ACT.3
18 不時着:Emergency Landing
再び時間は遡り、マキシの【
コックピットから黒煙を上げ、ゆっくりと墜落しつつあるエア・ビークルの中、ヴァレリィが
その隣の
――あの蜘蛛のデーモンAIの本体の方なんか? でもそれなら、わざわざ
そもそも俺や
それよりも、謎の光線の出処を思案していた。
あれだけの火力は無視できない。それにあの尋常ならざる出力は、危機管理以上にその正体も気になるところだった。
「どこから撃たれた?」
「左前方の受信施設の袂からです。エア・ビークルの装甲と
そう伝えると、ヴァレリィが両掌を持ち上げる仕草と、困った顔をして見せた。
まあたしかに、墜落しかけのエア・ビークルの中で、その強力な装甲と
並の
「高出力の対空砲に警戒と言ってもな……なら、地上に伏せて置いた部隊を向かわせよう。装甲を貫通してくるような
そこはやはり
歳もかなり行っているようだし、軍人、しかも指揮官の経験もありそうだった。ただのボディガードではないという事か。
彼の心配事は、
「
「出来るか?」
「ぶっつけですけど、無理やり減速と軌道修正ってとこですね。余剰な
【
エア・ビークルは、なんとか不時着出来そうな速度まで減速している。
「社長?」
「問題ないよ。任せよう」
グラグラと安定しないエア・ビークル。ヴァレリィは気にしているが、
ミサイルに
――肝が据わっているとか、たぶん、そういう次元じゃないよなこの人……
何か胎に一物ありそうではあるが、仮にも天下の
そんなことを考えつつも、
「不時着します、衝撃に備えて」
ランディング・ギアにも
山の中だがマイクロ波受信施設のお陰で、下生えばかりが生えた十分なスペースがあったのは不幸中の幸いだ。
エア・ビークルが接地したのを確認してから、姿勢制御に使っていたセンサ・ネットの出力を制動へ回す。急ブレーキ。
それでもコンテナ・トラック並のサイズと、それの倍する質量があるエア・ビークルを完全に制動することは出来ず、原っぱを滑ってその先、マイクロ波受信施設の外壁に突っ込んでようやく止まった。
「ふう……大丈夫ですか?」
「ああ、問題ない。よくやってくれた」
かなりの衝撃だった筈だが元軍人のヴァレリィはともかく、
「社長は、そのまま中で」
ヴァレリィが備え付けのアサルト・ライフルを構えて、一足先に斥候に出る。
瓦礫を遮蔽にして周辺を警戒。軍人らしい動きだ。
「バックアップの
「敵は二人、内一人をクロハバキが抑えているが、もう一人がここへ向かっている」
「あの出力の
「怪しいな。ユーヴィ・クランシーズが相当な数のスリーパー・エージェントを仕込んでいたらしい。山の中に配置していた部隊は殆ど身動きが取れていない。社外
「居ないが、何です?」
収納状態では五十センチほどの柄だけだが、スイッチを入れると両端が伸び、一気に六尺――約一メートル八十センチの棒になった。
伸縮するために中空で、このまま殴れば簡単にへし折れるような強度だが、
「駄目みたいだな……足止めの一人を仕留めきれずにいるらしい。援護はあてには出来ないようだ――しかし、クロハバキ
「難儀な……どんな相手なんです?」
「
「――……は?」
――いや、まさかね。
「まさか今時、サムライなんてのが“まだ”居るなんてな。俺も驚いている――
その時、木々の間を縫って、原っぱのど真ん中に白い影が舞い降りた。
白い猫耳アンプの付いた流行のパーカーは今時のストリート・チルドレンといった風情だが、艶めかしく降ろされたジッパーの中に潜んでいた身体は、レオタードに包まれた美しい白銀。
――
「ありがとう、
その
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