秘めた思い

Kolto

第1話



「よし、準備できた!出かけるか」


いつもより早く起きて夕食の支度を済ませたコルト

寝不足で目を擦りながら出かける準備にかかる



「ただいま〜!おはよう!コルト!」


「!?お、おはよう!白雪!あれ?今日は討伐任務があったんじゃないの…?」


「あ〜、それなんだけどね、人手が足りてた〜とか言われて無くなったの!ちゃんと確認してよねって感じ!」


そう口を尖らせてむくれる白雪


「?コルト朝からお出かけ?どこに行くの?」


「あぁ…えーっと、今日はグリダニアに用事があってね…」


挙動不審なコルトに眉をひそめる

明らかに様子がおかしいのだ


「…ふーん、私も一緒に行っていい?」


「あー、いや!今日は1人でやらなきゃいけない任務があって!白雪は家でゆっくりしてなよ!昨日プリン作っておいたんだ!おやつに食べな!」


「プリン!?」


そう目をキラキラ輝かせてコルトを見つめる

すぐにハッとして首をブンブン横に振る


「コホン…じゃ、じゃあ気を付けて行ってきてね?」


「あぁ、行ってくるよ」


そう言うとそそくさと家を出るコルト

絶対に怪しい

プリンを食べたいのをグッと堪え、気付かれないように尾行する事を決意した白雪


____________




(むむむ…)


コルトは害虫駆除の任務を普通にこなしている

イモムシ型のモンスターに青ざめているコルトを見るとちょっと可愛い…


彼はイモムシが特に苦手だ

なのにどうして害虫駆除なんかの依頼を受けているのか謎である




しばらくして任務が終わったようだ

様子を見る限り今日はこれだけらしい


しかしコルトは帰る方向とは違う方に歩いて行く


なんとなくだが嫌な予感がする



花屋の前に立ち止まるコルト

すると店員なのかミコッテ族の女性がコルトに話しかけている


(む…なんか親しげに話してるじゃん…全然会話聞こえないし…もぅ〜早く帰ってよ〜)


心の中で悶々とする白雪

それを更に加速させるように、ミコッテ族の女性はコルトにボディタッチをしている

コルトも笑みを浮かべていて楽しそうにしている


(〜ッ!!何してんの!?何でコルトにベタベタするの!?何でそんなに楽しそうなのよ!!)


今にも飛び出していきそうな気持ちを抑え、自分のこの感情にムカムカしながら見守る


何も買わずに花屋を後にするコルト


そのままラベンダーベッドの自分のアパルトメントに向かって行った


(どうして帰らないの…?)


変な汗が手のひらにじわっと広がる



_____________


少し時間が経ってさすがの白雪も疲れが出てきた


(…何してるんだろ私…。コルトも全然出てこないし…帰ってプリン食べようかな…)


そう思い帰ろうとすると、先程の花屋の女性が現れた


(!?)


心臓の音が相手に聞こえてしまいそうなぐらいうるさい


何か持っているように見えるがよく見えない


するとコルトが顔を覗かせ、2人は会話しながら部屋へ入っていった



「え…何…これ…?」


心臓の鼓動がうるさい

胸が苦しい

1粒の大きな涙が頬を伝う


「………ッ…!!」


涙を拭き、震えながら走ってコルトの自宅に戻った








________________




「ただいま…暗っ!白雪?居るのか?」


そう呼びかけながら部屋の明かりを付ける

すると部屋の隅に白雪が縮こまっていた

持っているものを急いでテーブルに置き、駆け寄った


「白雪!?どうした!?具合悪いのか?」


「…コルト…今日…何してたの…?」


「え…何って…グリダニアで依頼を…」


「その後!…その…ミコッテの女の人と…アパート行ったでしょ…」


「!…どうしてそれを?もしかして、ずっと見てたのか…?」


「ごめん…朝からコルトが変だったから…気になって…跡つけちゃった…私って本当に最低だよね…」


「…いや、不安にさせてごめんな。最低だなんて言わないで…」


優しくて暖かくて大きな手が白雪の頭に置かれ、撫でられる

この男は本当にずるい

いつも欲しい事を平然とやってくる


涙で真っ赤に腫れた目をした顔をあげる

困ったように微笑むコルト


優しく抱き寄せ優しく静かな声で囁く


「遅くなってごめん…こんな泣かせるつもりなかったんだけどな…」


そう言うとそっと離れ、テーブルに置いた小さな箱を取り白雪に渡した


「……?グスッ……何これ…?」


「白雪、誕生日おめでとう!コソコソしてて悪かった。プレゼント受け取ってくれるか?」


「!…そうだ…私、今日…誕生日だった」


「もしかして、自分の誕生日忘れてたのか?白雪らしいな」


そうクスクスと笑うと夕食の準備をし始めた


「白雪、今日の主役さんは席に座って待っててくれ!すぐに準備できるから」


「…いつも席に座って待ってるし」


ぼそっと呟きながら席に座る


「ねぇ、コルト、これ開けていい?早く見たいの!」


「あぁ、いいよ。気に入ってくれるといいけど」


箱を開けてみると小さな青い花のイヤリングが入っていた


「わぁ…可愛い!もしかして手作り!?」


「あぁ、手作り。変だったらごめんな」


「ううん!変じゃない!凄く可愛くて綺麗!ありがとうコルト!大事にする!!」


「気に入ってくれて良かったよ」


そう微笑みを向けてくれる


しかし疑問が残る

苦手な害虫駆除。花屋で何も買わず、しかもアパートに花屋の店員を連れ込んだ事


「どうして害虫駆除なんかやってたの?」


「あーそうだな…グリダニアに行くのに何か依頼があればって思ったんだけど、それしか無くてね…」


「…ふーん。それで…結局その…あの女の人何だったのよ…」


「え?あぁ、その花が欲しくて買いに行ったんだけど、入荷前だったらしくて、夕方頃に入荷されるって聞いたからさ」


「…え、じゃあアパートに呼んだのは…」


「店員さん親切でさ、入荷したらすぐに届けに来てくれるって言ってたから 頼んだんだよ」


「って事は…何も…?」


「?何もって何が?他に何かあるのか?」


白雪が自分が勘違いしていた事に気付き顔を真っ赤にする


「〜〜ッ!コ…コルトのバカーーー!!!!!」


「え!?何で!?俺そんなにバカなのか?」


「大バカよ!バカ!」


「ご、ごめん!ほら!ご飯できたよ!食べようか!」


「うぅ…食べる…」


(コルトに八つ当たりしてバカみたい…)


大好きなものばかりテーブルに並ぶ

本当にずるい男だ

何でも出来るくせに超絶鈍感で

本当にずるい


でも本当に幸せ


「コルト、ありがとう…」


「どういたしまして」


優しい笑顔で心が満たされていく


______________



夜が明けた次の日

酒を飲みすぎてだるい身体を起こし、白雪が寝ているベッドを見る

寝癖のついた髪

子どものようにすやすやと寝ている


「…無防備だな」


そう静かに呟くと

寝ている白雪の頬に優しくキスをした


「……う…んー…」

寝返りをする白雪

ハッして素早く離れた


「…!今俺…何を…!」


顔が熱い


「……飲みすぎだろ…クソ…」


_____________



眠い目を擦りながら朝ごはんの匂いにつられ起きる


「コルトぉ…おはよー…」


「おはよう!白雪!俺、明日からクガネで任務あるから、準備するのにちょっと出かけてくるから!ご飯作ったから食べな!」


「うん…わかった…」


「あ!イヤリング付けてくれたんだ!すごく似合ってる、可愛い。じゃあ、行ってきます!」


「…いってらっしゃ〜い…」


今日のご飯も美味しい

プロ並に美味しい料理

こんな美味しい料理を食べれるのは幸せだ


そう感じながらふと思う


(…この花の花言葉って何だろう…後で花屋さんに行って聞いてみようかな…)


食べ終わったものを片付け、出かける準備をした



______________




グリダニアの花屋

昨日の店員がいた

少し頬を赤くし、口を尖らせながら聞いてみる


「あの、すみません、この花の花言葉って分かりますか?」


「いらっしゃいませ!わぁ!可愛いイヤリングですね!それはワスレナグサと言う花ですね!花言葉は確か…『私を忘れないで』『真実の愛』!だったかしら?」


そう言うと店員はにっこり微笑んだ


白雪は一気に顔が赤くなった

湯気が出るのではないかと思うぐらいに熱い


「…あ、ありがとうございましたーー!!!」


「はーい!またのお越しを〜!」


逃げるように走った


(…もう!偶然…だよね!コルトってそういうの気にしない人だもんね!?でも…もう!バカ!!!)


心の中で叫ぶのであった



_______________



「…白雪可愛かったな。」


ぽつりと呟く


(…白雪は疎いだろうな…きっと分からないでいてくれるだろう…俺はそれでいい)


今朝の出来事を思い出し、口を腕で覆うと変な汗が出てきた


「…っあー…。ウルダハ暑いな!もう少し薄着してくれば良かった」


今日のウルダハはやけに暑い







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