お誕生日会 2

「ハナちゃん!」


ハナちゃんは靴を履き終え、まさに玄関を出て行こうとしている所だった。


「ごめんね、なんか……」


せっかく招待したのにこんな事になってしまって、申し訳ない気持ちになって私はシュンとした。


「江奈っちのせいじゃないわよ。アイツが心狭すぎるの」


ポンポン……と、ハナちゃんの大きな手が私の頭を撫でる。


「……あの人のヤキモチ、並大抵じゃないけど愛想尽かさないでやって……雪ちゃんの事、幸せにしてやってね」


「ハナちゃん……」


あんな酷い態度を取られたのに、ハナちゃんは雪ちゃんの幸せをこんなにも願っている。


だから尚更、雪ちゃんのあの態度が悲しくなる。


私は、ハナちゃんを不安がらせない様に力強く頷いた。


「うん、よしっ!じゃ、帰るわね!お店にも、また来て頂戴よ♡」


「うん、必ず!」


じゃあね、と手をヒラヒラと振りながらハナちゃんは帰って行った。


パタン……と静かに閉まった玄関を暫く見つめる。


「ハナちゃん、ありがと。大好き……」


そう呟いて、リビングへと戻った。


相変わらず雪ちゃんは不貞腐れながらテレビを見ている。


いや、チャンネルをザッピングしているから、正確には見てないと思う。


私は雪ちゃんからリモコンを取り上げて、テレビの電源を切った。


「ゆ・き・ちゃん?」


私は眉間にシワを寄せ、めっ!と言う表情を作った。


「……だって、折角両想いになって二人きりで過ごせる最初の夜だったのに……」


雪ちゃんは、「アタシの方が怒ってる」と言う感じで頬を膨らませ、プイッ!とそっぽを向く。


「だからって、あの態度はないでしょう?ハナちゃん凄く心配していたし、もの凄く楽しみにしてたんだからね?今度会った時、ちゃんと謝らないと駄目だよ?」


私は、小さい子に言い聞かせる様に言った。


「……分かった。ごめんなさい」


唇を尖らせながら、小さく頷く。


……これ、雪ちゃんのクセ。


「よしっ!じゃ、パーティーの続きしよっか!」


まだちょっと不貞腐れている雪ちゃんの手を引っ張り、席に着かせ、グラスを持たせる。


「はい!改めて、退院&お誕生日おめでとう!」


「ありがとう」


チンッ♪と、涼しい音がグラスから響く。


「雪ちゃんの好きな物ばーっかりだからね!どんどん食べて!」


テーブルには、ズラッと雪ちゃんの好物ばかりが並べられている。


ハンバーグ・エビグラタン・ポテトサラダ・タマゴサンド・チーズケーキ、などなど。


「どうしてアタシの好きな物が分かったの?特に聞かれた事、ないと思うけど……」


「あ、それはハナちゃんに……」


と言って、あっ……と思った。


「ハナ?」


雪ちゃんが小首を傾げる。


ま、良いか。もう過ぎた事だし。


私はサプライズパーティーを計画していた事、全部を話した。

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