部活終わり 2
「あんたずっと引きずってたのにそんなあっさり決めちゃっていいの?あんたにとってその程度だったの?わざわざ気を遣ってたこっちが馬鹿みたいじゃん!」
俺に対して突っかかってくるのもチサキなりの気遣いと思えば、チサキが声を荒げるのもわかる。ここまで真剣に考えてくれたのは嬉しかったが、それよりも申し訳なく感じる。
「そういうわけじゃ……いや、そう思われても仕方ないよな。あんだけ落ち込んでたくせに、都合が良すぎるよな。ごめん。でも俺なりにちゃんと考えて決めて、シオリもそれを理解してくれてるんだ」
「コウタ君は何も悪くないよ」シオリが俺の手を優しく握った。
「ていうか綾城さんでいいの?本人の前で言うのもアレだけど、綾城さんモテるし、長く続かないと思う。そうなるとまた同じことになるんじゃないの?大体あんたと綾城さんが相性良いとは思えない。あんたはもっと……フランクな関係っていうか……なんでも言い合えるような人の方がお似合いなんじゃないの?……例えば……わた……とか……」
チサキの言っていることは俺も考えたことがあって、今も多少なりと不安はある。実際俺よりいい男はこの世にはごまんといて、シオリはその中からより自分の好みに合った人を選ぶことができる立場だろう。一方で俺は選べるはずもなく、自分が好きになった人と両思いになるというのはとても低い確率だ。だから『俺を好きな人が好き』という気持ちが強くなり、今となっては人間関係を築くうえで核となっている。
「コウタ君を心配する気持ちはわかるけど、それはちょっと失礼じゃないかな。私をコロコロ好きな人変える安い女と一緒にしないでほしい。誰になんと言われようと、私はコウタ君一筋だよ。それに、まだ付き合い始めたばかりだけど、もうわかったの。私たち相性良いんだなって。きっと私以上にお似合いな人なんていないよ」
自分に自信がなくて言えなかったことを、シオリが代わりに答えてくれた。本来は俺が「大丈夫」と迷いなく言わなければならないのに、なんとも情けない。
「綾城さんはコウタなんかでいいの?言っちゃ悪いけど綾城さんとコウタじゃ釣り合ってないと思う。綾城さんだったらもっとかっこいい人と付き合えるんじゃないの?ほら、よく一緒にいた瀬尻君だっけ?あの人とか仲良さそうだし、イケメンだし、お似合いなんじゃない?」
「コウタ君は誰よりもかっこいいし、仮に釣り合ってないとしたら私の方だよ。だから私がコウタ君に相応しい人になればなんの問題もないよね。まあ、そもそもそんなの関係なく付き合うけど。あと、コウタ君の前で誤解されるようなこと言わないでほしいなぁ。瀬尻君とはたまに話すけど、正直そこまで仲良くないよ?というか私はコウタ君以外の男の人に興味ないから」
「安心してね」と俺に顔を寄せるシオリに対して、誤解するはずもなかった。
「なんでコウタなの?今までそんな噂なかったじゃん……」
「そうね……今までこの気持ちはずっと閉じ込めてた。彼女がいるって知ってたから必死に押し殺してた。でも私はずっとコウタ君のことが好きだった。だから私の想いは誰よりも強いよ」
シオリが俺を好きになった理由。俺には心当たりがない。でもシオリがここまで俺を好きでいてくれるのだから、その理由を知れば俺も少しは自信を持てるだろうか。
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