、それと同時に、このような妙に悟っている文章を書けるようになった自分を褒めてやりたいとも思った。
覚えたての言葉を乱用し『この言葉遣いとか頭良さそうに見えてかっこよくね?』と思いながら書いていた自分の下心が見え見えではあるが。
しかしながら、いくら内容事態があれでも、語彙力や表現力という観点から見れば昔に比べ断然によくなったと思う。
あと、なによりも深そうにみえて予想通りの浅い文章なのも妙に心地がいい。
そして二つ目は……。
メッセージ!
俺は音がしたほうに振り向き、すぐさまベッドにダイブ。
そしてベッドの上に置いてあるスマホの通知を確認する。
俺はメッセージアプリを開くと、すぐさまその名を目にする。
「……
空閑は俺が中学のときに、一緒にバスケ部に所属していた言わば「部活メイト」である。
あ、でもクラスも中三のときは一緒だったわ。
そして肝心な内容はというと、『今日久しぶりに近くの図書館の体育館でバスケしよう』という内容であった。
こちら側も特にすることがなかったうえに、最近は運動不足で困っていたため、ちょうどいいと思い、俺は二つ返事で空閑に承諾のメールを送った。
スマホには待機命令を出しておく。
そして再び勉強机の椅子に座り単語帳を――。
あ、そういえば時間聞いてなかったわ。
俺はすぐさま再びベッドにダイブし、スマホに『何時くらいにする?』と打ち込んで空閑にそのメッセージを送り、またもや携帯はその場に待機させ、俺は三度勉強机と向かい合う。
やっと英単語を覚えられるぜい! と単語帳の背表紙からレッスン4のページまで勢いよく戻そうとするが
背表紙には馴染みのない名前が記載されているように見える。
「
……あらー? それに俺って性別転換できたんだ。
あとなんか身体中が急に暖かくなって汗が止まらないんですけど。
俺の部屋にある何かが俺の体に合わなくて拒絶反応を起こしてるのかな。
でも、いつもとこの部屋何ら変わりないと思うんですけど。
……はあ。
すると、「逃げても無駄よ。現実をお受け入れなさい」と天からのお告げが俺の耳に微かに届く。
そうします。
……いいえ。貴方様の御加護を受けなくても僕はもう自分でちゃんと行動できますよ。
はい、もうご心配ありません。他に困っている人達を助けてあげてください。
そこで俺はどこからともなく現れた姿が見えない神様との交信を終えた。
ということで、俺は英語の時間で席が隣にも関わらず、ほとんど話したことがないクラスメイトである
ちなみに「少しは話したことあんのかよ!」と突っ込んでしまったそこのあなた。
そうです、そこのあなたですよ。
ほんとに自分? みたいな反応しながら自分のことを指差してとぼけないでください。
まあ、俺も授業中当てられたりしたら、結構その戦法使うけどね。いかにも「誰に質問したいのかわかりませんでしたー」みたいなね。
おそらく先生からしたら「いや、日方って名前あなたしかこのクラスにいないんですけど。教師なめとんのか? あーん!?」と口には出さずとも、心の中では思っていることだろう。
こちらにも「生徒なめとんのか? あーん!?」と言いたいくらいの不満を彼らには抱いている。
なぜ先生はあんなにも偉そうなのであろうか。
自分も年下の人を相手にしてしまったときには少なからず偉そうにしてしまう節があると自覚しているから、俺が言えたものではないが。
それでも俺は問いたい。
なぜ先生は生徒に対し、あんなにも偉そうなのだろうか。
たしかに、生徒と同じ立場になって接してくれる先生も少なからずいる。
俺はそのような先生が結構好きなほうだと思う。
しかし、逆に生徒に対し、なぜか「私のほうがお前より偉いんだぞ! 」という風を吹かせる先生も多々いると俺は思っている。
ここでいくらかの人は言うだろう。
「いや、だって先生のほうがどう考えても生徒よりも立場が上じゃん」と。
俺はそうは思わない。
いや、正確に言えば、もとは先生のほうが教える側の立場である以上地位は上なのかもしれない。
しかしだ。僕、私たちは学費というものを学校にし払っている。
それも彼らが給料を貰えるほど多くの。
お母さん、お父さん、ありがとうございます。僕はあなたたちのおかげで毎日無事に学校に通うことができています。
話を戻そう。
そして僕、私たちが学費を学校に払うことによって俺たち生徒と先生たちとの立場は同等になっていると、俺は思う。
いや、むしろ誇張して言ってしまえば、この時点で先生と生徒の立場は――例えれば「店員と客」の主従関係になっていると思う。
生徒たちは先生に「学費という対価を払う」ことによって「授業という商品」を買っているというふうに捉えることができると思うからだ。
そして店員からすれば「お客様は神様です!」という意識があると思う。
ごめんなさい。これに関しては俺店とかでバイトしたことないからわからないです。
でも、たぶんそういう認識をさせられるように店長などに指導を受けていると思う。
ここまで言ったら察しの良い方ならわかると思う。
つまり、生徒は先生よりも立場が下であるどころか、神様である生徒のほうが先生よりも立場が上であるという捉え方ができるわけだ。
まあ、正直俺も先生が生徒に向かってペコペコ頭を下げているところを見たいわけじゃない。
ただ、生徒もとい生徒の親たちのおかげで自分たちは毎日飯を食っていけてるんだと先生たちに頭の片隅に置いていてほしいだけのことである。
結論を言おう。
なんで先生が教科書やら何やらを授業のときに忘れたときはヘラヘラしながら「ごめん、教科書忘れたから取ってくるわ」とか言って生徒たちの有無を言わせる前に教科書を取りに行けるのに、生徒が授業のときに教科書をロッカーに忘れたときは「教科書は授業前に準備しておくものでしょうが! お前は授業を舐めてんのか!」と言われなければならないのでしょう……?
俺からすると、「いや……あなたも前回の授業のときに教科書持ってくるの忘れとったやん。あんたこそ授業を舐めとんのか!?」と言いたいところである。
ごめんなさい……今度こそ結論を言います。
自分ができないことを他人にできるように強要するのは筋違いじゃあーりませんか? ということを今回僕は言いたかったのです。
んー、やっぱこれ結論になってないかなー?
というか、これ俺にも当てはまるくない?
自分で自分のことを叱ってる気分になってきた。
これは懺悔とか自分への戒めの言葉ではないでしょうか。
もういいや。
はーい、もう僕からのお話は以上でーす。
みんなかいさーん。
それはそうと、あの人たしかクラス委員長とかだった気がするよ。
頭良さそう、プライド高そう、俺からのメッセージガン無視かましそうの3Kを田辺さんは兼ね揃えているような気がする。
いやだー、こわすぎー。
あと一個もKという頭文字含んでないんですけど。数字しか合ってないじゃん。
閑話休題。
このまま田辺さんの単語帳を俺がずっと持っているわけにもいかないし、田辺さんに連絡するしかないね。
待てよ。次の英語の授業いつだったかな。
まあ、どうせ早くても週明けの月曜日じゃないと渡せないんだから連絡しなくてもいっか。
でも、もしかしたらちょうど今、英単語帳がないことに気づいて不安に思ったりしているかもしれないし、最悪の場合再購入を検討している可能性も否定しきれない。
そうなると一分一秒でも早く田辺さんに単語帳の居所を連絡したほうが、彼女も安心して夜もぐっすり眠れることだろう。
俺はすぐさまベッドにダイブ。
スマホを手に取り、メッセージアプリのクラスの人たちが入っているグループの一覧表に移る。
俺はその画面をスクロールして田辺さんの名前を探し出す。
そして俺は一分も立たぬうちに『田辺 果歩』とまんま書いてあるプロフィールを見つけた。
絶対これじゃん。
正直わかりやすくて助かる。
ほら、たまにいるじゃない? プロフィール名前しか書いてなかったりして「あっれー、俺こいつのこと苗字でしか読んだことないから下の名前わからないんですけど」とか、たとえフルネームを知っていたとしても漢字で書かれてたりするとわからないときとか。
ましてやプロフィール名が名前の原型とどめてないときとか。
ちなみに、田辺さんのアイコンの絵はマグカップにコーヒー? か何かが絶賛注がれている最中の写真だった。
ほう、なんか俺なんかが言うのも烏滸がましいが、あえて言うとしたら田辺さんらしい。
少なくとも俺が抱いている印象とは合致している。
では、いざ出陣。
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二作目連載作品
『いじめられていた私がJKデビューをしたら同じクラスの男の子から告白された件。でも、ごめんね。』
https://kakuyomu.jp/works/16817330654542983839
↑こちらも是非ともよろしくお願いいたします。
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