15 カーチェイス:Car Chase
マキシが
「
一般車両を挟んで後方に三台、箱乗りしてサブマシンガンを担ぎだしている。
乗っている車両も企業の使うような継ぎ目のない綺麗な装甲面ではなく、リベットで後付けした現地改修の風情をしている。
どうやら同業のようだ。
『首都高を根城にしているチーム・ラグーンって
「俺と同じクライアントから依頼を受けた口か」
『そのクライアント、ずっとマキシちゃんの位置を追跡していることになるわね。さっき
「サイボーグの嬢ちゃん!」
「え、何? ボク? 戦闘中は名前で呼んで、紛らわしい」
丁度、二機目の
再び、ドローンが爆発し、炎と煙の華が咲く。爆発に煽られた一般車両がハンドルを切り損ねて、防音壁に激突していた。
「わかったよ。それでマキシの嬢ちゃん、お前さん、ずっと追跡されてる臭いが、なンか心当たりはあるか?」
「スピンドルへの位置情報送信は切ってあるし、
ドローンが
逃げる
「
『それは間違いないわよ。私も調べたもの』
そう聞いて、
「なるほどな」
一人納得して、
「きゃッ! ちょっと
「こんな切羽詰まってる時に、サイテーっスね
『何やってるのよ
三者三様に攻め立てられる。黙っているとまた
「まてまてまて、落ち着けお前ら。こいつだよ、
「一体どこで付けられた?」
マキシが一瞬呆けた隙に、三機目の
アスファルトを散らしながら掃射された銃弾が迫る。
銃撃の車線上に居た一般車が、巻き込まれて蜂の巣にされるのが見えた。
「マキシさん!」
狙いを絞らせないために、ハンドルを切ってロードビーストを蛇行させながら
――キィンッ!
揺れる車上でも、マキシの銃は正確にドローンを撃ち抜く。だが蛇行した減速に合わせて、今度はチーム・ラグーンの三台が一気に寄せてきた。
サブマシンガンの射程に入ったのか、乱射された銃弾がマキノ・ロードビーストの装甲を跳弾。火花が散る。
「こんな連中に時間食ってる暇もねえ。
――バキンッ! と金属質な音を立てて、蜘蛛のデーモンAIを握り潰しながら、
『ちょっと本気なの
「
金髪をかき上げ、サングラスを掛けなおす。
察した
「今っス」
「いい腕だ」
扉を開け放ち、トレンチコートを舞わせながら
「てめえ、
サブマシンガンを振り回して、助手席の男が叫ぶ。
そいつが銃口をこちらに向けるよりも早く、光刃が横一線に走り、運転手もろともに撫で斬り。
「人のこと、ダッセエあだ名で呼ぶンじゃないよ」
横に裂かれたフロントガラスが、男二人分の胸から噴き出した血飛沫で染まる。
ドローンを操作していたと思しき、
「嬢ちゃんの言う通り、
『
「まあ、慣れりゃ、なんとかなンよ」
運転手を失った車が、よたよたとガードレールに高速道路の壁に突っ込むよりも早く、
「あれは、
「なんですって?」
正解だ。
「てめえ、
天井を開けて身を乗り出し、着地を狙って構えられたサブマシンガンを構えた男。それを着地前に腕ごと斬り飛ばした。
そのまま、車の天井もろとも、運転手を十文字にブツ斬り。
今日の
「このまま三台目を始末したら、後は
『そう巧く行くかしらね』
「そうは言っても
そう言って再び、強化した脚で三台目に飛び移ろうとした瞬間――キィンッ! という例の音と、光線のような弾道が奔る。
そいつがエンジンブロックを貫通すると、チーム・ラグーンの三台目はフロントバンパーを巨人に蹴り上げられたように吹き飛び、後続の一般車でバウンド、そこから更に道で跳ねた後、高速道路の下へと消えていった。
「おいおい……無茶しやがって」
ぶつかったところで、大昔のガソリン車のように爆発炎上はしないが、巧いこと飛び降りないと【
そんなことを考えていると、今度は――シャアッ! とワイヤーの擦れる音がして、首根っこを引っ掴まれた。
「逃がさないよ、
「嬢ちゃんに比べれば、俺なんざ頭数にも入らンだろう……」
「デーモンAIを使う
「滅相もねえンよ」
結局、首根っこを引っ掴まれ、力なく車内に引きずりこまれた。
逃げるのを諦めて、髪を整えるのにサングラスを外した
「
「
サングラスを掛けなおし、HUD越しにエア・ビークルを見る
映像と位置情報はすでに
「
『当りよ。アルテミス・ワークス社のエア・ビークル』
「当たりだそうだ」
「
「了解っスよ」
巻き添えの車両の残骸と死体があちこちに散らばる大惨事のカーチェイス会場を置き去りに、
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