友人

犬屋小烏本部

第1話今は昔

小さい頃、一緒に遊んだ友人。

最後に別れを言った後のことを覚えていますか? 最後の別れの言葉は「さよなら」でしたか? 「またね」でしたか?

最後に見たその友人の顔、覚えていますか?




私が小さい頃。小学生の頃の話。

もう、昔々の話だね。


道路を挟んで向い側。私の家の前には同い年の友人がいた。クラスは結局、一回も同じにはならなかったけど、私たちはよく遊ぶ友人だった。

学校から帰ってすぐ、習い事とか用事がなければ会いに行った。


「◯◯ちゃん、あーそーぼ」


私が小学校卒業と同時に引っ越すまで、そういう繋がりは切れなかった。

たくさん遊んだよ。

近所を歩き回って小さい世界を冒険した。流行りのアニメの話をした。この歌は何の歌か、歌当てクイズを二人でやった。神社の下に流れる沢でザリガニやカニを釣った。仲間を誘ってごっこ遊びに夢中になった。

たくさんたくさん遊んだよ。


中学生になってからもたまに電話をした。いつだって長電話になっちゃったけど、しょうがないよね。

互いに部活で忙しくなった。話せる機会も少なくなった。両親も学校の先生も勉強しろってうるさくなった。ああ、これは私がもともとしなかったせいだな。


受験生になってからは互いに塾に行くようになった。どこの高校にいくのかな。気にはなったけど、結局連絡できなかった。


高校生になって、たまたま登校中に会った。自転車ですれ違った瞬間、誰だかわかったよ。

私たちは振り向いて名前を呼び合った。

あの学校に進学したんだね。

将来こういう道に進みたいんだ。

本当に少しの時間だった。でも、私はすごく幸せだった。


最後に私たちは言った。


「じゃあね」


また会えるかもしれないし、会えないかもしれないけど、その時会えてよかったと思うんだ。

「じゃあ」の次に来る言葉はさよならでも、またねでもどっちだっていいはず。

私たちは、笑って別の方へ走っていった。


大人になって、私たちは会うことがなかった。でも、まだ会えてないだけだと思うんだ。

また、小さなあの頃みたいに玄関のチャイムを鳴らして。


「久しぶりだね、◯◯ちゃん」


扉を開くこともきっとできる。

そう思うんだ。

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