サムハイン古代遺跡での戦闘
---サムハイン古代遺跡---
ルーツィア侵攻から8日後、2日前から今朝までの豪雨により河川が氾濫し敵の攻撃が中断され、ルーツィアの部隊は現在も防衛を継続していた。そして正午になり、空は嵐の後の晴天に包まれていた。
そして古代遺跡の前に何人かのヴァルキュリアがたむろしている。そこに一人馬に乗って誰かが欠けてくる。
「君がテミス族の代表かね。」ピアッツィが前から来るヴァルキリアに声をかける。彼の周りには10人ほどの親衛部隊がいる。
「はい。私がテミス族代表のシグルドリーヴァ騎兵部隊隊長のミネルバ=シグルドリーヴァです。首長様、本日はよろしくおねがいします。」
そう答えたのは、うすく水色に見える長髪のヴァルキュリアの女性だった。彼女は下馬すると少し深く頭を下げて挨拶をした。
「ミネルバか。レサーの娘さんか。よくぞ参った。 と言いたいがワシが自ら魔法陣を起動するというのに、テミス族は君一人しかよこさないのか。」
「申し訳ありません。我が部隊、我が族の首長は前線に出ておりますゆえ。」
「状況はあまり良くないか... すまぬことを聞いたな。」
ミネルバの言い訳は本当だが、理由はそれだけではない。テミス族(首長)は最初から古代遺跡のフィルギアに期待などしていないのだ。だから最低限の確認役をよこしたという訳だ。
「でみミネルバ。君も長居はしたくないだろう。はやく魔法陣を起動させよう。」
ピアッツィは古代遺跡のフィルギアを起動する準備に取り掛かる。もとい古代遺跡と言っても今は台座の部分が残っているだけで、発見当時はフィルギアの魔法陣も損傷が激しく形さえ確認できなかった。これを使用可能にまで修復したヴァルキュリアの魔法技術は素晴らしいものだ。
ピアッツィは親衛部隊に待機の指示を出した後、ふところから30cm程の魔法実験用の杖を取り出す。杖はコルダイテス(古代魔法木)で作られており、古代魔法陣を発動させるのに適した杖である。まるで金属のような質感の木材でありこの世の物とは思えない。
「首長様、とてもいい杖ですね。発掘品ですか?」
「うむ。そうだ。実はこの杖もこの古代遺跡から出土したものだ。まったく古代のテクノロジーには畏敬の念を抱くよ。」
ピアッツィは杖を確認するとフィルギアを発動させた。
「古代の魔法よ。その力を我の前に示し給え。ウォーディアン!!」
そうピアッツィが詠唱するとフィルギアの魔法陣が紫色に光りだした。
―――――5分ほどたっただろうか。魔法陣はまだ光ったままだ。
「首長様。長くはありませんか。」
「ワシも長いとは聞いていたがここまで長いか。」
すると突如として紫の光の強さがまして周囲を光が包み込んだ。
ピアッツィは冷静沈着にその年で考えられぬバックステップで後方へと下がり防御魔法を展開した。
「ピアセンジアン!」
薄い黄色の結界が、ミネルバと彼の前に展開される。
―――すると遺跡の台座の上に一人の人間が立っていた。
(召喚に成功した―――ミネルバは驚いていた。
ミネルバは言葉も出なかったが、ピアッツィは冷静だった。臨戦態勢となっていた親衛部隊に捕縛の司令を出した。
「あの者を召捕らえよ。」
その言葉に反応して親衛部隊が槍を構え、召喚された人間に近づく。
驚きで乱れた隊列をすぐに組み直して遺跡の階段を登っていく。
召喚された黒い長髪の女性はアワアワとしている。
目の前から自身をにらみつける白髪の戦士が近づいてきているからだ。
(やばい! なんか殺されそうになってませんか?!)
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