第5話 アブノーマルで何が悪い! ACT 5
「ちょっと待った―!!」
「そこって私が行っている高校だって知っていたの?」
みかんは表情を変えずきっぱりと言う。
「いや、単なる偶然」
ぐ、偶然てそんなことってあるの?
「嘘でしょ?」
疑惑の目……。
「マジ本当にりんごがいる学校だなんて、俺知らなったんだよ。だってさっきも、りんごだって気づかないくらいなんだから」
確かにみかんの言っていることは真実かもしれない。
私が通っている高校だと知っていれば、当然私の事知っているはずだし、私がからまれている時だって、「妹?」知ってたら妹だっていうって言ってたじゃない。本当に知らなかったんだ。
うちの学校の教師。臨時教員。……じっと、みかんの顔を見つめた。
「な、なんだよ。睨むなよ」
「睨んでなんかいないわよ」
「じゃぁ、何でこっち見てんだよ」
「な、何となく」
う―――――ん。このみかんの容姿。こりゃ、うちの女子どもが騒ぎだすな。
「ところでさぁ、みかんて女性拒否症だって言ってたけど、どの程度女の人が駄目なの?」
事前情報をかき集めておかないと、多分何かが起きそうな気がする。
中にはすぐ手を出すやり魔もいるからなぁ。
それにうちの学校数年前まで女子高だったから、女子の比率が高い。
男子もいるにはいるけど、男くさい感じの男子が少ないのが……。いやいや、いるわなぁ。ま、男なら問題ないとして、本当にやって行けるのかなぁ。女はエグイよ。見た目でごまかされちゃすぐにやられちゃうよ。
ま、その点、私は2次元男子しか好きになれないから問題ないんだけど。
「で、どうなの? みかん。もしかして触られるのも嫌なの?」
「女ねぇ、別に話したり、触られたりするのはなんともねぇんだけど」
ふむふむ。完璧なる拒否症ていうかアレルギー的なものはないんだ。
「ただ……」
「ただどうしたの?」
「まったく、興味がねぇ」
「へっ? 興味がないって。それって異性に興味がないって言う事?」
「どうとられてもいいんだけど」
――――――ってことはさぁ。もしかして、みかんって……男が好き? ……同性愛者。BL……の世界
キャぁ―――――うそうそ。マジなのぉ!!
えへへへへへぇ。じゅる。
「き、気持ちわりなぁ。締まりのねぇニまぁ―とした顔して、よだれ垂らすんじゃねぇよ」
えっ、私そんな顔してたん。
我に返って「それじゃみかんって男が好きなの?」直球ジャブ。
直球すぎたかなぁ。
「べ、別に……。そ、そう言う……。訳じゃねぇけど。近寄ってくるのが男だけだって言うか……。その方が楽だって言うか。……そのなんだ。そう言う事なんだ」
うううう。顔真っ赤にしちゃって。意外と恥ずかしがり屋なんだ。
でもこれ絶対に脈あり。
えへへへへ。もしかして現実BLの世界がまじかに来ちゃったぁ!
見るのはいいんだよ。こっそりと覗くのがいいんだよ。
ふすまの隙間から覗き見るのが好きなんだ。
「あのぉ―。二人の世界が出来ちゃってるようだけど、私の事も忘れないでね」
突如に割り込む母上様。
そうかいたのか、すっかり存在を忘れていたよ。ニコニコしながら私たちの会話を聞いていたのか。なんかちょっと恥ずかしい。
実の母上とはいえ、なんか自分の性癖をほじられるのは恥ずかしい。
一度ほじられると、とことん突いてくるところが、母上様のいけないところ。
ま、それに付き合う私もどうかと思うんだけど。
これに今日からみかんが加わるのか。ん――――みかん、うちに馴染めるかなぁ。
私たち結構エグイよ。
親子なんだけど、その枠はもうとっくに飛び越えちゃっているからね。
ま、母上様の仕事が官能小説家と言うのが原因? いやいや、たぶんこの人は素が根っからスケベなだけなんだよ。
「ねぇねぇ、みかん君って女に興味がないって言ってたけど、同性とはもう経験済みなの?」
お、おい母上様。あなたそれデッドボールじゃないの?
「ぐっ! ゴホゴホ」
あっ! みかんが咽た。
「うううううううううううううっ」
はっは、顔が青くなってる。……て、喉に詰まらせてるんじゃん。
「あらあら、大変。はい、みかん君お茶」
麦茶を一気に喉に押し込むように流し込む。
ううううううっ―――――ごっくん! 「はぁ―」深いため息をしてみかんは顔を上げ。
「奈々枝さん。俺ボクシングやってるの知ってますよね」
へぇ―、みかんボクシングやってんだ。どうりであの腹筋? でもさぁ、あの時どうしてやられっぱなしだったんだろう。
「うんうん知ってるよ。ねぇさんから訊いてんだ。みかん君結構有名人なんだよね」
「え――――っと。有名人かどうかは俺自体は良くわかねぇんだけど。たぶん名前は業界じゃそれとなく知っている人は多いんじゃないのかなぁ」
「まぁ謙遜しちゃって。ねぇさんから訊いたわよ。プロテスト合格してたんだって。それなのにどうして教師の道なんか選んじゃったのよ。もったいない。みかん君位イケメンさんだったら、ボクシングから芸能デビューも出来ちゃうんじゃない」
「それ! そこなんですよ。一度雑誌に乗せてもらったことあったんですけど、その時に、いろんなところからひっきりなしに連絡が来て、地元でもまともに街中歩けない状態まで行ってしまったんです。俺ボクシングは目立つことを目的じゃなくて、単にボクシングが好きでやっているだけなんですけどね。あの時は本当にもうボクシングから離れようって決意したんです。で、教師の道へ舵を取ったて言うと、カッコいいように聞えますけど、本当は耐えられなかったんです」
「じゃ何? みかんてさぁ。プロボクサーなの?」
「ま、まぁな。一応。ランクはまだずっと下なんだけど」
「なのにどうしてあの時手を出さなかったの? だったらあんな奴らなんか、簡単にボコボコに出来ちゃんじゃない。それなのにやられっぱなしで、一発も手出さなかったじゃない。どうしてよ」
「プロはリング以外で拳を振っちゃいけねぇんだよ。拳は凶器だから、俺捕まっちまう。それにあんなのは殴られたうちにも入らねぇよ。顔はちゃんとブロックしてたし、ボディーに何発食らおうが、大した事ねぇから」
「そうなんだ……。でもさぁどうしてそんなリスクを犯そうとしてまで私を助けてくれたの? 知らなかったんでしょ私だって」
「見るからに困っていた感じだったから」
「ただそれだけなの?」
「ああ、ただそれだけだ」
どきんと胸が脈打った。
ああああ……。此奴マジ。
女にもてちまう奴だ。
アブノーマルなのに……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます