前世は猫でした。今世は異世界で冒険します!
青緑
私の前世では…
私は猫のミケ。生まれた頃は母と飼い猫としてヒトの家で住んでいた。乳離れした頃は餌をくれるヒトが毎日のように撫でてくれて嬉しかった!立てるようになると、母から私達の飼い主の動きで行動を左右することを教わり、叱られたら喉を鳴らすことを教わった。動き回れるようになったら、母から鼠の狩り方を教わった。この家は古く、母が子供(仔猫)の頃から居た事を知った。昔と変わらず、家には鼠が入り込むという。でも私が大きくなって母が年寄りとなった頃、飼い主は何か呟いたけれど私にヒトの言葉はよく分からない。
ある日、母と私はヒトが遠くまで行くのに使うクルマという自動車に乗せられた。出ようと思って身を捻ってもゲージが邪魔で出れない。母はイビキをかきながら眠っている。自動車の揺れが落ち着いた時、私達の入ったゲージを自動車から離れた場所に連れて来ると、餌をゲージ内に置いてくれた。私は母を起こして一緒に食べた。食べ終わった頃に気付いて前を向くと飼い主は居なかった!
私はゲージに向かって体当たりをすると、ゲージは簡単に開いた。母も驚いた様子で飼い主の臭いを嗅いで歩き続ける。でも私が最後に見た自動車の場所まで来ると、自動車なんて無かった。あるのは、黒い何かを引きずった跡があるだけだった。この時、母は言った。「私達は飼い主に棄てられた」と。私は信じずに何日も何日も待った。でも飼い主は戻らない。母は餌が無く、水もない状態で私よりも痩せていた。母を大きな木の根に寝かせて、苔に水滴を吸わせて母に飲ませた。でも母はそれから起きなかった。何度も水滴を吸わせた苔を口元に当てても、鼠を捕まえて持って来ても、もう二度と母は動かなかった!
私は木の根を掘って、母を埋めた。そして"母が安らかに眠りますように"と願って。
それから私はひたすら駆けた。開けた場所に出れば他の猫に会い、喧嘩をして縄張り内で勝つという事を、もう数えられない程に続けた!喧嘩をし続けて、気付いた頃には闘った何匹もの猫に慕われていた。そして私を筆頭に1つの群れが出来上がり、毎夜毎夜に群れから若い猫が複数来訪しては闘った。
そんな行動をしていると、群れのボスの座に収まった。そして5匹の仔猫を産んだ。その5匹が乳離れする頃から群れの決まりと、狩りの方法を教え続けた。そして5匹の我が仔が大人になるに連れて私も年を取っていった。それでも私は群れのボスの座を守り、死ぬその日まで群れも仔も育てた。そうして私は群れと仔から『ボス』と叫ばれながら、逝った!
私は死んだ筈なのに、白い部屋に立っていた。道のその先に黒い渦があった。でも、その先に向かおうとすると透明な壁にぶつかった。叩いても音は鳴らない。それを繰り返していると、首の後ろを誰かに摘まれた。爪で引っ掻こうとするが、その爪は空を切る。
「え?」
声が出た。私、猫なのに何で?死んだから、喋れるようになったの?っていうか…
「いつまで摘んでるんだい!」
「おお、済まなかった。なんだか面白くて面白くてのぉ。」
「ふん!…で、何の用だい。私は眠りたいんだかね!」
特に詫びもせずに、平然とした声が虚空から聞こえてきた。
「これはすいませんでした、あなたは死んでしまったようですよ?私は神という者です。」
「で?その神とやらが猫である私に何の用なんだい!」
「その…異世界で今度は猫ではなく、ヒトとして生きてみませんか?」
「いいよ。でも条件がある!」
「ええ、そうですよね。そう簡単に受け入られる訳がないですもんね…。って、良いんですか!?こういった時は大抵、拒否する方が多いのですが…。そうですか、では条件は何が良いですか?」
「簡単な話だよ。私がヒトになるなら、全種族の言語の会話と、ヒト以外の生き物を従える力を寄越しとくれ!」
「良いですが、ヒトが信用できませんか?ヒトという生き物はですね…」
「私はそのヒトに棄てられたんだけど、本気で言ってるなら、刻むよ!」
「ひぃ、すみませんでした!その条件を呑みますんで、引っ込めてください!」
この神とやら、ちょろくて弱っちいな。
「で…では、この扉を開けてください。あなたの来世が待ってますよ!あっ言い忘れていましたが、ヒトに転生する際には赤ん坊からですからね。」
「なんだと!!」
「それじゃあ、行ってらっしゃーい。」
それから先は言うまでもなく、目覚めると赤ん坊だった。そして私の顔を覗く2人の顔があった。彼らは私の親なのだろうと推測すると、ヒトの生活について考えを巡らせようとするが、赤ん坊の頭ではキツイらしく当分眠ってしまった。
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