18.茅野椿の独白

 私は窓を開ける。


 自室に風が吹き寄せる。


 半袖一枚で過ごすのにはかなり肌寒い季節になっていた。


 あれから一ヶ月、私と日方ひ かた は全くメールのやり取りをしてないどころか、学校でもクラスが違うから全く話をしていない。


 だから近頃は、お互いに全く顔を合わせていないのである。


「悲しいな……。せっかく日方には告白に近いことをしてしまったのに」


 そう、私は一ヶ月以上も前に日方に『私はあなたのことが好き……だと思う』と彼本人に言ってしまっていたのである。


 やっぱり告白紛いのことをしてしまったのが悪かったのだろうか……。


 しかも私には浅間京介あさま きょうすけという名の彼氏がいる。


 私は今浅間京介と日方総司二人の男子をに好きになってしまっているのである。


 私はわかっている。決してわかっていないわけではない。二人の男子を同時期に好きでいるなんて人として最低だ。


 わかっている、わかっているの。


 でも、感情には抗えない。


 いいや、恐らく違う。


 私はもう浅間あさ ま のことを好きでもなんでもない。


 私は日方を一年の時からずっと好きだったのかもしれない。


 浅間のことは元々好きでも何でもなかったのかもしれない。


 私の勘違いだったのかも……自分を騙したかっただけの可能性もあるかも。


 実は案外私は一途なタイプだったのかもしれない。


 とにかく、私は選ばなければならない。


 どうするべきか。


 自分ではわからないけれど、かなりか細い声だったと思う。


「ごめんなさい。皆を巻き込んでしまって。振り回してしまって……」


 いくら懺悔しても報われることはないだろう。


 そもそも浅間のことを好きかどうかわからなくなった時点で、私は浅間と別れなければならなかったの。


 私と浅間はすでに、いや、最初から純粋な恋人同士ではなかったのかもしれない。


 でも、考えてもみてほしい。


 私がこんなことを言う立場ではないのは分かっているが、あえて言いたい。


「世の中の全てのカップル」は本当にお互いがお互い同士を好きで付き合っているのだろうか?


 恐らく、そんなことはないと思う……。


 私も高校生だ。


「お前はまだ高校生だ」なんて言う人もいるかもしれない。


 でも私にとってはもう……、既に……なのだ。


 私は未来で生きることはできない。


 だから、常に私が生きているこの世界は更新されていてそれは最新なのだ。


 それも相まって私は未来の自分……、自分が大学生の姿、社会人になる姿、あるいは誰かと結婚して幸せな家庭を築く姿、「それら全てを想像すること」しかできない。


 自分の実際の姿を観測することができない。


 ただ、現在から過去を思い出し、「あの時はまだ中学生だったな」と言うことはできる。


 だから将来「あの時は私、まだ高校生だったな」と言う日がいつか来るかもしれない。


 その時に初めて私は「まだ」という言葉を使うことができると思う。


 話を戻そう。


 私はもう高校生だ。


 全てのことを知っているとは言わない。


 でも、ある程度のことは知っていると言ってもいいと思う。


 私は世の中全てのカップルが純粋な気持ちで付き合っているとは到底思えない。


 私がみなに問いたいことはただ一つ。


 果たして……本当に……好きでない人と付き合うのは悪になり得るのだろうか?


 それは本当にあってはならないことなのだろうか?


 それが悪にならない場合はどのようなときだろうか?


 その答えは、すでに高校生の私なら理解することができるだろうか。


 高校生の私なら、自ら答えを導き出すことができるだろうか……。

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二作目連載作品

『いじめられていた私がJKデビューをしたら同じクラスの男の子から告白された件。でも、ごめんね。』

https://kakuyomu.jp/works/16817330654542983839


↑こちらも是非ともよろしくお願いいたします。

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