28 胚:Embryo
「えっと……なンだ……陣笠の旦那が人間じゃねえってのは、そこはまあ良いとしてだ」
『そこはいいんだ?』
「あ? まあソレは別に良いだろ、旦那がウチの組を救ってくれたことには変わりねえ。人間じゃねえから仁義は要らねえなんて話はねえンよ」
そんなことを言う
「面白い考え方をする男だな」
「トバ組はスクリームフィストが作った
『いや気にするけど。っていうか
「いやいや、
実際問題、
例の“突然斬れる攻撃”を使えば、
それに
「で、そこはまあ良いとして?」
どうやらむこうも、
「いやなに……アンタが陣笠の旦那の“母親”だってのが、驚きだってだけの話さ」
「どうしてそう思う?
「ならやっぱり“繋がり”みたいなもんはあるんだろ? あー、
『脳の記憶に関するシナプス配列よ』
「そいつは
彼女は捉えどころのない感情を持て余しているようだった。
そしてすこし思案した後、改めて宣言した。
「――だけど、仮に私の子だったとして……それでも、
そう言って、
「ああ……何となくだが、俺の、この感情に合点がいったぜ……」
『
「急いでくれよ、
ニュートウキョウのサラリーマンの仕立てとは違う、
「あンたが陣笠の旦那の親ってんなら、手を出すのははばかられたンだが……」
「
刀身が自分の身体の延長のように感じるのは、
得体は知れなかろうが、役に立つものは使うのが
その切っ先の感覚で殺気を探り、間合いを測る。
ゆっくりと間合いを詰めていく。
その最中で、
物ではなく、センサ・ネット側にある、何か。
脳裏に、データの海を切り裂いてくるモノのビジョンが浮かび、咄嗟に
――ギィィィンッ!
と、あの音が響いた。
白く具現化した
それを見て、
「なるほど? これは……糸か……あー、なんつったか?」
『
「それだ」
『いや、あれは両手に持って巻き付けて使う暗殺用のもので、
「ふむ?」
それを聞いて、もう一度、
再び、粒子センサ・ネットワーク側の情報レイヤーで、朝比奈の剣の切っ先が辛うじて検知できるほど、捉えづらい斬撃。
それをアドリブで斬り払う。
「いや、その
「遠からず、と言ったところね……まあ辛うじて扱えている程度なのよ。私には
スピンドルの殺戮人形ことマキシの腕を切り落とせるようなモノが、辛うじてなら、デーモンAIがどういうレベルのものなのか、
だいたい、世界最高と評された
「少なくとも……あンたに使えるぐらいのモノなんだろう? わざわざ陣笠の旦那を犠牲にして、こんな大げさな方法でニュートウキョウにばら撒かなくても、カドクラの新製品として売りだしゃ良いンじゃあねえのかい?」
そう言うと、
それはどうも
こういうタイプは金貸しにも居るが、妙な気に入られ方をしているな、と
「勘違いしているようだが、デーモンAIはそんな都合のいい代物ではないよ」
「どういうこった」
「さっきも言ったとおり、デーモンAIは宿主のパーソナルと
そう言って、
「――例えば
「俺も似たような状況ってことなンだよな? そいつはどうなるんだ?」
黄金の骨で繋がった光剣の柄を突き出しながら聞く。
すでに助けられているようなものだし、長年愛用した
「自我……或いは精神と呼ばれるものがデーモンと融合……確実に分かっていることは、肉体の主導権をデーモンに乗っ取られる」
「陣笠の旦那は今、そんなあぶねーもんをセンサ・ネットに垂れ流してるってことか?」
「そういう事だ。お前も精々、その剣に宿ったデーモンが、自分の手に負えるものであることを祈るんだな」
「おいおい……冗談じゃねえぞ、
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