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私はベンチに腰かけると、渡されたティッシュで、ちーんっ! と勢いよく鼻をかんだ。そうして、うっ、うっ、としゃくりあげながら、未だに、ぼたぼたと涙が出る目を擦った。
「ちょっとコケたくらいで、何もそこまで泣く必要もないだろうが」
「だって、だって、なんでよりにもよって、か、河村さんが助けてくれるんですか……」
ほんと、私の恋心(きもち)をどうしてくれるんですか、とは言わなかった。
「悪かったな。助けたのが俺で。白馬の王子様でも期待してたなら、少女マンガの読み過ぎだ」
残念。その“白馬の王子様”があなたなのですよ。いつも憎まれ口のくせに、助けてほしいと思ったときには必ず現れて、それこそ少女マンガの世界だ。反則過ぎる。こんな状況で、この黒王子を好きにならない主人公かいるだろうか。けれど、彼には既に将来を共にすると決めたお姫さまがいるわけで。ああ、神様、本当に酷過ぎます。
「……、これで、私の人生が終わりました」
「もう敢えて言い返さないが、そこまで言えるお前って、やっぱ凄いな」
「うう、か、河村さんのばかぁ……ああ……」
はいはい、と河村さんは半ば呆れたように言う。
「分かったから、そんなに泣いてたら脱水症状になるぞ。ほれ」
ぴとん、と頬っぺたに冷たいポカリが当てられる。
ああ、ほら、また、そんなことするし……。
腰を丸めて泣きじゃくる私の傍に、彼は今日もずっとついていてくれた。
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