昼休みの校舎横ベンチ 2
「シオリ?なんでここに?」
「なんでって、彼氏と一緒にご飯食べるのは普通だと思うんだけど」
シオリは当たり前のように俺とアンナの間の少ししかないスペースに割って入るように座った。強引な気もしたが、あまりにも自然に入ってきたので誰も何も言わなかった。
「むしろ彼女以外の人と二人でご飯食べてる方がどうかと思うなー」
「いや、これは違くて……」
「フフ……冗談よ。コウタ君と柴里さんがそういう関係じゃないのは知ってるよ」
そう言ってシオリはあどけない笑顔を振りまいていた。ちょうどシオリの話をしていたからか、隣のアンナはばつの悪そうな顔をしている。
「でもやっぱり彼女としては嫉妬しちゃうかな」
可愛らしく言っていたが、その言葉の裏に潜んだ意味をすぐに察した。微笑みながらも、じとっと俺を見つめるその目は口程に物を言っていた。
「そうだよな。悪かったよ。まだあんまり自覚が無くて」
仮にも俺とシオリは付き合っている。他の女の子と二人で弁当を食べていたら良く思わないのは当然だ。
「しょうがないから許してあげる。その代わり今度のデート楽しみにしてるね」
「デート……ってそんな約束してたっけ?」
「何言ってるの?毎週するよ?」
シオリの目には強い意思が宿っていた。
「お、おお、そうだな。まあ部活があるから毎週行けるかは置いといて、次のデートは何か考えとくよ」
「エヘヘ……楽しみだなー」
「……そういう関係だよ」
俺とシオリが話している横で、ぽつりとアンナが呟いた。
「……どうしたの?柴里さん」
「だから……私と伊坂っちはそういう関係だってこと」
「……ああ、さっきの言い方だと語弊があるよね。ごめんね、二人は友達だもんね」
「……違うよ……私と伊坂っちはそれ以上の関係だもん……少なくとも私はそう思ってる」
雲行きの怪しいアンナの発言を聞いて咄嗟にシオリの顔を窺う。シオリの表情はまだ穏やかではあったが、目が冷気を帯びていくように思えた。
アンナの言っていることはあながち間違いではないが、誤解を招くかもしれないのですかさず訂正しようとする。
「えっと、あれだよな?俺たち―――」
「コウタ君はちょっと黙ってて」
シオリは笑顔で言っていたが目は笑っていなかった。そんな彼女を前に続けるなどできるわけなく、俺は反射的にすぐに口を閉じてしまった。
「で、どういうことかな?」
アンナは大きく息を吸った。吸われた空気は次に何か大事な言葉となって返ってくるような気がした。そしてその予感は的中する。
「私は伊坂っちのことが好き……ずっと好きだったのに……いきなり出てきた綾城さんにとられるなんて認めないんだから!」
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