最後は笑顔で 2

「ハナー?これはどこに仕舞えば良い?」


真司しんじさんの声が厨房の裏から聞こえる。


「あ、はーい。ちょっと待ってー」


声のした方へ、ハナちゃんがパタパタと走って行く。


今の声の主は、佐久間真司さくましんじさん。


ハナちゃんの恋人。


聞いてビックリで、実は一度付き合っていたみたいなんだけど、私がハナちゃんに初めて会った直前に別れていたらしい。


でも真司さんが「やっぱりハナしかいない!」って言って戻って来てくれたの。復縁、ってやつだね。


いや~、凄かったよ?


みんなでまったりコーヒー飲んでたら急にお店のドアがバーンッ!!って開いて、


『ハナ!やっぱり君が忘れられない!もう一度恋人にしてくれないか!?』


って真っ赤なバラの花束持った男の人が立ってたの。


最初、不審者か?とも思ったんだけど、ハナちゃんがカウンターから飛び出してその男の人にしがみついて


『このバカ!ずっと待ってた!!』


って泣き出しちゃって。


来ていたお客さんも、スタンディングオベーションよ。


その男の人が真司さんだったんだけど。


最初は雪ちゃんも、本当に大丈夫なのか凄く心配していた。


でもそれも、杞憂に終わったみたい。


こっちが恥ずかしくなる位ラブラブだからね。


チラッとハナちゃんを見る。


幸せそう。


『カラン……』と扉が開き、雪ちゃんが店内に入って来た。


「は~。お腹空いた~!」


そう言いながら、目の前のカウンター席に座る。


「もうすぐ出来るよ。コーヒーでも飲む?」


「いや、いいわ。お腹空いてるし、ご飯を先に食べたい」


雪ちゃんが、グゥ~~ッと鳴るお腹をさする。


「まーたあの二人はイチャイチャしてるのね」


ハナちゃんと真司さんのいる厨房裏をチラッと覗き込んで、呆れた様に言った。


「まあいいじゃない。幸せそうで」


「まーね。あ、そう言えば親父が、江奈は今度いつ来るのかって言ってた」


「そーなの?」


「うん。こないだ行った時に親父、江奈に完敗だったじゃない?あれが相当悔しかったみたいね」


「だってお父様、『遠慮はいらん!本気でかかって来い!』て仰るから……」


何の話をしているか。


実は私、将棋が得意で結構強い。


集中したい時とか無心になりたい時によくやっていたら、まあまあな腕前になっちゃって。


それをお父様に話したら、『一局手合わせ願いたい』って言われてね。


負けた方が良いのかな、とか考えていたら遠慮は無用、と言われたので本気で戦ったら私が勝っちゃって。


あ、お父様も弱いと言う訳ではなかったんだよ?


実際、私も何回か負けたし。


でも、私が勝ち越してるから闘争心にまだ火が付いているみたいだね。


「んー……じゃあ、今度のお休みは?」


「オッケー。じゃ、そう言っとく」


雪ちゃんが携帯を取り出し、メールで返信をし始める。


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