第9話 [冒険者の1歩]
ギルドを出ると、出て直ぐの店でお茶を飲みながら雑誌を読んでいた。レイ達がギルドから出てきたことを確認するとお会計を済ませて合流した。
「あら、その様子だと合格出来たみたいね」
レイ達はギルドカードをリザに見せてた。
「俺達はFランクだけど、そういえばリザさんってランクなんぼくらいなの?」
「私?私は今Aよ」
その言葉を聞くとレイ達は驚いていた。
「「え?A?すげぇ、、」」
「リザ凄いよ!私たちはまだFだよ。」
「いえいえ、全然凄くないですよ。私もAになったばかりですし、依頼を数こなしていけば勝手に上がりますからね。それより、、」
リザはレイ達のステータスを見て少し驚いたような呆れたような感じだった。
「まぁ、、なんとなく分かっていたけど、凄いステータスね、、」
「あれ?サナのステータスを見ても驚かないのか?」
ゼロがそう聞くと、リザはどうやら昔からサナのステータスは知っているようだった。
「さて、冒険者登録もできたことだし。お次は、、、」
「「クエスト!!」」
「ご飯、、?」
「サナ様は半分正解で、二人はハズレー」
「で?何するの?」という顔でリザに聞くと、サンドイッチを買ってるので食べながらランダさんのお店に行くらしい。そうしてレイ達4人はギルドから少し離れた場所にあるランダさんのお店へ足を進めた。
レイ達は目的地らしき場所に着くとそこには『ランダ商会』という看板が立てかけてある大きな建物に着いた。
「なぁ、もしかしてランダさんってスゲェことなのかな?」
「でも商会の名前に自分の名前が入ってるってことは一番偉いのかな?」
レイとゼロがそんな会話をしているとリザがその質問に答えた。
「『ランダ商会』ってのはこの大陸でかなり有名で大きな商会よ。貴方達、本当に超田舎者なのね。」
「おい、レイ言われてんぞw」
「え?俺かよ!完全にお前の事だろ!」
「は?俺は1日2冊くらい本とか読んでお前より世の中の知識ありますぅー!」
「いやいや、俺なんて1日に3冊とか読んでましたー!お前よりっ!1冊っ!多いっ!」
「あぁ?」
「あぁん?」
「あんた達何子供みたいな喧嘩してるのよっ!」
リザはレイとゼロの頭にゲンコツを入れて喧嘩をやめさせた。
外見から分かってはいたが中はかなり広かった。受付場所は6つもあり、そのすべての受付に列ができる程人がいた。
リザを先頭としてサナ、レイ、ゼロの順番でリザに付いていきリザは職員用の扉から奥へ進んだ。奥へ進むと武器庫のような場所へ着き、そこにはランダさんが待っていた。
「お?やっと来たか。その様子だと冒険者登録は終わったようだな。おめでとう、そして、、サナ様、、ご無事で何よりです」
「え、、あ、、、」
「ん?どいうことだ?何でランダさんはサナを知ってるんですか?」
「あぁ、それは私が説明するわ」
どうやらランダさん本人がサナの親父さんに昔世話になっていたらしく、リザからサナが攫われた事とそれを仕組んだのが身内である可能性が高いことを聞いてから、リザと一緒に サナの捜索をしていたらしい。リザが自由に各地を転々とできたのはランダさんの力があったからのようだ。
「それにしても、お前達よくサナ様を見つけて助け出してくれたな、ありがとう」
「いや、、俺はそんな、、」
「ま、コイツが一目惚れしただけなんだけどね」
レイは素直にお礼の言葉を受け取れなかったのは、ゼロが言う通りサナを助けようと思い行動した一番の理由は『一目惚れ』つまり自分の私欲のために助けたからだ。
「理由なんてどうでもいいさ、事実はお前たちがサナ様を助けたってことだけだよ、ただそれだで良いんだよ。ありがとうな」
「・・・はい」
「なぁそういえば何で俺達はここに呼ばれたんだ?まさかレイとかに礼を言うためだけなんて訳じゃなさそうだけど」
「そうね、そろそろ本題に入りましょうか」
どうやらランダはレイとゼロとサナに渡すものがあるらしい。ランダは一旦部屋の奥へ行くと台車に3つの細長い木箱と小さい箱を持ってきた。レイ、ゼロ、サナに木箱が配られ、小さい箱はレイに渡された。
「ほらっ、俺からの合格祝いだ。開けてみな」
箱を開けてみると、レイの箱には刀が入っており。ゼロの箱には短剣が2本。サナには杖のようなものが入っていた。
「おおおぉぉぉ!!刀だ!かっけぇぇ!!」
「おい!見ろよ!俺のは短剣が2つだぜ!かっけぇぇ、、」
「この杖、、綺麗、、素敵、、」
三人はそれぞれ大喜びしていた。
「「「ランダさんありがとうっ!」」」
「喜んでもらえて何よりだ。あ、あとレイ。これはお前宛にダレンさんからの預かり物だ」
「っ!?師匠から?」
そう言うとランダはレイに小さな箱を渡した。小さな箱を開けると、指輪が入っていた。
-----------------【レイ】----------------
「これって確か、、」
「それって師匠がいつも指につけてたやつじゃないか?」
ゼロが言う通りこの指輪は師匠がいつも身につけていた『空間拡張収納術』が付与されている指輪だ。
『空間拡張収納術』とは、物を自由に異空間に送ったり取り出したりすることができる、「四次元ポケ〇ト」のようなものだ。身につけると装着者は中に入っている物を知ることができる。
「え、何その凄い魔道具!私も各地で色んなものを見てきたけど、そんなものは初めて見たわ」
「で、レイその指輪の中には何が入ってたんだ?」
中には、パソコンを始めとした機械類や工具が一式、そして『黄色のクリスタル』が入っていた。流石にパソコンなどをここで出して散らかすわけにはいかなかったので、『黄色のクリスタル』を取り出した。
「黄色のクリスタル?感じからして、、雷か、、?」
「俺らのクリスタルとは違うみたいだな」
「ねぇ、詳しく知らないんだけどクリスタルって何なの?」
「綺麗、、」
リザとサナにはクリスタルの事はあまり詳しく話していなかった。
「あぁ、クリスタルってのは、、、」
ただ魔力が結晶化されたものは『魔石』なんて呼ばれたりもしているが、クリスタルは魔石よりも魔力密度が高い。クリスタルと言うのは、この世界のありとあらゆる物の生命エネルギーなどが魔力を帯びて結晶化したものだ。大体のクリスタルは、火、水、風、土、雷、の5元素のクリスタルが多い。魔石はただ魔力が集まって結晶化しただけのものであって中に何も宿っていない。
ちなみに俺が持っている赤いクリスタルは、『火のクリスタル』という火の力が宿ったクリスタルだ。ゼロは水の力が宿った「水のクリスタル」を持っている。
ちなみにこのクリスタルはアーマードに欠かせない重要アイテムだ。
「ほぉ~クリスタルじゃないか、珍しいな。魔石はよく見るがクリスタルは久しぶりにみたな」
「やっぱりクリスタルってレアなんですかね?」
何となくは分かっていたが少し気になったので聞いてみた。
「あぁ、魔石は鉱山などで採れるが、クリスタルは入手方法、生成条件が不明だからな。2,3度しか見たことないな。」
「それにしても師匠はなんでこんものを、、」
なんで雷のクリスタルを機械類と一緒に入れていたのか気になったが、指輪の中の機械の中に『蓄電器』があったことを思い出した。
「あ、これで自家発電しろってことか、、、」
「あー、なるほどな。この大陸じゃ科学文明の、、電気は無いもんな」
「ん?何言ってるの貴方達、電気がない?現にここ電気ついてるじゃない?」
「「え?」」
そう言われて見渡すと天井には電球がぶら下がったり、パソコンが置かれたりしていた。
「え?だって、、魔法の大陸であるここの人たちは科学を嫌って科学を大陸内に入れることを制限してるから、科学文明がある場所なんて限られてるはずだろ?」
「あんた達、どんだけ大昔の話をしてるのよ、、まぁ確かに、未だ科学を嫌って科学文明を入れないようにしている村とかはあるけど、今では普通に科学文明は普及してるわ」
そのことを聞いた俺とゼロは「マジかよ」という顔をしていた。
「なぁ、レイ、、、俺達、、世間の事知らなさ過ぎたんだな、、、」
「あぁ、、、」
レイとゼロも驚いていたが、それ以上にサナ、リザさん、ランダさんは『どんだけ田舎人だったんだ、、』とでも思っているような顔をしていた。
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レイ達はランダから送り物を受け取りランダ商会を出て再びギルドへ向かった。
レイ達はこれから初めての依頼を受けるためにギルドの中へ入った。中に入ると肩に刺が付いた服を着ている人や、ナイフを舐めている人、見るからにガラの悪そうな人達がレイ達をニヤニヤしながら見ていた。レイ達は警戒しながら受付の方へ移動していたが、身長2メートルほどあるガラの悪い大男がレイ達の前を塞いだ。
「おい、お前達が新しく冒険者になった新人達だろ?」
「あぁ、そうだが。何か用か?」
レイは警戒しつつ会話をし、ゼロとリザもいつでも動けるように構えつつ警戒して、サナは震えてリザの後ろに隠れていた。
「俺の名前は『レック』だ。ここのギルドにはかなり前からいる。つまりお前達の先輩ってやつだ。」
「その先輩が新人の俺達に何の用だ?その感じだと、俺達に親切にしてくれたりするわけでも無さそうだが。」
「分かってるじゃねぇか。まぁ、なんだ、新人のお前達とコイツで少し遊んでやろうと思ってな。」
レックはそう言いつつ握った拳をこちらへチラつかせている。
「ただの遊びってわけじゃなさそうだが?遊びって何をするつもりだ?」
「あぁ、ただの遊びじゃねぇぜ?人生を掛けたゲームだ」
「断っても素直に通してくれなさそうだな」
「その通りだ。じゃ、早速始めるぞ!」
レックは拳上に上げ振り下ろした。レイとゼロは戦闘態勢に入り、警戒していたが、レックの拳からサイコロが落ちて地面を転がった。
「「「「え?」」」」
「くそっ!1かよ!えーと、1、、チッ『1回休み』かよ!さ、次はお前達の番だ」
レイ達はポカンと口を開けていた。
「え?人生を掛けた遊びって、、」
「あぁ?なんだお前達『人生ゲーム』を知らないのか?人生ゲームってのはな、このサイコロを、、」
「い、いや違う!こっちはてっきり戦うのかと、、」
「俺も、、」
「私もよ、、」
「いやいや、なんで戦うんだよ。そんな野蛮なことするわけないだろ、俺達をなんだと思ってるんだ」
レイ達は完全に戦いが始まるのかと思っていたが、どうやらレックはただ人生ゲームをやろうとしていただけだった。だた言動と見た目のせいで勘違いをしていただけだった。
「だって後ろの人ニヤニヤこっちを見てる人とか、ナイフ舐めてる人いるから、てっきりヤバイ事をしてる人達なのかと、、」
「ニヤニヤ?ナイフを舐める?あー、ニヤニヤしてる奴らは新人のやつらが緊張しないよう笑顔でいる奴らな、あとあれナイフじゃなくて、ナイフの見た目をした飴だ、ほらタバコの形したチョコレートがあるだろ?あれと似たようなもんだ」
「「「「・・・・・・・」」」」
なんて紛らわしい人達なんだとレイ達は思っていた。
「なんか、、あの一瞬で凄く疲れたな、、」
「あぁ、」
「紛らわしすぎるわ、、」
「コラッ、レックさんまた新人にちょっかい出してるんですか?」
受付のノエルが俺達の様子を見に来ていた。
「人聞きの悪いこと言わないでくれよ、俺はただ人生ゲームに誘っただけだぜ」
「いや、毎回言ってますけど言動と見た目のせいで完璧に危ないことをしようとしている風に聞こえますよ。ほらっ、この後仕事あるでしょ?行かなくていいんですか?」
「やべっ!そうだった! おい、新人っ!今日の所は勘弁してやる!次はお互いの命を削り合うゲーム(ババ抜き)を持ってきてやるからなっ!じゃっ」
そういうとレックは荷物を片付けてギルドから出て行った。
「すいませんね、皆悪い人じゃないんですよ?ただ、ちょっと紛らわしいだけで、、」
「確かに悪い人ではないってことは分かったんですけど、、凄く紛らわしかったです」
レイ達は凄い脱力感と共に受付カウンターに移動した。
「あー、なるほど依頼を受けに来たんですね。依頼の受け方は、、、」
ギルドで依頼を受ける場合、掲示板に張られている紙に依頼内容などが書かれてあり、自分が受けたい依頼の紙を取り受付カウンターに持っていくと受けることが出来る。ただし、依頼には条件というものがありランクが低いと高い難易度の依頼は受けることが出来ない。
レイ達は一通りの説明を受けた後、掲示板へ向かい依頼を探し始めた。
アーマーズ @TakamiyaRiku
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